・・・僕は両親のことを知らない・・・。 だからといって動物に育てられたわけでも一人で生きてたわけでもない。 ちゃんと育ての親はいる。どうも、1歳位の時にその家に拾われたらしい。 そしてそこで僕は育てられた。・・・暗殺者として・・・。 いつから人殺しをしていたのかは覚えてない・・・。 物心ついたときにはもう人を殺してた。 何人殺したかも覚えてない・・・。 でも、なんで殺したかは覚えてる・・・。 お母さんに褒めてもらうため・・・、ただそれだけ・・・。 いつもは怖かったけど、ちゃんと仕事(暗殺)すれば褒めてくれた・・・。 いつも僕のこと叩いてるお母さんも、そのときだけは頭を撫でてくれた・・・。 僕はお母さんに構って欲しかった・・・。優しくして欲しかった・・・。・・・だから、殺した・・・。 でも、あいつに会った時僕の人生が変わった・・・。 あれは僕が8歳の夏だった。僕は一人の男を殺すように頼まれた。 ターゲットは一人・・・。簡単な仕事のはずだった・・・。 相手は簡単に見つけられた。後は人気の無いところで後ろから鋼糸で首を絞めれば終わり。 だからそいつが人気の無い公園に入ったときに行動した。 そいつの首に向かって鋼糸を投げ、首を絞めた・・・はずだった・・・。 でも、鋼糸が巻きついていたのはただの木の枝・・・。 「やれやれ、いきなり何をするかね〜」 声が後ろから聞こえた瞬間、反射的に僕は行動していた。 振り向きざまの後ろ回し蹴り。 「なにやら狙われているとは思ったがまさかお前にとはね・・・。奴等にばれた、か・・・。」 そいつは僕の攻撃を独り言をいいながら余裕でかわしていた。 「あ〜もう、さすがに鬱陶しいぞ。」 そいつがそういった瞬間僕の身体は強い衝撃を受け吹っ飛ばされていた。 何が起こったのか全然わからなかった。ただ、衝撃で身体が動かないのはわかった・・・。 そして、仕事に失敗したことも・・・。 「・・・殺・・・せ・・・」 「は?何を言っとるんだ、お前は。」 「・・・僕を生かしておいたら・・・またお前を・・・狙う・・・。・・・だから・・・」 嘘だった。僕はそんなことより失敗してお母さんに怒られる方が怖かった。 だから死にたかった・・・。殺して欲しかった・・・。 「む?それは困るな。だが、俺を殺してもお前の帰る場所はないぞ。それでも俺を殺すかい?」 「・・・何・・・を・・・」 「お前の育った家は・・・」 その時遠くで爆発が聞こえた。 「・・・今、無くなった。お前の家族も含めて、な・・・。」 「・・・え・・・?」 僕は何が起きてたかその時は理解できなかった・・・。そう、あいつの次の言葉を聞くまでは・・・。 「ま、簡単に言うとお前の家、家族は俺が今全て消したってことだ。・・・殺した、と言った方がわかりやすいかね?」 そこで、僕は理解した。今この瞬間全てを失ったことに。 「さて、これでお前が俺を殺す理由がなくなったわけだが・・・まだ殺るかい?」 「・・・あ、あぁ・・・」 「ふむ、あまりのショックに呆然自失、と。・・・あそこの生活がそんなに楽しかったのかね〜?まあいい、忘れろ。今までのことは・・・。忘れた方がいい・・・。」 何を・・・。こいつは何を言っているんだ・・・。 「記憶喪失アタック、と。」 僕が最後に見たのはそいつがなにか大きいハンマーで僕を殴ろうとしていたところだった・・・。 そして、頭に強い衝撃を受けて・・・僕は本当に全てをなくした・・・。 数年後・・・ 「僕」は『「やすらぎ」の間』と呼ばれる秘密基地に居た。 「看板:お前そんなとこでなにしとるんだ?」 「あ、ハーニー。ん〜、お兄ちゃん探してるの。高いところなら見つけやすいかな、と思って。」 「看板:あいつなら道場の方にいたとおもったが。」 「ほんと!?じゃあそっち行ってみる〜♪」 僕に生きる権利があるのかはわからない。 でも、僕は生きていこうと思う。 未来のことなんてわからない。過去のことは忘れた。 だから、今日この一瞬を精一杯生きていこうと思う。 この世で誰か一人でも僕のことを想っていてくれる限りは・・・。 「あ、お兄ちゃん発見!お兄ちゃ〜ん♪」 ・・・そう、死ぬことは・・・いつでも出来るから・・・