ヒカル 〜出会い〜 あれはあたしが12歳くらいの時だった。 次の舞台までまだ時間があったから、一人でボーっとしてると話声が聞こえてきた。 あの声は確かさっき舞台に出演してた人達だ。 「なんでお前があんなとこにいるんだ!」 「いや、なんかぬいぐるみが出てくるよりその方が受けるかと思ってな。」 「いや、確かに受けたが...。って、そうじゃなくてどうやって入ったんだ!」 「それは...ヒミツだ♪」 なんか、さっきの舞台のことで言い合ってるように見える。 でも、なんか二人とも楽しそう...。 あたしは、二人が羨ましいな、って思った。 その時、二人のうちの一人があたしの事に気づいた。 「あれ?きみこんなところで何してるの?」 もっともな疑問だった。だって、ここは劇場の外にある非常階段の踊り場だったから。 あたしが何も言わないでいるとその人...確か名前は「光月・飛翔」さんだったと思う...があたしに話しかけてきた。 「確か君は今日の舞台でミュージカルをやる劇団の子だよね?」 なんでこの人はあたしの事知ってるんだろう。前にあったかな。 飛翔さんの言葉を聞いてもう一人の仮面を付けた人...名前は「ヒール・アンドン」さん。この人は特徴的な人だからパンフで一回見ただけで覚えた...が言った。 「飛翔よく知ってるな?実はロリ...」 何か言いかけたヒールさんの頭をハリセンで叩いて飛翔さんが言う 「違う!なんとなくパンフで見たことがあるからそう思っただけだ。名前は...何だっけ?」 「.......ヒカル.......。」 あたしは小声で答えた。 「...ヒカル...?...まさか......」 その名前を聞いた瞬間ヒールさんが何か言いたそうにしてたけどそれは飛翔さんの言葉にさえぎられて続かなかった。 「へ〜、ヒカルちゃんか〜。俺の名前は光月・飛翔。で、こっちの変なのがヒール・アンドン、よろしくね。」 「待てい。変なのとはなんだ、変なのとは。俺のどこが変だと言うんだ。」 「全部。」 「.....。」 その言葉を聞いた瞬間ヒールさんがいじけた様な気がした。仮面で表情はわからなかったけど。 「まあ、それはともかくヒカルちゃんはこんなとこで何してるの?女の子が一人でいるようなところじゃないとは思うけど?」 その疑問はもっともだと思う。でも、あたしは何も答えなかった。答えたくなかったから。 「多分...好きなんだろ、こういう人の来ないような場所が。」 「そんなわけないだろ。ヒールじゃあるまいし。」 「さりげに失礼だな、お前。」 でも、ヒールさんの言ったことはあってた。あたしは一人が好きだった。皆のいるところにいても馴染めないから辛いだけ...。 「ん〜、劇団に友達とかはいないの?もうすぐ出番でしょ?一緒に最後の打ち合わせとかはしないでも大丈夫なの?」 友達なんていない。あたしが友達と呼べるような人は一人しかいない。 でも、その人も今はもう会えない。どこにいるか知らないから。それに名前さえもあたしは知らない。 「多分友達がいないんだろ。」 「おいおい、ヒールお前それはどうかと...。」 なんで、この人は分かるのだろう。あたしが思っていることが。 まるであたしの事を昔から知ってるみたい...。 「ほんとに変わってない。昔からこいつはそうなんだよ。」 それはどういう...。昔からって、あたしはこの人と昔あったことはない。あんな仮面付けた人と会ってれば忘れるはずがない。 なのに向こうはあたしのこと知ってるみたいな話し方をする...。なんで...? 「よし。じゃあ、俺達がお前の友達になってやろう。毎日好きなときに会って遊ぶ、とかはさすがに無理だが、同じ舞台で演技をするもの同士だ。また会うこともあるだろうしな。」 「ヒール、いきなり何を言い出すんだ!?」 そう、この人はいきなり何を言い出すんだろう...。あたしと友達になろうなんて。だからあたしはこう言った。 「あたしには...友達になる権利なんてないもの。だから...それは無理...。」 「友達になるのに権利なんているのかい。そんなものないさ。相手のことを気に入ればそれで友達だ。まあ、ヒカルが俺達のこと気に入らないって言うならしょうがないけどな。」 そんな事はない。この人たちのことは嫌いじゃない。 「飛翔も別に嫌じゃないんだろ?友達になるの。」 「まあ、別に構わないけど。どちらかというといきなりお前がそういうこと言うのに驚いてるだけで。」 あたしは友達が欲しかった。誰かと友達になりたかった。...でも勇気が出なかった。 だから、ヒールさんの言葉はとても嬉しかった。だからあたしは...勇気を出して言った...。 「友達に...なってください...」 「OK!これで今日からヒカルは友達だな。」 そういうとヒールさんはあたしの頭を撫でてくれた。 「簡単だろ?ちょっと勇気をだすだけだから。」 あたしの頭を撫でながらヒールさんがそう言った。簡単だった。なんで今まで言えなかったのか分からないくらいに。 だからあたしは笑顔で答えた。 「うん♪...ありがとう!」 「と、そろそろヒカルちゃんの出るミュージカルが始まる時間じゃないのか?」 あ、もうそんな時間なんだ。行かなくちゃ。 「お、そうか。じゃあ、ヒカルこれは俺達とヒカルが友達になった証だ、やるよ。」 ヒールさんはそういうとあたしにハリセンをくれた。 「いいの?ありがとう。じゃあ、あたし行くね。また会おうね、ヒールさん、飛翔さん。」 「おう。」「ああ。」 「あのね...二人の漫才ほんとに面白かったよ。また見せてね!」 そういうとあたしは舞台の方に走っていった。いつものと違い...笑顔で...。 ...ヒカルの去った後の非常階段にて... 「.......ちょっと待てい!俺は漫才師じゃないぞ!俺は手品師だ〜!!」 「いや飛翔、いまさら言っても誰も聞いてないぞ。その台詞。」 ...そして数年後、東京ギガテンプレム... あたしはそこにいた。神帝軍に捕らわれたあたしの魔皇様を助ける為に。 そしてあたしは一つの扉を開いた。そこにはあたしの探してた人がいた。 「見つけたよ、ヒール。あたしの魔皇様!...また...会ったね♪」 「ああ、また...会ったな...。」 終わり...?