[PM分析の進め方] [連載−3]

4.物理的解析の壁

 第2ステップは現象を物理的に解析する。PM分析の最も重要な解析ステップである。しかしこの物理的解析がPM分析を理解し難い要因にもなっている。筆者も当初はこの物理的解析に戸惑いなかなか壁が破れなかった。しかしいろいろな解析事例を基に「物理的解析事例集」を作ってからこの物理的解析が理解できるようになった。
 最近は物理的解析を「不具合現象の起きるメカニズムを原理原則で明らかにする事」と言い換えて説明している。
例えば、−事例1−「鉛筆の芯が折れた」現象のメカニズムは、物理的には応力破壊である。
 即ち、 鉛筆の芯の曲げ強度<芯に加わった力 (芯の強度以上の外力が加わった)となる。
 これは鉛筆の芯の強度が低いのか、大きな外力を加えたのか、いずれかである。しかしどちらの要因かは次ぎのステップ(成立する条件)で分解する。
また、−事例2−機械加工で旋削加工の寸法がバラツク現象は、物理的には寸法、距離の変化である。
即ち、  加工物の回転中心とバイトの刃先までの距離が変化するとなる
 これも加工物の回転中心が変化するのか、バイトの刃先が変化するのか何れかであるが、どちらの要因かは次ぎのステップ(成立する条件)で分解する。
 以上の事例から次ぎの解析手順を整理した。
手順−1
  「現象が物理的(又は化学的)に見てどの物理的化学的条件なのか明らかにする」
[寸法、距離、位置][体積][重量][力、圧力][時間][速度][回転][硬さ][温度][湿度][流量][粘度][配合][成分][反応][照度][音][磁力][摩擦抵抗][電流][電圧][電気抵抗]−−−etc
手順−2
  「加工や作動の原理原則から現象に関わる必要条件を明らかにする」
 −事例1−では鉛筆の芯の強度と鉛筆を持つ手の力が必要条件となる。
 −事例2−では加工物の回転中心とバイトの刃先が必要条件である。
手順−3
 「現象が正常な状態に対して手順1の物理的条件が手順2の必要条件でどのようにズレ、変化、バラツキを起こしているかを明らかにする」
 −事例1−では鉛筆の芯の曲げ強度と芯に加わった力の差が逆に変化した(不等式が >が<に変化)
 −事例2−では加工物の回転中心とバイトの刃先の距離がバラツイた
以上が物理的解析の考え方である。

事例

現象 必要条件 物理的条件 変化、ズレ
ライターの火が一発着火しない ・空気(酸素)
・液化ガス(燃料)
・火花(着火温度)
同時(時間タイミング) しない
懐中電灯が点灯しない ・電池
・スイッチ回路
・フィラメント
電流(発熱する電流) 流れない
旋盤加工で外形寸法がばらつく ・加工物回転中心
・刃先先端
距離(寸法) 変化する
ボール盤加工でドリルが折れる ・ドリル(強度)
・材料(切削抵抗)
力(応力) 差が逆になる
強度<切削力
アーク溶接のビードが脱線する ・加工物の被溶接線
・ワイヤー先端移動軌跡
相対位置(寸法) ズレ
振動フイダーで搬送が止まる ・搬送(振幅加速度)
・搬送レールの抵抗
力(応力) 差が逆になる
搬送力<抵抗力