[計画保全編]
突発故障だけが故障ではない
[設備故障と故障分類]
 故障とはJISの定義によると「故障とは設備機器、部品などが規定の機能を失うこと」すなわち設備のもっている機能が正常に働くなった状態である。
故障の現象により次のように分類される。
@機能停止型故障
  設備稼動中に機能が突然停止してしまう故障
A機能低下型故障
  設備は稼動出来るが、加工不良が徐々に多くなり工程能力が低下したり加工運搬のスピードが低下する故障。

故障の発生形態からの分類すると以下のようになる。
@突発故障 
  全く予測せずに稼動中に突然発生する故障であり、その復元に時間を要する故障であり生産活動を阻害する。すなわち設備総合効率の時間稼動率の阻害停止となる故障である。計画保全と自主保全活動で重要なことは、まずこの突発故障を低減することである。
A予測故障(予知故障)
  日常点検や定期設備診断のなかで異常を発見し、休日に計画的な復元修理を行い、生産活動に阻害を与えなかった故障。しかし劣化により故障に至っていることに変わりない。突発故障の寸止めを行った故障といえる。  自主保全で実施する「イエローカード」活動は、突発故障に至る前に設備の異常をキャッチしようという活動である。突発故障が大巾に低減した場合、次ぎにこの予測故障の低減を実施しなければならない。よって筆者はこの予測故障もきっちり件数をカウントし、故障解析を実施するように指導している。

また設備の使用時間経過から分類すると以下のようになる。
@初期型故障
  設備の試運転開始時に設計不良、製作不良、組立て不良などによって発生する故障
A偶発型故障
  安定稼働に入ってから異常なストレスや、早期の劣化現象で偶発的に発生する故障
  また初期型故障の対策が十分に打たれずに安定稼働時に発生する故障もある。
B老化型故障
  長期稼働により各部品の疲労、磨耗などの機械的劣化や酸化、腐食など化学的劣化が進みその要因で発生する故障。

故障の要因から分類すると
@設計不良型故障・製造組立不良型故障
  部品そのものは劣化に至っていないが、設計上のミスで正常な動作をしなかったり、強度が不足していたりで発生する設計不良型故障と、部品製作や組立時のミスから精度が出ていなかったり、強度が不足していたりで発生する製造組立不良型故障であり、初期型故障の大半がこのタイプの故障
Aストレス劣化型故障
  稼働中の各種ストレスにより磨耗、かじり、緩み、破損、曲り、伸び、亀  裂、酸化、腐食、熱膨脹、などの劣化により発生する故障。
B操作不良型故障
  オペレーターの運転操作ミスによって誘発される故障であり、正しい操作方法や段取り、調整の知識不足から起こる異常な操作が原因となっている故障。    
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劣化型故障の原因はストレス
形ある物はいずれ壊れる。すなわち何かのストレスが故障に至る諸悪の根源であると筆者は考えている。そのストレスの掛かり方から故障を分類すると
@異常ストレス型故障
  設備設計の時の強度以上の負荷や、設計上必要な潤滑給油の過不足、必要な点検整備不足、異常な運転操作、加工液や切粉の侵入とその放置などを強制的に与えているためにその要因で起きる故障
A正常ストレス型故障
  正常な使用条件でありながら、設計上の限界を越えた使用時間の経過で各部品の摩耗、疲労、酸化などで発生する故障

またストレスの発生源から分類すると
@内部発生ストレス型故障
  設備自身が発生する各種のストレスが劣化の要因となっている故障。
ストレスを分類すると以下のようになる。
・機械的ストレス 
  モーターを動力源とした駆動力、回転、移動による引張・圧縮・曲げ力および摩擦、振動などのストレス、および切粉水汚れによる摩耗、摩擦抵抗の増大など  ・温度ストレス
  モーター、ポンプ、主軸、燃焼バーナー等から発生する熱によるストレス
・電気的ストレス
  制御系やモーターに加わる電流・電圧による電気抵抗ストレス
・化学的ストレス
  設備に使用される油、液、薬品、ガス類による酸化、化学反応等化学変化ストレス
A外部環境ストレス型故障
  設備の設置されている周辺環境から受けるストレスが劣化の要因となっている故障。ストレスの分類は内部発生ストレスと同じである。
・機械的ストレス 
  他の設備から伝わる振動や、他の設備の異常動作接触、地震振動、地盤沈下などのストレス
・温度ストレス
  周辺および外気の温度(高温低温)変化により受ける熱ストレス 
・電気的ストレス
  他の設備、環境からうける元電源の電圧異常や高周波や、絶縁抵抗によるストレス、
・化学的ストレス
  設備周辺の空気による酸化、湿度、空気中の粉塵、ほこり、酸化化学物質による化学変化をおこすストレス
 
ストレスの掛かる強さと頻度から分類すると
・強いストレス   ・連続的ストレス   ・弱いストレス   ・間欠的ストレス 
以上のように故障をいろいろな角度から分類したが、次の項の故障解析にあたってこれらの故障分類を手掛かりに故障解析を実施する。   
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設備故障の低減
設備の故障要因は前項の故障分類のように多岐にわたっているため、故障を低減する方策も一様ではない。
 設備の基本的使用条件を維持する自主保全活動と専門保全部署による改良保全と予防予知保全を行う計画保全の活動、そして現在発生している故障を解析し、再発防止を計る活動が故障低減の基本3本柱である。
 さらにこれらの活動から生まれたノウハウを設備の計画段階で行うMP設計と初期流動管理体制を実施する事が必要である、以上の諸活動をシステマチックに行う事が故障低減の唯一つの道のりである 
設備故障解析
設備故障がなぜ発生したのかその原因をきっちり解析せずに、単に故障部位の復元のみを行っていたのでは必ずその原因による故障が再発する。また類似設備への事前の対策や新規計画設備への反映(MP情報)を行う事が出来ない。
 前記のように設計組立不良による初期故障以外の故障には必ずあるストレスが原因であるから、それがどんなストレスなのかを解析し、そのストレスを排除または軽減するか、またはストレスに強くする対策が必要である。
 設備故障解析には現実に発生した故障の真の原因を探し出す解析と、現在故障が発生していないが、どんな故障がどんな原因で発生が考えられるかを解析する方法がある。ここでは現実に発生した故障の解析方法について記す。

@なぜなぜ故障解析方法(単一原因解析)
 機能停止・突発型の故障解析であり、故障現象からなぜその現象が発生したのか、それはなぜそうなったのか、それはなぜかと追い詰めて最後にストレスの発生原因にたどり着く解析である。しかしその設備の機能構造の知識や加工、運搬などの原理原則が理解されていないとなぜなぜが途中で行き詰まる事がある。 なぜなぜ解析の実施に当たっては平行して機能構造と物理的化学的知識を勉強することが重要であり、故障部品の調査には故障物理の解析技術が必要になる。
再発防止はなぜなぜ故障解析でつめたストレス原因に対して、復元改善の対策を打つことである。

APM分析・FTA解析方法(複合原因解析)
 機能低下・チョコ停型の故障解析であり、原因が複数ある複合要因の故障は真の原因が分からずに復元の対策を行うために、繰り返し故障発生し慢性化している場合が多い。これらの故障にPM分析やFTA解析を実施する。なぜなぜ解析で行き詰まった故障解析もこの方法を用いる。

B共通原因解析方法
 上記の一件一様の故障解析とは別に、故障の発生状態・部位・現象・の故障記録管理から、共通の現象・部品・部位から故障の原因を物理解析し、共通の対策を実施する方法である。
故障の再発防止
故障の再発防止には、前記の現実に発生した故障解析からその原因の再発防止を行うことと、予め考えられる故障を各種手法で解析し、その故障発生を予防する方法とに分かれるが、いずれも故障を予防する仕組みは同じである。
筆者考案の「考えられる故障の洗いだしと保全方式設定表」と「故障再発防止フロー図」であるこの故障再発防止フロー図に基づき、再発防止対策を確実に実施することが必要である。
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予知保全と予防保全の違い
計画保全の目指す保全方式は「状態保全」(CBMコンデションベースメンテナンス)と言われているが、設備装置のプロセスから必ずしも全てがCBMではない。
適切な保全方式の選択とは、保全費用対効果および故障が及す社会的影響の両方を考えて選択することは言うまでもない。しかし適切で費用を掛けないCBM体制を作れれば理想である。
状態保全(CBM)の基本は予知保全と予防保全である。予知と予防は二人三脚であり、両方の保全をバランス良く実施することである。
 予知保全とは点検と設備診断である、人の体に例えれば、日々の生活での体の調子が良いか悪いかのチェックと、定期健康診断での検査である。体重測定、血圧測定、心電図、胸部レントゲン、視力聴力測定、血液や尿分析等々で体の機能が正常か異常かの診断である。
 予防保全とは正しい運転操作と稼動、清掃、給油、増締めなどである。人の体に例えれば、規則正しい生活、睡眠、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、入浴、歯磨、手洗い、趣味娯楽で精神的ストレスの排除などである。
TPMの導入と同時に、計画保全は設備診断が出来ないといけないと言われて、診断技術の習得に走るが、もちろん必要なことであり診断機器を購入したらすぐ出来るものではないから、時間を掛けて研究する必要がある。
 しかしどんなに設備診断で設備の劣化異常を発見予知出来ても、その劣化を防ぐことは出来ない。劣化を防ぐ保全は前記の予防保全がされていなければならない。また劣化の耐性を高める改良保全も合わせて行うことが必要である。

[予知保全のフェーズ]
フェーズ1−−−人の五感による異音、振動、発熱、洩れなどで異常の予知 
フェーズ2−−−診断機器による定期測定での異常の予知
          振動診断、有効電力診断、熱診断、変位診断、圧力診断、応力診断、絶縁診断、作動油分析などなど
フェーズ3−−−オンラインモニーターによる自動連続設備診断で予知
予知出来ない故障は徹底した予防保全
 機械系の故障は最近の設備診断技術でかなりの劣化予知が可能になってきた。しかし依然として予知困難な故障モードが制御回路の異常による故障である。
最近の設備制御がほとんど、シーケンサー、NC制御、コンピューター制御化されているからである。制御基盤回路のショ−ト、絶縁、異常なノイズ、プログラム上のバグと思われる故障である。 特に夏場になると、これらの異常を防ごうと制御盤の扉を開けて扇風機で冷やしている光景を良く見かける。聞けば温度が高いとエラーを起こす言う。 これはおかしい何か別の原因もある筈だ。筆者は電気制御の知識に乏しく、知人の専門家に教えて貰っているが、そのなかで得た事から整理すると以下のようになる。
[制御エラーの故障要因]
1)基盤回路のショート 
 基盤のプリント配線間および接点のハンダ付け間にショートを起こす原因のエラーである。ショートを起こす要因は次の式で表す。
 基盤上の微細粉塵×湿度×温度変化=結露=ショート 
 日本における夏場は高温多湿であり、この要因が夏場=高温と勘違いしやすい、この現象は湿度と粉塵が問題である。
2)特定のCPU・ICの高温によるエラー  
 非常に高密度のCPU・ICは自分自身が発熱体あり、さらに制御盤内の外気による熱がプラスされて起きるエラーである。
3)ノイズによるエラー  
4)基盤の差込みコネクター部絶縁によるエラー 
 制御盤の振動により基盤のコネクター部の差込みが緩み、また湿度粉塵による腐食などで絶縁現象を起こすエラーである。
 以上の要因についてはほとんど予知出来ずに発生する。このように予知困難な故障は徹底した予防保全を実施するしかない。
[制御盤予防保全の7ヵ条]
1) 制御盤ファンクーラーと吸込みフイルターの管理……要因 1) 2)の予防
2) 制御盤内と基盤間のファン空気の流れ制御……………要因 1) 2)の予防
3) 制御盤内の除湿……………………………………………要因 1) 4)の予防
4) 制御盤の開孔部閉鎖………………………………………要因 1) 4)の予防
5) 基盤の定期洗浄……………………………………………要因 1) の予防
6) アース取りの見直し………………………………………要因 3) の予防
7) 制御盤の振動発生源の除去………………………………要因 4) の予防
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