8回 資金移動表作成実践(2)
 

 今回でいよいよ「資金移動表作成」の最終回です。
 前回の固定資金、運転資金、財務資金にただY期の損益計算書を組み合わせるだけですから、実に簡単です。
 念のためにもう一度A社の貸借対照表と損益計算書を出しておきます。

A社 業種 運送業 (単位千円)
資本金10百万円 従業員16名
貸借対照表 損益計算書
X期 Y期 Y期−X期 X期 Y期 Y期−X期 X期 Y期 Y期−X期
流動資産 49,115 46,049 -3,066 流動負債 13,097 2,424 -10,673 売上高 167,745 138,298 -29,447
現金・預金 20,917 15,787 -5,130 買入債権 13,097 2,160 -10,937 売上原価 160,198 110,976 -49,222
売上債権 23,893 24,204 311 短期借入金 0 0 0 売上総利益 7,547 27,322 19,775
棚卸資産 2,114 2,114 0 0 264 264 販管費 31,764 15,385 -16,379
2,191 3,944 1,753 固定負債 59,955 56,235 -3,720 支払利息 3,992 1,691 -2,301
固定資産 10,757 10,757 0 長期借入金・延手 59,955 56,235 -3,720 他営業外損益 15,723 2,471 -13,252
繰延資産 0 0 0 自己資本 -13,180 -1,853 11,327 経常利益 -12,486 12,717 25,203
資産合計 59,872 56,806 -3,066 負債・資本 59,872 56,806 -3,066 特別損益 0 -1,320 -1,320
割手・譲手 0 0 0 法人税等 0 70 70
当期利益 -12,486 11,327 23,813
減価償却費 2,164 0 -2,164
内部留保 -10,322 11,327 21,649


 解りやすくするために、経常収支表、経常外収支表、財務収支表を、それぞれ別個に作成してみましょう。

(注意点)損益部分と貸借部分の色分け次のようになっています。

損益計算書
貸借対照表



前回算出した運転資金、固定資金、財務資金を参考にして、表を完成して下さい。

X期 Y期 合計
売上高 138,298
売上債権増▲ 23,893 24,204 311
他営業外損益 2,471
経常収入 140,458
売上原価 110,976
買入債務増▲ 13,097 2,160 -10,937
他流動負債増▲ 0 264 264
販管費・支払利息 17,076
減価償却費▲ 0
棚卸資産増 2114 2114 0
他流動資産増 2191
3944
1,753
経常支出 140,478
経常収支(1) -20
X期 Y期 合計
特別利益 0
経常外収入 0
法人税 70
固定資産 10,757 10,757 0
繰延資産 0 0 0
特別損失 1,320
経常外支出 1,390
経常外収支(2) -1,390
X期 Y期 合計
長期借入金増 59,955 56,235 -3,720
短期借入金増 0 0 0
割引手形増 0 0 0
資本金増 10,000 10,000 0
財務収支(3) -3,720
(1)+(2)+(3) -5,130
現金・預金増 20,917 15,787 -5,130

 経常収支(1)と経常外収支(2)と財務収支(3)を合計した金額が、現金・預金増と一致しましたね。
 資金移動表を作成すると、A社は経常収支(−)経常外収支(−)財務収支(−)とすべてが(−)になっていますが、経常収支はたった2万円のマイナスに過ぎません。こんなわずかなマイナスなら、売上原価なり販管費を削れば、簡単にプラスに変えることができます。
 次期のA社経営計画は、ともかく経常収支のマイナスをプラスにすることになります。この経営計画の作成・実行にあたっては次の点をぜひとも考慮に入れてください。つまり、 この資金移動表を眺めれば、長期借入金の返済が、営業(経常収支)によってなされたものではなく現預金の取り崩しによって賄われたことが分かります。資金繰りは相当に厳しかったことでしょう。営業(経常収支)を単にプラスにするのではなくて、長期借入金の返済額(財務収支)を全額カバーできる金額を目標とするのです。そうすれば資金繰りの苦しさから解放されることになります。
 これが達成できれば、経常収支(+)経常外収支(−)財務収支(−)となり、一挙に「優良会社」の仲間入りとなります。
 資金移動表はキャッシュフロー計算書そのままではありませんが、これを活用して経営すれば、会社の安全運転をすることができます。
 ぜひ作成されることをお進めします。
 経営計画の作成には損益予算ばかりでなく貸借対照表予算も不可欠です。貸借対照表予算の作成はいつか機会をみて、また勉強することにします。

 では機会がありましたら、この簡易表を基礎に、勘定科目すべてが入った資金移動表作成を勉強することにします。
それまでは、ともかく御機嫌よう。

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