2005年
5月28日〜5月31日


<トロッコ道大株歩道入り口の少し手前でわずかに見えた宮之浦岳(右端)と中央の栗生岳>


<その左に特徴のある山頂の翁岳頂上部がわずかに見えた>



なんと幸運な山行だったのでしょうか。

宮之浦岳縦走の29日・30日は連日の良い天気に恵まれ、
また、屋久島シャクナゲの16年ぶりという花の多さ、美しさをたっぷりと楽しめた山行になりました。

1日目は羽田から鹿児島空港、鹿児島港からジェットフォイルで午後6時頃屋久島安房(あんぼう)に到着。

ホテルまでのタクシーに乗り込もうとしたとき、スコールのような雨が降ってきた。 
乗り込む間の数十秒でシャツはびしょぬれ。

雨の島 屋久島が軽く我々を大歓迎をしてくれた。
この程度は序の口で、本物の屋久島の雨はらっきょうのような雨が降るのだと云うことですが。

ホテルでガイド手塚さんとのミーティングの後、風呂を済ませて夕食を取り、早めに就寝。
夜、1時半頃から雨が屋根を打つ音で目を覚ます。 結局、出発直前頃まで雨は降っていた。

2日目は4時半出発というので、3時半に起床。 最初からかっぱを着用した。
しかし山に入る頃には、かっぱの必要が無いくらいに天気は回復してきた。

朝の天気の状況から、コースの入山・下山口を逆にして、
白谷雲水峡の方から入山し、下山は淀川口。
登山口までバスで移動し、ストレッチをして二班に分かれ
ガイドの手塚さんと葛西さんを先頭に歩き始めたのが丁度6時。

花崗岩が美しい谷を作っている飛流おとしを眺めながら
照葉樹林の森の中を登り、くぐり杉を抜けて、屋久島随一というの
苔の森(もののけ姫の森という名が付けられているが評判は良くない)をとおり、
高度を上げてトロッコ道との合流点に出る。(8:30)


<飛流おとし>



<くぐり杉を越える>



<苔の森を行く>

三代杉で説明を聞き、約1時間ほどトロッコ道を歩いて、大株歩道入口へ到着。
トロッコ道は枕木に板が貼ってあるため歩きやすい。
大株歩道は全体に木道が良く整備されていて、階段が多いが歩きやすい高さになっている。
大株歩道入口の少し手前で谷間からわずかに宮之浦岳の山頂が
見えるところが有る。



<トロッコ道、今でも時々使われている>

この歩道(屋久島では登山道のこと)には翁杉、ウイルソン株、
大王杉、夫婦杉など有名な屋久杉があり、最後に縄文杉がドカンと現れる。

翁杉に11時半少し前に着いて、ここで昼食。 20分休憩して、大王杉に12時、
縄文杉に12:05に到着。


<縄文杉>

縄文杉は鑑賞用のテラスも整備されていて、圧倒される大きさの杉を
よく眺めることができる。 推定7200年とも、またうろの内壁の分析からは
2170年以上というとてつもない年月を生きている杉だということです。


縄文という名は新聞に書いた記事に外観が縄文土器の文様に似ていると
記者がコメントしたことから知れ渡ったのだそうですが、
本当の発見者は大岩杉と名付けたとのことです。

ここで写真取ったり休憩したりした後、高塚小屋を経由して新高塚小屋への最後の登りに入る。

高津小屋の周辺当たりからシャクナゲの花がぽつぽつと見られ、
さらに登ると、登山道の周りはシャクナゲが増えて、
新高津小屋まで皆さんの「きれい、きれい」という声が絶え間なくあがっていました。



新高津小屋は管理人のいない避難小屋。 すでに先着したパーティが有り、
隙間に我々が詰めながら入って満杯の状態。

その後宮之浦岳越えをしてきたパーティが到着。
通路を含めて何とか寝られる態勢にはなったが、
先着パーティーの譲り合いの気持ちが少し足りなかったのは残念だった。

小屋に着き、手塚さん葛西さんが直ぐにお湯を沸かしてくれ、
小屋の前でティータイム。
 いろいろな飲み物を用意してあり、1日の疲れが飛ぶような美味しいコーヒーだった。

夕食はフリーズドライのご飯とレトルトの中華丼、それにスープ・漬け物。
この日は6時頃には寝袋に潜り込んで直ぐに寝てしまった。

3日目は早出の人が3時頃から用意を始めて、早々と目が覚める。
4時頃外へ出て空を見上げると、満天の星空にやせ細った月が光っていた。

サンドイッチとスープの朝食を取って、用意してくれたお茶で一服。
山の朝のお茶は美味しい。


<新高塚小屋、無人の避難小屋でこの日60人くらいの登山者が泊まった。
小屋のそばのヒメシャラもとてつもなく大きい>

出発の準備をして、5時半に集合。 ストレッチをして6時に登り始める。
この日は山小屋より宮之浦岳頂上を登り、稜線づたいに1936mの主峰を目指す。

この山道はまさにシャクナゲの道、
道の周りも展望の利く山の斜面も清楚なヤクシマシャクナゲがいっぱい咲いていた。



濃いピンクの蕾は花が開くと淡いピンクから白い花に変わっていくのだが、
その蕾のピンクと白のグラディエーションが1枚の花びらの中に有って、
自然の妙の巧みさを感じる。



天候は曇りで、ガスが時には濃く、時には薄くかかり、遠くの景色がかすれていく様も
なかなか味わいがある。 




<山の斜面を覆うシャクナゲはまだ薄い新緑の中に調和して素晴らしい>



<ヤクザサとシャクナゲの道>

<ヤクシマシャクナゲ>

第一展望台、第二展望台を経由して平石に出たが、岩の上からはガスでほとんど何も見えなかった。
 
この辺りからシャクナゲも少なくなって、登山道もヤクシマタケ(ヤクザサ)の中の見通しの良い道になる。
第二展望台を7時少し前、平石を8時10分、永田岳への分岐焼野三叉路を8時30分頃通過して
宮之浦岳の頂上には9時頃到着した。

この時、頂上はガスに覆われていて、少し強い風も吹いており、
屋久島最高峰からの眺めは全くなかった。
しかしここまで全く雨に降られず、また登山道を覆う満開のシャクナゲを楽しめたのだから、
これ以上を望むのは余りにも欲深であろう。

それにしても、
関東から遙か遠く日本の最南端の百名山に良く登れたものだと率直に満足していた。

少し冷えてきたので皆で記念写真を撮った後、長く休まずに出発。
栗生(くりお)岳に9時半頃到着した。 ガスは依然としてかかっており、遠くは見えない。


<宮之浦岳山頂で>

ここから黒味岳の分岐までは宮之浦岳から連なった翁岳・安房岳・投石岳の西側を巻くように
して徐々に下る。 この辺の景色は枯れ木がところどころに見られ、
宮之浦岳までの景色とは違う。

 栗生岳を過ぎてからいつの間にかガスが晴れて、
見通しの良いところでは青い海が見えるようになっていた。


<栗生岳の西側を巻く>



この辺りに来ると反対側から登ってくる登山者が増えてきた。 
中にはかなり軽装の登山者がいる。

11時過ぎに投石平に到着。目の前に黒味岳がそびえている。
先行して昼食の準備をしてくれていた葛西さんからお湯をいただいて
暖かいスープを飲みながら朝すでにお湯で柔らかくしてあったフリーズドライの五目飯を食べる。



空は晴れていて、気持ちがよい。 
大きな石のテラスの上で景色も一緒に味わっている人もいる。

少し離れたところに屋久ざるの6・7頭のグループが現れた。 
大きな石の上にはボスざるらしき猿が目立つように座っている。



30分ほど休んで出発。 
黒味岳稜線を見上げながらその東側を巻く。 稜線には登山者がはっきり見える。
黒味岳の分岐を過ぎて花之江河に12時20分に到着。 この辺のシャクナゲはまだ咲いていない。


<投石平から、正面が黒味岳>

木道の上で小休止して、ここからは下山口の淀川口に向かう。
軽装の登山者が多くなったが、どこまで行くつもりなのだろうか、
ほとんど何も持っていない観光客もいる。

ここからは頂上に食パンのような岩をのせた高盤山を樹木の間から時々見ながら淀川小屋を目指す。
登山道は歩きやすく整備されており、サクラツツジのピンクの花をところどころで見ながら、
疲れた足をひたすら動かしていた。


<サクラツツジ>

小花之江河を過ぎて、さらに下って淀川小屋に到着。 最後の水を補給しようと、
葛西さんに尋ねると淀川の水が飲めるのだと云う。

さっそく川に下りると10mもあろうかという川幅の水が流れている。
これが全部飲めるのかと一瞬迷ったが、ざっくりとコップで汲んで一気に飲んだ。
うまい水だ。 それにしても、飲む水はちょろちょろの清水という方程式はここには無かった。
この山行では水には恵まれていて、おいしい水がどこにでもあった。
雨と花崗岩の島の最大の恵みがこの水なのかも知れない。


一休みすると、あと40分のところまで来たこともあり、みんなの声も大きくなってきた。


<花之江河(はなのえごう)の湿原>

さらに下り、淀川口に14時55分に到着。 予定より1時間早く下山した。

ストレッチをしてバスで宿に向かう。
1泊目のホテル前でこの素晴らしい山行をガイドしてくれた手塚さん・葛西さんに
感謝しつつ別れ、3泊目の民宿に向かう。


この夜は食べきれないほどの地のものの美味しい料理と飲み放題の屋久島の銘焼酎「三岳」の
水割りで疲れを癒すことができた。

翌日はジェットフォイルに乗る前に島内の観光をしたが、
自然の豊かさとスケールの大きさはさすがで、
近年この島に移住してくる人が増えたのもうなずける。
おそらく私もたっぷりの時間を用意して、またこの島を訪れることになるだろう。



<千尋(せんぴろ)の滝、落差60mの滝の左に見える花崗岩の一枚岩の迫力>

帰りもジェットフォイル、バスで鹿児島空港へ。 ANAで羽田へと順調に帰宅した。


<バスの中から見たこの日の桜島、晴れた空とすそ野の広がりが印象的だった>