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[評]山下達郎の公演

生気みなぎる4時間

 ライブは、うまければいいというものでも、長ければいいというものでもない。

 けれど、これだけ長時間にわたって濃厚なパフォーマンスを見せつけられると、「やはりこの人はすごいのだ」と納得させられる。日本を代表するベテランシンガー・ソングライターが6年ぶりに行ったツアーの最終日。約4時間もの長丁場だったが、全く中だるみせず、声量たっぷりの山下=写真=の歌声を満腹するまで楽しんだ。

 序盤から甘く、しゃれた雰囲気のシティー・ポップスが際立ったが、サウンドにはどの曲も重厚感がある。ギターの佐橋佳幸、キーボードの難波弘之ら熟練のミュージシャンに、若いドラマーの小笠原拓海が加わり、生気みなぎる演奏を見せた。各パートのソロもふんだんに盛り込み、ライブならではの、ダイナミズムを生み出していた。

 新作発表とタイミングがずれたコンサートのためか、「クリスマス・イブ」「RIDE ON TIME」など代表曲がずらり。山下の妻の竹内まりやが登場し、懐かしい「September」も聴かせてくれた。

 レコーディングの際に、山下が自身の声を重ねてコーラス部分を作った曲では、生のコーラスではなく、あえて再生音源を使うケースもあった。また、ツアーの途中で、デジタルの音響設備が気に入らず、アナログの設備に変更したことを明かした。こういった部分に、この人の頑固一徹なまでの職人気質を感じる。

 山下の音楽は都会的であり、耳にはいつも心地よい。だが、その背後にあるのは、自身のスタイルを極めようというきまじめな姿勢だ。この日のステージには、それが強く表れていた。彼のファンならずとも、その強い意志には感動を覚えたはずだ。(桜井学)

 ――11日、東京・中野サンプラザ。

2009年5月21日  読売新聞)