第12回定期演奏会 曲目紹介 

(第12回定期演奏会プログラムより転載)

Opening...  開幕曲

Du, du liegst mir im Herzen(君、恋し君)
 別名「我が心の花」とも訳されている。恋の歌。1820年頃から歌われているドイツの有名な民謡。
"君恋しつつ我慕うも、君つれなく心見せぬよ""離れていても胸燃やしつつ、君胸燃やしつつ幸の日を待つ"というような歌意。ミュージカル"学生王子"の中でも学生歌のひとつとして歌われている。

1st stage...  日本のうた・秋のうた

1.村祭 (文部省唱歌)
 "村の鎮守の神様の今日は楽しいお祭日"と歌われる、五穀豊穣、豊年満作への感謝を込めての祭を歌った曲。この曲は日本の祭のルーツを歌っている。明治45年(1912年)に明治天皇の長期在位を寿ぎ、作られたものと言われている。

2.赤とんぼ
 三木露風は少年時代に"赤とんぼ とまっているよ竿の先"という俳句を作っている。この句を原型に大正10年(1921年)に「赤とんぼ」を童謡雑誌の「樫の実」に発表している。"ゆうやけこやけのあかとんぼ おわれてみたのはいつのひか"の "おわれて"は、幼い頃、子守娘のねえやにおんぶされて見た風景と、幼くして別れた母への思いを、懐かしんで書いたものといわれている。

3.ちいさい秋みつけた
 昭和37年(1962年)に日本レコード大賞童謡賞を受賞した曲。この曲は昭和30年(1955年)にNHKで放送された「秋の祭典」で童謡歌手の伴久美子(当時13歳)が歌って以来暫くは忘れ去られていたという。それをボニージャックスのメンバーが見つけて歌ったことによって現在のヒットに繋がっている。詩のそここに"ちいさい秋"が見え隠れしているが、よく読むとそれだけではないようなことばがたくさん出てくる。

4.ずいずいずっころばし(わらべ唄)
 子供のあそびのなかで、鬼決めの時に歌う遊び歌。"ずいずい"は芋茎(ずいき)のことで、芋茎をゴマ味噌で食べたことから・・とか、"茶壷"というのは徳川時代に京都からお茶を運んだ"御茶壷道中"のことらしいとか・・・、その行列が通るときには取締りが厳しいのでどの家でも戸をピッシャンと締めてしまうとか・・・、とにかくよくわからないけど調子の良い楽しい歌。

5.わたしと小鳥とすずと
 天才詩人といわれた金子みすゞは、明治36年(1903年)山口県生れ。大正末期に素晴らしい作品を数多く発表しているが、昭和5年(1930年)に26歳の若さでこの世を去っている。短い生涯に作られた詩は512編といわれているがどの作品もやさしく、あたたかく心にしみる。その代表作ともいえる"わたしと小鳥とすずと"には多くの作曲家が曲をつけているが本日の演奏は「山崎風雅」作曲による。"すずと小鳥とそれからわたし みんなちがってみんないい"詩の解説は敢えて割愛させていただく。

6.女ひとり
 ご存知、永 六輔、いずみたく&デュークエイセスによる「にほんのうた」シリーズの京都編。全国47都道府県にわたって新しい郷土のうたつくりが始まったのは昭和40年(1965年)3月。昭和41年(1966年)に"女ひとり"他「にほんのうたシリーズ」でレコード大賞企画賞受賞。「にほんのうた」シリーズの中でも最も愛されている曲といっても過言ではない名曲。

7.筑波山麓合唱団
 同じく「にほんのうた」シリーズの茨城編。昭和44年(1969年)"筑波山麓合唱団"他「にほんのうたシリーズ」でレコード大賞特別賞受賞。22年前、一ノ蔵男声合唱団結成のきっかけとなった"謎のコンサート"で歌った曲で我が団の愛唱曲のトップ10に入る。10年ほど前オーストリアでの演奏会後のパーティーでは3回のアンコールがあり、3回目には現地の合唱団や参加した子供たちも一緒に歌って踊った経緯がある。

2nd stage... 魅惑のミュージカル・セレクション

1.セレナーデ 「学生王子」より ("Serenade" from The Student Prince)
 1924年、ブロードウェイ初演。ウィルヘルム・マイヤー=フェルスターの戯曲「アルト・ハイデルベルク」をもとに、ドロシー・トネリーが台本・歌詞を、シグムンド・ロンバーグが曲をつけた全2幕5場のミュージカル。カールスベルグの王子がハイデルベルグで学生生活を始め、街の飲み屋の娘と恋に落ちる。「皇太子の初恋」のタイトルで映画化もされている。ハイデルベルグでの第一夜。寝つかれぬまま庭を散歩していた王子は、そこにケティーの姿を見つけ、自分の胸の内を歌に託すのだった。

2.メモリー 「キャッツ」より ("Memory" from Cats)
 1981年、ロンドン初演。原作はT.S.エリオットの詩集「おとぼけじいさんの猫行状記」であり、詩集の中の詩にアンドリュー・ロイド・ウェバーが曲をつけ、一編のミュージカルに仕立てた作品。世界的な大ヒットとなり、日本では劇団四季が現在も上演しており、国内ミュージカルの最多上演記録を更新中である。月夜のゴミ捨て場で繰り広げられる、年に一度の大舞踏会でネコ達が夜を徹して歌い踊る。「メモリー」は、今では嫌われ者の娼婦ネコ、グリザベラが、昔の自分の美しさに思いを馳せ、人生の希望を歌い上げる。

3.運がよけりゃ 「マイ・フェア・レディ」より ("With a Little Bit of Luck" from My Fair Lady)
 1956年初演。戦後のブロードウェイを代表する、文句なしの大傑作。原作はジョージ・バーナード・ショウの戯曲「ピグマリオン」。言語学者ヒギンズが花売り娘イライザに発音の猛特訓を行い、社交界へとデビューさせる物語。「運がよけりゃ」は、イライザの父アルフレッドがイライザがヒギンズに囲われたものと思い込み、「自分にも運が向いてきたぞ」と歌いながら飲み歩く場面で歌われる。他にも「踊り明かそう」「スペインの雨」「君住む街角」など、数々の名曲を生み出した。

4.彼を帰して 「レ・ミゼラブル」より ("Bring Him Home" from Les Miserables)
 1985年、ロンドン初演。原作はフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの同名小説(邦題「ああ無情」でおなじみ)。1987年にはブロードウェイ進出を果たし、日本を含めて世界28か国、16か国語で上演された。「彼を帰して」は、フランス革命の場面で、バルジャンが疲れて眠るマリウスをみて「自分は死んでもいいから、彼を家に帰して」と歌う。

5.見果てぬ夢 「ラ・マンチャの男」より ("The Impossible Dream" from Man of La Mancha)
 1965年、ブロードウェイ初演。舞台は16世紀のスペイン。宗教裁判にかけられる詩人セルバンテスが、申し開きのために即興劇を披露する。最初に彼が演じるのが、気のふれたキハーナ老。この老人が幻想の中で、遍歴の騎士ドン・キホーテに変身するという、三重構造の物語が見事にまとめられている。作品のテーマと言える曲が「見果てぬ夢」である。最初にドン・キホーテが歌い、ラストでは囚人たちがコーラスで感動的に盛り上げる。

6.ブロードウェイの子守歌 「42番街」より ("Lullaby of Broadway" from 42nd Street)
 1980年初演。「ブロードウェイの歌と踊りの物語」という副題がついたこの作品は、1930年代のミュージカル映画の傑作「四十二番街」をステージに甦らせたもので、ショービジネス界のサクセス・ストーリーを描き出す。新作ミュージカルにコーラスガールとして採用されたペギーは、スター女優のドロシーの大ケガにより、主役に抜擢される。「ブロードウェイの子守歌」は、猛特訓に耐えかねて自宅に引き籠ってしまったペギーを仲間たちが誘い出すシーンで歌われる。

3rd stage... 男声合唱組曲「柳河風俗詩」

 九州の西側 有明海に注ぐ筑後川。その河口から張り巡らされた水路に囲まれた城下町が、水郷 柳河(現在の  柳川)です。江戸時代の昔から漁業や商いの要所としても栄え、溝渠(ほりわり)の船に多くの人や物が行き交い、盛り場もにぎわいを呈していました。北原白秋の生家は藩御用達の代々続いた卸問屋で、父の代にはもっぱら造り酒屋を営んでいました。母の実家には古今東西の多くの書物があり、白秋は祖父、叔父らの影響で文学に目覚め、詩歌の創作にハマっていきました。明治のなかばに鉄道が山側を走るようになると、交通の要所は内陸に移り、柳河の町は次第に活気を無くしていきました。友人達と創作に没頭していたそのころ、島崎藤村、与謝野晶子らが文壇に登場。感情を露わにした鮮烈な作品に心を突き動かされた白秋は、ついに19才の春、高校を中退、陸蒸気に乗りひとり上京しました。
 詩群「柳河風俗詩」は第二詩集「思ひ出」に収載され、1911年(明治44年)白秋26歳の時に出版されました。当時、白秋の実家は廃業に追い込まれており、悲痛な思いの中で故郷を描きました。「私の郷里柳(やな)河(がは)は水郷である。さうして静かな廃市の一つである。」(「思ひ出」序文より)。子どもの頃の懐かしい風景とナイーブな感情、そして、さびれゆく柳河の哀しさを美しく歌っています。

 作曲家 多田武彦は1930年(昭和5年)大阪生まれ。就職後も日曜作家として作曲を続け、60を越える合唱組曲を作曲。男声合唱界で最も人気の高い作曲家です。作曲を清水脩に師事。「そろそろエチュードを作ってみては」との勧めで作曲されたのがこの男声合唱組曲『柳河風俗詩』。次のレッスンまでの1ヵ月で作られたそうです。1955年(昭和30年)京都大学男声合唱団により初演されました。以来、半世紀にわたり、多田武彦の代表作のひとつとして、数多くの合唱団で歌われています。
起・承・転・結に則った様式美、白秋の詩に寄り添ったメロディとハーモニー、日本の古典芸能の伝統を生かした"間"の取り方、など、合唱音楽の魅力を余すことなく引き出しています。

1.柳河
 旅人を誘(いざな)う馭者のラッパの音。今は勢いをなくした柳河の 一風景がクローズアップされます。そして今日も、昨日と変わらぬ夕日が柳河の町を包んでいきます。

2.紺屋のおろく
 おさなごころにちょっと気になるあの娘。おませに着飾ってすまし顔で自分の前を通り過ぎる。自分のことなど相手にしてくれない憎いヤツ。あんなヤツは死んじまえ!と心にもないことを言って、慌てて後悔。男ごころは複雑です。

3.かきつばた
 町の衰退と共に、遊び場も寂れていきます。その哀しさがこの花に重なります。

4.梅雨の晴れ間
 今年もやって来た旅役者達による歌舞伎小屋。演目は「義経千本桜」。しかしあいにくの梅雨空に、畑に建てた芝居小屋のムシロは水びたしになってしまった。雨も上がり、さあ、溜まった水を漕ぎ出そう。赤い隈取りの化粧もそこそこに、狐忠信、足こぎポンプを必死に回す。旧き良き時代の田舎の午後の一場面です。

 さて、その後の柳川ですが、1970年代の高度成長期に溝渠を埋める話が決まりかけたものの、かろうじて存続。今も水郷めぐりを楽しむことができます。船頭さんの漕ぐ船のゆったりとした流れに身を任せて緑の間を漂うこと小一時間、日頃の忙しさを忘れ、あの頃にタイムスリップしたかのように、体のリズムがゆったりとなごんでいる自分を感じることができます。

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Last update : 9 November 2008

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