英語は言葉の違う民族が話をする時に使う国際語だと多くの人が考えています。しかし、英語は日本語やドイツ語などと同じように一つの民族の言葉であり、母語として使う人々がいます。母語というのは無意識のうちになんの苦労もなく母親や家族から自然におぼえた言葉です。その母語は皮膚の色や髪の毛と同じように死ぬまで取りかえられないものです。母語として話す人がいる民族語が国際語になってしまったら、その言葉を話す人たちだけが得をすることになります。つまり、英語が国際語であるなら、英語を母語とする人々だけが有利になり、それ以外の言葉を話す人々は大変不利になるということです。英語を生まれつき話せる人は何の苦労もなく英語を使えるのに、それ以外の人たちは時間と労力をかけて英語を学ばなければならないのです。これは明らかな差別です。その差別をなくすために、どの民族の言葉でもないエスペラントが必要になってくるのです。
エスペラントは、1887年にポーランドの眼科医ザメンホフが言葉の違う民族のために考え出した国際共通補助語です。発表から100年以上たって世界中で約10万から100万人が使っていると言われています。エスペラントはヨーロッパの言語を基礎に作られているため、「ヨーロッパ語の新しいメンバーである」という人もいます。しかし、文法構造は大変簡単でほとんど例外はなく、ごく短時間で身につけることができます。エスペラントは民族語ではありませんから、英語などと違いすべての民族が意識的に学ばなければならず、その点で中立といえます。現在、エスペラント運動の国際組織である世界エスペラント協会はユネスコと「情報・諮問関係」を結んでいて、ユネスコや国連などの様々なキャンペーンに積極的に協力しています。なおエスペラントを学習する人、話せる人をエスペランチストといいます。
世界中の様々な地域にエスペランチストがいるという点で、他の言葉にはない利点があります。
◆国際文通 エスペラントだけを使って、欧米、アジア、アフリカ、オセアニア、中南米など、いろいろな人々と手紙のやりとりができます。文通相手を紹介するシステムもきちんとしているため、相手も簡単にみつけることができます。
◆外国旅行 エスペラントを話せる人なら無料(または無料に近い金額)で自分の家に泊めてもいいというエスペランチストのリストがあります。これを利用して安く世界中を旅行できます。また都合さえ合えば、その土地を案内してくれるエスペランチストもいます。
◆国際的な情報収集 世界エスペラント協会には専門家リストというのがあり、自分の専門のことに関して情報を提供できるというエスペランチストのリストがあります。このリストを利用すれば、様々な分野、例えば環境、医学、科学、ジャーナリズム、歴史学、政治学、宗教などの学術的なものから将棋、チェス、切手収集などの趣味の分野まで情報をうけとることができます。
◆インターネット 世界中に広がったインターネットを通じてエスペランチストと交流ができます。また、エスペラントに関する情報やエスペラントによるホームページも100以上あります。
◆エスペラントの本や雑誌を読む 現在までに膨大な量のエスペラントによる文学作品が生み出されています。世界の古典文学や現代文学の翻訳、さらにエスペラントの原作もあります。エスペラントによる時事雑誌、専門誌なども発行されており、自分の世界を広げることができます。
◆エスペラントで作品を書く 表現意欲のある人はエスペラントで文学作品を書いたり、エスペラント雑誌に投稿したりすることができます。世界中の様々な地域の人たちに自分の作品を読んでもらえます。
◆エスペラントによるビジネス まだ規模は小さいですが、エスペラントを使ったビジネスを実践している人もいます。また、商品名などにもエスペラントの単語をつかって新鮮さを出している例も見られます。
エスペラントは人工語だから人間の感情など表現できないという人が時々いますが、エスペラントも他の民族語と同じように感情を表現できます。世界のエスペランチストの実際の交流をみれば、感情を表現できないということがいかに勝手な先入観であるかすぐに理解できるでしょう。また国際結婚をしてエスペラントで意志疎通を図っている夫婦も世界中にいます。彼らにとってエスペラントはケンカもできる、愛もささやき合えるちゃんとした言葉なのです。
また、エスペラントの考えは他の民族語をなくしてエスペラントだけで世界を統一しようとするものだと考えている人もいます。これも間違いです。エスペラントは国際共通補助語です。「補助」ということばが示すように様々な民族語の仲介をはたす役割を持っています。むしろそれぞれの民族語を守るための橋渡しの役目をもっているのです。特定の民族語が国際語になり他の民族語を圧迫することのないようにエスペラントが存在するのです。
◆文字と発音はほとんど一致しているので、文字の通り読んで発音の通り書けばよいのです。アクセントは常に後ろから二番目の母音にあります。例:amiko(友達)「アミーコ」 japano(日本人)「ヤパーノ」
◆造語能力があるので、単語の記憶が楽にできます。例:lern(学ぶ)ej(場所)ant(する人)o(名詞語尾)→lernejo(学校)lernanto(学生)
◆語順によってニュアンスをあらわせます。「-n」は「〜を」とだいたい同じです。
例:Esperanto naskas revon.「エスペラントは夢を生み出す」
Revon naskas esperanto.「夢を生み出すんだ、エスペラントは」
Naskas esperanto revon.「生み出すんだ、エスペラントは夢を」
Naskas revon esperanto.「生み出すんだ、夢を、エスペラントは」
池袋エスペラント会は1969年に創立され、現在まで活動を続けています。主な活動はエスペラントの普及、外国人エスペランチストとの交流、会報の発行、エスペラントの学習などです。週一度の例会ではエスペラントの学習を中心に進めています。外国人エスペランチストとの交流は年に数回行っており、過去にもフィンランドやフランスなどのエスペランチストが合宿や例会に参加しました。会報は月一回のペースで発行しており、ごく簡単な冊子ですが何年も続いており会員のエッセイや意見などが載っています。例会ではエスペラントの書物を読んだり、ビデオを見たり、あるテーマについて話し合ったりしています。会員は25名ですが、毎回例会に来るのはおよそ7、8人です。また日本在住のハンガリー人エスペランチストも積極的に会に参加しており、エスペラントを話す絶好の機会を提供しています。
池袋エスペラント会では随時新会員を募集しています。初心者に対してはベテランエスペランチストが教えます。また初心者講習会をおおむね毎年4月と10月に開いています。気軽にご参加ください。エスペラントについてもっと詳しく知りたい方、疑問や反論がある方もぜひいらしてください。お待ちしています。
★例会日時・場所
毎週木曜日、夜7時〜9時 南大塚社会教育会館、または駒込社会教育会館
(1997年2月作成)