計画の立て方         2003.4.27作成     
 
 登山はリスクのあるいわばプロジェクトですから、リスクを予測しその対処方法を十分に検討することが計画の要点です。冬季を除く高さ2000m程度以上の山を対象とします。ルートはガイドブックや市販地図に掲載されている一般ルートを前提とします。なお、食料や装備の計画はここでは触れません。


1.基本事項
 
1-1 何処へ行くかを決める。
 山名または山域名を決めます。例えば「穂高岳へ登る」というと、穂高岳(奥、北、前、西の4峰)のいずれかの頂上を踏むことが目標になります。高山植物を見たいという場合は白馬岳や北岳などのお花畑へ到達することが目標になります。
 
1-2 特別な目的をはっきりさせておく
 例えば高山植物を見る、紅葉を見る、写真を撮る、キャンプを楽しむ、子供をつれてゆく、沢登りやロッククライミングをする、ご来光を見る、雄大な景色を楽しむ、星空を見る、スケッチをする、など。
 
1-3 メンバーを決める。
 登山の目的をほぼ同じくするメンバーとする必要があります。単独行は精神的にも厳しく、充分な経験が必要です。2名から5名ぐらいまでが行動しやすい人数です。
 
1-4 日取りを決める。
 コースや目的に合った時期を選択する必要があります。日本アルプスの場合少なくとも山中で1泊以上する事になります。
 
2.コース計画
 コース計画とは複数のルートの中から一つを選択し、何時どの地点に到達するかという計画です。
 
2-1 ルート選択
 登山の山域を決めたら、ガイドブックや地図により山行の目的に合ったルートを選択します。目的に沿った場所、例えば頂上やお花畑を含む複数のルートを検討します。歩行時間、歩き易さ、景色、安全性など様々な要素を考慮します。天候の可能性や季節も考慮します。しかしいろいろ制約があっても結局は、ガイドブックの写真などを眺めているうちに「ぜひこのルートを歩いてみたい」という気持ちがはっきりしてきます。そのルートがたいていは最善の選択です。そしてその時にはルートの良い点も問題になる点もしっかり認識できています。
 一般的な話はあまり意味がないのですが、コースの概略を事前にこの程度把握すればよいという目安として。大きな山系の場合一般に頂上へ至るルートは複数有り、尾根をたどるか谷をたどるかによって随分様相が異なります。尾根は見晴らしが良く風が通ります。谷は水の流れや音が楽しめるしひんやりとした木陰を歩けます。尾根は始めの上りがきつく、沢は最後の上りがきついなど。
 地図で地形は分かってもルートの危険度や植生までは分かりませんので未経験の山はガイドブックが頼りです。台風などの豪雨の後は橋の流出やガレ場の様相などが変わることがあるので地元の情報に注意します。
 
2-2 小屋とテント
 小屋の良い点は、テントやシュラフや食料を持参しなくて良いので荷物が軽いことです。幕営や炊事などの技術が必要無く手軽に山が楽しめます。小さな小屋では主人や同宿の人たちとの交流が生まれるのも楽しい。天候やルートに関する最新の情報も得られます。夕ご飯までのひとときは、特にすることもないので小屋の近くを散策したりお茶を飲んだりしてのんびり過ごせます。なお、夕食の時刻までに小屋に入らないと食事が無いし、小屋に辿り着けなければ屋外で夜明かしすることになります。
 テントの良い点は、風や雨を身近に感じ自分たちだけで静かに過ごすことができます。テントからちょっと顔を出せば星空が見えるし自然の懐に抱かれたような気持ちで過ごせることにあります。もちろん費用は格安です。なお、テントだとどこにでも泊まれるというわけではありません。国立公園内ではキャンプ指定場所以外では幕営は禁止されています。キャンプ指定地では水場やトイレが整備されており、最寄りの山小屋が管理しています。従ってテントだろうが山小屋だろうが泊まるところはほぼ同じ場所になります。まあしかしあまりうるさいことは言われませんが。
 どちらが良いかというとテント泊まりが良いのですが、平地でのキャンプと異なり高所でのテント泊まりの技術や体力が必要です。高価な装備も必要になります。あなたが若くて体力があり、長く山登りを楽しもうと思うなら、ぜひテント泊まりの技術を身につけることを勧めます。その技術は誰かに教わる必要があります。

[参考1]ちなみに3泊のテント泊まり山行で2〜3名の場合、一人当たりの荷物は14kg〜18kgとなります。小屋泊まりの場合は水1.5Lと昼食(小屋で購入するお弁当)を含めて4kg〜7kgで済みます。

[参考2]小屋泊まりの費用は小屋によって異なりますが、2食付きで8,500円/泊・人ぐらいです。食事無しの場合は4,500円ぐらい。テント泊まりの場合は400円/泊・人ぐらいです。
 
2-3 行動時間
 1日の行動時間は最大日の出少し前から日没までです。夜間登山は月明かりやヘッドライトなどでルートをたどりますが、一般には避けたい所です。長い縦走などでは早朝4時ごろから歩き始め、昼過ぎに目的地に到着します。日没までの時間の余裕が大変重要です。小屋泊まりでも朝7時までには出発可能です。そして15時ぐらいには宿泊予定地に到着するような計画にします。なお、数日の山行の場合の1日目は、体調を把握し体を慣らすために、できれば行動時間を4時間ぐらいまでにしたいところです。交通機関を調べて登山口には何時に到着できるか、その夜の宿泊地へは何時に到着できるかを調べます。下山口の交通機関も最新の情報を調査しておきます。以前、木曽駒ヶ岳で山頂の混雑からうってかわって静かなルートを下ったのですが、帰路予定していた路線バスが廃止されており苦労した経験があります。
 コースタイム(所用時間)はガイドブックが参考になります。しかし間違いもあるし個人差もあるので注意を要します。市販のガイドブックや地図に記載されているコースタイムは、軽荷の人が比較的ゆっくり歩いた休憩時間を含まない時間です。ですから特にテント泊まりで荷物が多い時など、急登では予定以上に時間を要することがあります。一般にガイドブックに記載されている上りと下りのコースタイムが大きい場合は急な上りです。標高差は上り最大700m/日ぐらいを目処としたい所です。例えば横尾(標高1,600m)から奧穂山頂(3,190m)までは1,600m近い標高差があります。
 
2-4 予備ルート、予備日
 天候悪化やメンバーの体調不良等に備えて、予備の下山ルートを想定しておきます。一般に雨天時も晴天時と同様に行動します。しかし、発達した低気圧の影響等による暴風雨で行動困難になったり、崖崩れ、増水などによりルートが寸断され行動不能となることもあります。
 メンバーの体力や体調によっては歩行困難になったり著しく歩行時間を要する場合があります。捻挫や骨折、高山病などの可能性もあります。
 これらの可能性を考慮して、夏期でも下山予定が延びる可能性があること、他の下山ルートも予め調べておくことが必要です。なおテント泊まりの場合でも、ルート付近の山小屋の営業状況を事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
 
 

 
[資料] 高山植物の豊富な山
 礼文島、大雪山、八甲田山、早池峰山、月山、尾瀬、白馬岳、白根三山、八ヶ岳、白山、伊吹山、剣山


EN

山のトップページへ
TAKUYAのトップページへ