歩き方                2002.2.24作成     2006.11.18更新
 たかが歩き方と言う無かれ。山は歩いて登るのである。歩くことが快適でないと山へゆく意味がない。
歩くことを快適にするための技術や知識があるのだ。
1.靴のはきかた
 靴は踵の部分がしっかり靴に密着するように履きます。靴の中で足が動くようだと靴擦れの原因にな
ります。特に足を濡らしてしまうと皮膚がふやけて靴擦れになります。靴ひもは踵がしっかり固定出来
るようにきつく締め、甲から先と足首の部分は強く締めすぎないようにします。歩き出して15分から
30分程度で再調節します。
 
2.荷物の背負い方
 荷物はザック一つにして背中に背負います。肩紐の調節は、なるべくザックの重心が首の付け根に近
くなるように短くしたほうがよいでしょう。ザックの加重が背中全体と腰に分散するように背負う人の
体格に合わせてザックの各部を調節します。背中とザックが離れずに背中のラインにぴったり張り付く
ような感じで背負います。

3.ザックの荷物の詰め方(ザックはドイツ語、リュックは英語。山用語はドイツ語を語源とするもの
 が多い)
 ザックの荷物の積め方は左右の重さが偏らないようにして軽い衣服などを底へ、重いものを上部ので
きるだけ背中側へ詰めると重心が高くなって歩くときにバランスがとりやすい。東南アジアで重い水瓶
などを頭に乗せて運んでいるのは実は結構合理的な方法なのです。
 行動中に使用する可能性のあるものは出しやすい場所に詰めます。でもザックの外側に水筒をぶら下
げたりいろんなものを取り付けると、引っかかったりぶつけて壊したり、結び目がほどけて紛失したり
歩くときに音が気になったりしてお勧めできません。
 歩き出してから荷崩れないように、衣類などはひもなどで固く小さくまとめます。中の物の形が変わ
るとザック全体の形が変形したりゆるんで背負いにくくなったりします。学校山岳部で新人のころは、
シュラフを固く左右均等に巻く練習をしたものです。
 ザックは雨天時のためにサイズの合ったザックカバーが必要ですが、シュラフや衣類は万一川の中に
落ちても濡れないぐらいにきちんとビニール袋に入れて固く縛っておきます。ザックは硬い岩に当てた
り尻餅を付いて背中から転んだ時に圧迫することがあります。カメラや眼鏡、ストーブ(コンロのこと)
は丈夫な容器に収納しておきます。

4.休憩の取り方
 通常は50分歩くと10分休憩します。急な登りなどでは25分歩いて5分休憩としても良い。あま
り休憩時間を長くとって体が冷めてしまうと歩き始めがかえって苦しくなることがあります。
 グループで歩くときは全員が休憩地点に揃ってから荷をおろすようにする方法もありますが、普通は
その必要はないでしょう。でもさっさと良い場所に腰を下ろしてしまうのは考え物です。
 休憩の時は水分やカロリーを補給します。水分は外気温や汗のかきかたに応じて十分に取ります。カ
ロリー源はなんでも結構ですが、私は氷砂糖が後口が良いと思います。ビタミンを添加したジュースも
お勧めです。
 休憩の場所は、第一に安全な場所であること。落石や転落の危険がない場所であることが大事です。
暑いときには木陰で風の通る場所、雨天時は雨がしのげる場所、もちろん見晴らしの良い場所が理想的
です。休憩を終えて歩き出してさらに見晴らしの良い場所に出逢えば、足を止めるなりさらに5分休憩
すればよいのです。
 山頂や景色の良いところでは当日の予定にもよりますが、十分時間をとって休憩します。これは休憩
目的と言うよりも山を楽しむためです。山を楽しめないと何のために山に来たのだかわからなくなりま
す。大休止の場所では写真を撮ったり、お茶をわかしたりちょっと特別なお菓子を食べて過ごすとよい
でしょう。

5.行動食・水筒
 行動食とは昼食以外に主としてカロリー補給の目的で携行する食べ物です。休憩の都度氷砂糖を2か
けぐらい食べるのが私のパターンです。ビタミン入りのジュースも美味しくて元気が出ます。このほか
レモンなどの果物、サラミ、ムキ栗、チョコバーなど、何でも結構です。一度モモ缶を頂上で食べたの
が最高においしくて、以後必ず1個持参する習慣になりました。もちろん缶は持ち帰ります。
 水は1日6時間から10時間ぐらいの行動用(昼食用も含む)として夏ならば1.5〜2リットルで
す。このうち半量から1/3をジュースにすればよいでしょう。一度ジュースで使った水筒は匂いが取
れないのでジュース専用になります。寒い時期や雨天時などは1リットル程度で十分。個人差があるの
で一律に決める必要はありません。
 冬季は熱いお茶も良いと思います。なるべく軽くて保温性の良いポットにお湯を入れてゆきます。冬
季のハイキングなどではお勧めします。小屋泊まりではお茶を貰える場合が多いですが大きい小屋では
朝は込み合いお茶の確保が難しい場合もあります。荷物や時間の余裕があればストーブを持参して大休
止の時などにお湯を沸かしてコーヒーを飲むのも良いでしょう。なお、栄養補給という面から言うとで
きればコーヒーよりはココア、ミロがよいでしょう。昼食用としてラーメンは水分と塩分の補給になる
し、なにより喉の通りがよいのですが、お湯が大量に必要で多人数の場合はやや不適です。粉末のポタ
ージュ程度がよいでしょう。
(水の補給方法)
 現在日本のアルプスの沢の水は本流の水は全て飲用不適と考えて下さい。この原因は上流の山小屋の
排水と屎尿汚染が原因です。明確に飲用とされている水源以外の水を飲まないこと。コップを持参する
なら濁水や浮遊物がよく分かる白いものがよいでしょう。
 高所では小屋が水を汲み上げていることが多く、この場合は1リットル100円ぐらいで買います。
小屋は水を売りたいわけではなく、節約して貰いたいのだということを忘れないでください。

6.歩き方 (2006.11.18更新)
 安定した歩き方は、モデルのように1直線上を歩くのではなく、肩幅よりやや狭いぐらいの二本線の
上を歩くようにすると安定します。不整地では靴底が均等に接地しないので、バランスを崩しやすいの
です。舗装路を歩くときよりも少し左右の足の間隔を広げると、多少バランスを崩しても重心が体の内
側に保たれるます。また、同じ理由で左右のつま先は少し外側に広げるように歩くと、歩幅を広げすぎ
るより状態のゆれが少なく、安定します。
 基本的にはかかとで歩きます。登りでつま先で背伸びするように歩くと疲れます。
下りでは少し先を見て歩きやすい場所を選びながら歩きます。特に浮き石に十分注意します。疲れて
くると足首の内側が擦れ合って汚れるので解ると言われますが、そのころが足首を傷めたり転んだりし
やすい時期です。
 急坂を下る場合の歩き方は難しい。急坂の下降では膝を痛めないように、膝の負担を逃がしながら歩
くようにします。私の場合、筋力が落ちた状態で大杉谷の長い下りで一度両膝を痛めてからは、30分
ぐらいの急坂の下りでも必ず膝に痛みが出るようになりました。
 昔から膝にかかる垂直方向の力を逃がすように尻を振って歩くと良いなどと言われていますが、下り
の時に、膝をまっすぐ伸ばしたままで体重をかけるのが一番良くありません。膝は常に少し曲げた状態
で歩いてください。こうすると膝への負担が減らせます。そのためには筋力が必要ですから、筋力が衰
えると下りで踏み出すほうの足の膝を曲げることができなくなり、関節に負担がかかるようになってし
まうというわけです。早足で走るように歩くと膝が延びないので、自然に膝への負担を減らすことがで
きます。走る場合は絶対安全な場所であることが条件です。ストックの二本使いも多少は有効ですが、
あまりストックに頼ると両腕が疲労します。ストックはあくまで、安定して歩くための道具です。

7.歩くペースについて(2006.11.18部分更新)
 登山は苦しむのが目的ではありません。メンバー全員が快適に歩けるように注意します。歩くペース
は特に登りではゆっくりとなるべく止まらずに歩きます。かなり早いペースで歩き続けられそうだと思
っても、特に高所では後でガックリと体力が落ちたり高山病にかかりやすいのです。十分酸素を供給し
ながら体を慣らしてゆくようなつもりで歩くとよいでしょう。
 山では上り優先と言われるように、登る人のペースを乱さないように下る人が道を譲るのが常識です。
譲られたほうは「こんにちは」とか「ありがとう」というのがマナーです。幸いこのことに関しては現
在でも昔と変わらぬ光景を見ることができます。
 また、後ろのパーティーに追いつかれそうになったら、道をあけて先に行ってもらいます。最後尾の
ひとが、前のメンバーに声をかけるか、「お先にどうぞ」とか、外国人の場合なら"after you"(冗談)
と声をかければ、前のメンバーにも聞こえます。

8.グループの歩き方
 5名以上位のグループになるとメンバーの歩く順序にも工夫が必要になります。体力の弱い人が前を
歩き全体のペースを作ります。先頭は歩きやすいルートをしっかり示さないといけないので、通常サブ
リーダーが歩きます。サブリーダーはメンバーの体調や体力差を把握しながら歩くペースをつくって行
くと同時に、浮き石などの危険を後ろに続く人に注意を促します。
 体力がある人は後方を歩き最後尾をリーダーが歩きます。リーダーの役割は全体を掌握することです。
前の人が見える位置に誰かがいれば転落事故などの際も適切な対応ができます。体調が良いからといっ
て、どんどん先を歩いていくというような行動は避けます。

9.ルートファインディング
 ルートは、通常はしっかりした踏みあとを辿ります。踏みあとが複数有る場合は大抵はどちらも同じ
様なものです。冬のルートはアイゼンの傷が付いていますが夏のルートと同じとは限りません。また冬
のルートは高い木の枝などに赤や黄色の布を結びつけた目印が残されています。夏のルートは日本アル
プスなどでは赤や黄色のペンキで矢印や○印がしっかりした岩につけられています。ルートをはずれる
と浮き石が多くなったりして危険です。
 山では尾根と谷の大体の地形を頭に入れながら歩きます。予定のルートが尾根を辿るのか谷を辿るの
かということは地図で調べておきます。そして地図上では現在位置を見失わないようにして、尾根筋と
谷筋の方角を確認しながら歩きます。
 もし分岐があって不安なら、時刻をメモしておきそこから決めた時間だけ歩いてみて方角や周囲の地
形を確かめます。大勢のグループ場合は1〜2名偵察を出します。

10.ガレ場の歩き方 (ガレ場というのはごろごろした不安定な岩ばかりのところ)
 若い頃にもっとも怖い思いをしたのが剣の白萩川から大窓への登り。時折こぶし大の石がヒュッと飛
んでくるようなガレ場でした。足もともほとんど浮き石(不安定な石)だらけで、落石を起こさないよ
うに歩くのに苦労しました。
 ガレ場ではまず、常に上方に注意して落石を自分で避けます。ガレ場は極力短時間で抜けるようにし
ます。危険度にもよりますが休憩はなるべくさけます。同時に自分が落石の原因とならないように足下
に注意して、体重は出来るだけ垂直にかけて石を動かさないように歩きます。自分が原因の場合はもち
ろん、そうでない場合も落石を発見したら大声で「ラク」と叫びます。ガレ場の下部や落石の可能性の
ある場所は急いで通り過ぎます。落石や崩落は雨天時や雨天直後に多く発生します。

11.雪渓の歩き方
 雪渓上はできれば歩かない方がよい。だが沢のルートはガレ場が多く、雪上の方が歩きやすい面もあ
ります。雪渓を歩く場合、もっとも注意すべき事は踏み抜きです。雪渓は中央部と両端部分の厚みが次
第に薄くなります。中央部を踏み抜くと数m下の冷たい流れに落ちます。岩で負傷するか冷たい流れか
ら脱出できなければ数分で低体温症で死にます。だが事故の事例はほとんど無いようです。当然ながら
雪渓の下には入らないようにしてください。なお、雪渓の踏み抜きに関しては午前中は比較的安全だと
言えます。歩き方はしっかりステップを刻みながら歩きます。ストックは有効と思います。
 さて、比較的緩やかで安全な雪渓を下る場合は、「グリセード」という楽しい方法があります。靴だ
けですべりおりるのです。スケートのように両足を交互に踏み出しても良いし、うまく行くと両足をそ
ろえて数分間以上スキーのようにすべりおりることもできます。同じ場所でも雪の量や雪質によってう
まく行く場合と行かない場合があります。転んでも安全だという確信が有る以外は止めた方がよいでし
ょう。北岳の大樺沢(おおかんばさわ)では二股からほとんど広河原まで延々とすべりおりたことがあ
ります。ここをいずれショートスキーでおりてみたいというのがちょっと夢です。

(ピッケル)
 特に急な雪渓の斜面をトラバース(横断すること)する場合は山側の方にピッケルを突きます。急な
雪渓ではステップを切ったり滑落時のためにピッケルを使用しますが、ピッケルを使いこなすためには
トレーニングが必要です。
(アイゼン)
 アイゼンは氷に対して有効です。日本の夏山では地図に記載されているようなルートの場合は基本的
には不要です。だが夏の白馬の雪渓でも装着すれば歩きやすい。このような場合は簡易型のアイゼンで
も十分ですが1万円前後で軽くて性能の良い本格的なアイゼンが買えます。大型のものはかさばるのが
難。軽アイゼンは一般にスリップしてもほぼ安全と思われるようなところで使用します。そうでない場
合は本格的なアイゼンとピッケルの技術が必要ですしザイルワークの訓練も必要です。

12.岩場の登り方
 一般ルートでも岩登りに近いようなコースに遭遇することがあります。手で登ると一挙に疲労度が増
すので岩場でも基本は脚力だけで登ります。岩場では体を岩から離すこと、はいつくばるとルートがよ
く見えないし横向きの加重が増してスリップしやすくなります。
 落ちると危険な場所では基本は「3点確保」です。手足4本のうち3つを常に固定するという原則を
守ること。つまり手足の内同時に2つを移動させてはいけません。
 危険を感じるような場合は無理をしないこと。できればザイル(ロープのこと)で確保してもらうこ
と。ザイルワークはトレーニングが必要です。ベテランでも恐怖心にとらわれると膝が震えて立ってい
られない状態になることがあります。危険な場所では緊張感を失わないことが最も重要です。
 あらかじめガイドブックなどでルートをよく調べてメンバーの技術や経験に合ったコースを選定する
こと。また最近そのコースを経験した人がメンバー中に加わっていれば理想的です。

13.天候について
 雨の場合は特に高所では体を濡らさないこと。体温を奪われるとすぐに歩けなくなります。衣類の通
気性が無い場合も汗でずぶぬれになりやすいので注意が必要です。
 雷はもっとも危険です。まず尾根筋を離れること。足場の不安定な場所を避けます。高い木から3m
以上離れなるべく姿勢を低くします。積乱雲の場所に注意し、音が聞こえたら直ちに避難を考えます。
 天候は学校山岳部だと毎日16時の気象放送を聞いて天気図を書きます。涸沢のような大きなキャン
プ地だと天気図が掲示されています。大きい小屋だと大抵衛星放送で天気予報をテレビで見ることがで
きます。長野や岐阜では山岳気象も通常の放送で聞くことができます。山の気候は一般に午前中温度が
上昇する間は安定し、午後から崩れやすい。台風や低気圧に特に注意が必要です。
 台風は1,000km程度離れていても影響があります。高気圧の影響下であればおおむね天気はよ
い。そうでない場合は雨天を前提とした準備と心構えが必要です。なお、強風は体感温度を低下させま
す。強風時には短パンTシャツのような軽装は避けたいものです。

14.道に迷ったとき・ビバーク
 ルートを完全にはずれた場合、一般には沢筋をくだって行くと人家があります。ただしアルプスなど
では急峻な沢が多く転落の危険があることと沢筋では植物が密生していて歩行困難なことが多いので、
尾根へ上がるほうが良いと思います。尾根へ上がると自分の位置を確認しやすくまた、万が一の時にも
発見されやすいのです。尾根筋では携帯電話が通じる可能性もあります。
 六甲山のふもとで育った母が深い霧で山中で道に迷ったときのことを子供の頃の私に良く話してくれ
ました。手を繋いでいる人の顔が見えないぐらいの深い霧の中を長い間さまよったときには着ているも
のが霧でぐっしょり濡れたそうです。テレビでみた木こりの父親は家へ戻るといつも子供に半分残った
弁当を与えたということですが、山を熟知している木こりでさえ非常食を用意しているのです。安全な
登山のために、知識と準備が必要です。
 ルートが見つからず疲労が深まってくると、いたずらに歩き回るよりも夜明けを待つほうが良い場合
があります。できるだけ風雨を避け保温を考慮して一夜を過ごします。

15.地図の読み方
 現在地を知ること。方角を知ること。地図からも地形からも尾根筋と谷筋を読みとります。ガイドブ
ックと併用してあらかじめコースの概要を頭に入れておくこと。高山は地形も分かり易く案内もしっか
りしていて一般ルートではまず迷うことはありませんし、他の登山客も大勢いるので訪ねることも出来
ます。
 里山程度の方が道に迷うことは多いと思いますし、その際地図も磁石も持っていないことが多いかも
しれません。方角は、太陽の方向に時計の短針を向けて、文字盤の十二時と短針の向きの中心が南です。
また切り株などでは一般に南側の年輪の間隔が広いです。風の強いところでは木が同一方向に枝を伸ば
しています。

16.事故の際は
  転落・滑落事故の際、本人の所在を確認できない場合は転落直前の本人の位置をマークしておきま
す。ハンカチを枝に結びつけるか、目印を置くと良いでしょう。状況によって転落した本人の位置を自
分たちで探せるかどうか判断します。同時に救援を求めます。救援を求める方法は、携帯電話が通じれ
ば一番良いのですが通じない場合は、他のパーティに最寄りの小屋に連絡を入れて貰うかまたはメンバ
ーの1〜2名を小屋へ向かわせます。事故の際に初めにすることは、「まず靴紐を結び直せ」と言われ
ています。冷静に状況を判断し新たな事故を防ぐことが最も重要です。

17.病気になったら  2006.11.18部分追加
 特に夏期の低山などでは大量の汗をかきますので、熱射病に注意して体温の発散と水分補給に気を配
ります。帽子は日よけと頭部の保護になります。もっとも保護用としてはたんこぶの防止ぐらいの役割
にすぎませんが。
 私が最近悩まされているのが膝のけいれんです。登りが2時間ぐらい続くと両足の太ももがつって、
ほとんど歩けなくなります。しばらく休んでもまた数分歩くと同じ状態になります。色々調べてみたと
ころ、足がつる原因は、筋肉への酸素供給が不足することが原因とのこと。若い時は自分も同行者も全
く経験したことなかったのですが、私は50代で時々経験するようになりました。
 対策として考えられることを述べます。心肺機能を高めること。このためには息が切れるような運動
を継続的におこなう必要があります。エアロビやマラソン、自転車、階段登りというところでしょうか。
筋力を鍛えることも有効だと思います。山では足を冷やさないこと、しっかり呼吸すること。たばこの
影響もあるかもしれません。愛煙家の方はたばこを吸った時手足が冷たくなる経験をしたことがあると
思います。医者の叔父から聞いたのですが、たばこは血管を収縮させる作用があり、腎臓内科の主治医
からも腎臓の血管の出口側が収縮し、負担が増えると聞いています。
 息子が小さい頃悩まされたのが高山病です。いつも2、600m当たりの森林限界を超えて1時間ぐ
らいすると脈が極端に速くなり呼吸が荒くなり頭痛を訴えて苦しみます。横尾当たりへ下りるとけろっ
となおります。体を慣らしながら時間をかけて登るしか有りません。高山病で症状が重い場合は下山し
ます。高山病かどうかということは、高所の診療所で指に洗濯ばさみの様な物をはさんで、爪の色から
血中酸素を測定するとわかります。高山病を予防するには、徐々に体を慣らしてゆくために、一日の高
度差は700m以下にすることが望ましいと言われています。
 長期間の縦走などでは病気や天候悪化に備えてあらかじめ予備の下山ルートを決めておきます。
 一般に病気に備えて各種の医薬品を携行します。下痢止めや解熱剤は必須です。症状に応じて自力下
山が可能かどうかを判断します。急性が疑われる場合などはヘリによる搬送を依頼します。いずれにせ
よ病気の場合はもよりの小屋の支援を得ることが良いでしょう。なお北岳小屋、涸沢ヒュッテなどには
診療所があります。

18.登山届け
 登山の場合は事前に登山口などで登山計画書を警察に届けます。普通は登山口に用紙が置いてあって、
その場で記入して所定の箱に入れるだけです。インターネットや郵送による届けも可能です。登山届け
を提出しても一般に下山したことまで届けるわけではありませんから、下山予定日を過ぎて家族などか
ら連絡があって初めて捜索が始まります。従って、なるべく留守番の代表者を決めておき、その代表者
と「期日までに連絡がなければどこそこの警察に連絡してくれ」という約束をしておく必要があります。
 捜索の際に最も手がかりになるのが登山計画です。勝手に予定のルートを変更して事故に遭うと簡単
には見つけてもらえなくなります。1日の遅れが命に関わることもあります。
 なお、救援や捜索の費用については、警察の捜索は勿論無償ですが民間のヘリを依頼すると多額の費
用が発生します。登山の機会が多い場合はこれらのための保険に加入すると良いでしょう。


END
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更新履歴
2006.11.18 更新 「歩き方」「歩くぺースについて」「病気になったら」
2002.3.2 更新
2002.2.24 作成