国際関係

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2003年4月20日(日) 石油戦国時代に突入−「船橋洋一の世界ブリーフィング」週刊朝日4月11日号より
 イラクの油田の管理について、米国際開発局(USAID)の高官は、米国はあまり前面にでるべきではない、との考え。一方米政権内部では、エリオット・ エイブラムズ国家安全保障会議(NSC)中東・北アフリカ部長らネオコン(新保守主義者)の主張は、イラクの石油を米主導で民営化すべきという。イラクが 石油国営企業体制によるOPECに加入しないとすると、世界石油市場におけるサウジの支配力を弱めることができる、というものである。先の高官は「イラク の石油はイラク人のためにある」というが、イラクにはクルド人もシーア派もいる。「米国務省はスンニ派中心の現石油産業体制を大きく変えることには慎重 だ。イラクの専門家のレベルは高く、協力が不可欠」と明かす。トルコはクルドが油田を握れば将来のクルド独立の経済的基盤になる、と警戒している。
 サダム・フセイン政権がロシア、フランス、中国に与えた石油利権の扱いが課題である。また、ロシアには約80億ドルの累積債務が残っている。湾岸戦争の サウジ、クウェートにタイする補償もある。それらの返済も含めて戦後のイラク再建はイラクの石油を当てにして進められることになる。イラクの石油埋蔵量は 20億バレル。サウジアラビアに続いて世界第二位。ドル換算で4兆ドルである。湾岸戦争後国連の経済制裁下「石油と食料の交換」だけが輸出を認めら れ、米国の石油資本は米国の法律によってイラクの石油開発に一切投資できなかった。90年代半ばのクリントン政権時代、サウジのヤマニ元石油相の証言によ れば「チェイニー(副大統領)、ラムズフェルド(国防長官)、ウォルフォウィッツ(国防副長官)、アーミテージ(国務副長官)らは、イラクを占領して石油 をコントロールすべきだと大統領に進言したことがある。」とのことだ。
 しかしこの戦争を石油のための戦争と見るのは誤りである。それは9.11テロ後の部国の新たな政治、外交、安全保障のうねりの中ででてきた。アメリカは 石油価格の下落は望んでいない。特に石油産出州のテキサスは価格安定を強く施行する。イラク戦争は石油のために戦ったのではない。しかし、イラク戦後は、 石油をめぐる戦いとなるだろう。−以上、「船橋洋一の世界ブリーフィング」による。

 「ブリーフィング」の最後はどんでん返しで、「イラク戦争はオイルの為に非ず」となる。彼が今後も米国現政権のロビーに居続けるために踏みとどまったよ うに見える。米ネオコンは、軍需による米国の経済振興と、オイル市場を支配するために、ブッシュを押し立ててイラク戦争を始めたのだ。
2003年4月21日(月) 現在の国際情勢を理解するためには、米中関係の歴史と現状が要諦となる。光文社新書、田中宇(たなかさかい)著、「米中 論」、はお勧め。出来の悪い歴史小説と旅行記をミックスしたような内容がなかなか楽しめる。著者の大胆な憶測も交じるがそれゆえに理解し易い現代史書と なっている。世界一周はマゼランの約100年前、1423年頃明朝の鄭和であるが「冊封」政策で資料が消失したという話から、列強の植民地支配下での米の 中国政策、最後は中国と台湾の現状レポートで締めくくられている。

 田中宇の国際ニュース解説  http://www.tanakanews.com/

2002年10月11日(金)  対イラク武力行使について
 昨日の米下院に続き米上院も、イラク攻撃に関してブッシュ大統領に米軍が単独で武力行使できる権限を与えた。
 10月18日付け週刊朝日ワールドブリーフィング(船橋洋一)より。 「イラクは現在日産150万バレルの石油生産量だが、サダム・フセイン後5年以内 に日産700万バレルまで増産可能。そうするとサウジ、ロシア(日産770万バレル)につぐ世界第3位の石油大国となる。イラクが600万バレル程度の生 産体制にはいるとOPECが崩壊すると言われており、それは米国の望むところである。湾岸戦争のときの戦費は600億ドルだったが、今度は一千億ドルを下 回らないと予測されているが、イラクの石油をその一部に当てればよいとの声がある。石油に目がくらんでイラク戦争を押し進め、石油をあてにして戦費調達を 考え、石油頼みのイラク債権を思い描く。イラクの石油をめぐってだれもが捕らぬタヌキの皮算用を始めている。この戦争は危ない。」
 アメリカはイラクに傀儡政権を擁することによって石油の市場価格を意のままにし、多額の戦費を使っても石油で賠償させられると計算しているのだ。

 「アメリカ合衆国国家安全保障戦略」は、地球上の全土で絶対的な軍事的支配を確保し維持しようという国家目標を公にしたものである。核拡散を阻止する責 任を単独で担うために自らがグローバルな統治者となることを提言している。この軍事力の帝国主義的論理は、法律的にも道徳的にも認めることはできないし、 この上なく危険な幻想である。阻止するはずの核拡散と核戦争を引き起こす可能性があるのだから。この政策を拒否する私たちは、その欠点を実証するだけでは 不十分である。かって核軍縮は平和運動の目的であった。それが戦争の推進者によって取り込まれたのだ。オーウェルの警句である「戦争とは平和なり」があら たな現実味を帯びてきた。平和運動はこの新しい状況に対処していかなければならない。(ジョナサンシェルから大江健三郎への書簡−11日付け朝日新聞)
 アメリカは核だけでなく通常兵器もぬきんでた戦力を保有することを宣言したということだ。そしてその軍事力の経済的負担は支配される側が負うわけである。

END