雇用

useful or useless へ戻る
TAKUYAのトップページへ戻る



2002年3月5日(水) 地方の雇用は厳しくても自助自立から −5日付け日経社説より。
 一月の完全失業率は5.5%で過去最高を記録した。昨年の年平均を都道府県別に見ると沖縄の8.3%から島根の3.5%まで格差があり深刻さの 度合いも様々だ。総務省が試算した昨年の都道府県別年平均完全失業率によれば沖縄に次ぐ7.7%の大阪府を初めとする関西地方の落ち込みが目立つ。京都 府、兵庫県がともに6.6%で並ぶ。東北、北海道も厳しい。地方経済を下支えしてきた公共事業の縮小や製造業の空洞化、流通業の店舗閉鎖などの影響が地域 ごとに違うため雇用情勢に格差が生じている。大阪が厳しいのは重厚長大型産業の衰退、家電関連産業の海外への移転、テーマパークの不信などが重なっている からである。秋田などの東北地方はかって雇用を生んだ電子部品などの工場閉鎖が相次いだ。しかし地場産業が疲弊した地域は手詰まり状態である。情報やソフ ト、サービス関連の都市型の産業が少ない地方は政府の支援に依存しがちだが、財政難であてにはできない。困難でもここは自助自立の発想に立つしか活路は開 けないだろう。経済規模では大阪はオランダに近く、京都兵庫とあわせればインドやオーストラリアを上回る。海外との経済交流なども含めて地域ごとに独自の 戦略を競ってはどうか。政府は環境を整備する責任があり、構造改革特区などの規制改革にもっと真剣に取り組むべきだ。−以上日経による。

 日経案は「海外との経済交流」、条件が「構造改革特区などの規制緩和」。その具体的なアイデアと実現こそが火急に求められているものなのだ。中 小企業と大学の橋渡しや特許取得・ベンチャー支援、イベント企画など官がうまく後押しできるような事業がある。外食チェーンやコンビニが乱立する商店街は 個性が無くなって自ら衰退するなど、地域振興のために必要な規制もある。してみると地方行政組織の活性化こそが始めにありきだ。硬直した職員組合を解体、 再生し現業部門を民営化し、人事評価制度や給与制度を改め、民間との人事交流や外部監査制度、情報公開、地方への権限委譲、財源委譲が必要だ。こう書いて みると実現性が殆どないこともあらためてよくわかってしまうのだが。


2002年12月5日(木) 働かない公務員とPFI
 一体公務員のリストラは可能か。某政令都市下水道局の現業職員は、働かなくてもクビにならず給料も変わらず。勤務中の畑仕事も黙認されているそうだ。人 減らしや労働強化にはストでごり押し。管理不能の行政職の能力というか意欲も知れる。今のご時世なら世論を見方にしてまっとうな労使関係を作れそうなもの だが。ラスパイレス指数106.7%(01年4月)と日本一、下水普及率99.9%のO市の現業職の実体である。
 PFI(民営化)は財政の逼迫した自治体が無理に公共事業を続けるためのカネを民間に求めようというものであるが、働かない労働者のために存在している O市の労働組合を解体するためにも有効かも知れぬ。企業の不正には内部告発ばやりだが、役所の不正、不効率の内部告発を求む。情報公開、外部監査、他にも いろいろ手だてがある。

2002年10月2日(水)  企業が大学に望むものは−日経産業新聞(10月2日付け)より
 同紙による企業50社へのアンケート結果。
 企業が大学に求めるもの:一位、産学連携の重視。二位、先端研究に資金や研究者を集中。三位、海外の大学との共同研究を拡大。四位、入試よりも卒業を難しくする。五位、英語による講義などで教育の国際化を強化。
  大学の人事組織体制改革について:研究教育に対する外部からのチェックを強化する。二位、教員や事務職に対する成果主義の賃金制度を導入する。三位、学長など運営トップに外国人や企業経営者を積極的に起用する。
 国立大学の運営:一位、文部科学省から大幅に権限を委譲する国立大学法人にする。完全民営化は2社と少ない。
 私立大学の運営:一位、優れた私立大学に助成金を増やす一方、そうでない大学は思い切ってうち切る。
以上、日経産業新聞10月2日より。

 前日の同紙同テーマの連載記事をみても、企業はIT関連の生産技術の開発に取り組む研究者を高く評価している。上の結果を見ても少数の大学の、企業が求 める先端分野に(国の)資金を集中して欲しいと望み、企業活動に直結した研究を評価している。一方大学が自ら特許を取得したり経営の独立性を高めるような 動きは支持されていない。企業の本音が良く現れたアンケートだ。
 アメリカのように研究者自らがベンチャーを起業し、投資会社が投資家から資金を集めてベンチャー企業に投資をするという学が主導する方式よりも、これま で日本でそうであったように、大企業が大学と癒着してその成果を取り込もうという旧態依然とした発想である。企業にたかる学者と官に取り入る学者が大学を 駄目にしたのではないか。人事の停滞や硬直化、客観的な業績評価ができないこと、社会や他国、他大学などとの交流ができないという閉鎖性が未だに日本の大 学の問題だ。象牙の塔とは古い表現だが、大学は自由と独立性を確保することによって、独自カラーを発揮し大いにオープンな活動をしてもらいたい。ちなみに 大学は今の2割ぐらいの学生数で十分だろう。中学校は生活、高校は職業に直結した技術を訓練する場にする。
2002年9月6日(金) 来春卒業予定高校生求人倍率が0.5倍 −日経9月6日(金)朝刊より
 厚生労働省の調査に依れば、来春卒業予定で就職を希望する高校生23万1千人(昨年比6.8%減)に対して求人数は11万5千人(24%減)で求人倍率 は0.5倍(昨年同時期より0.11ポイント減)で過去最低となった。南九州が0.17倍、北海道と東北が0.2倍。京浜が1.43倍。同省が挙げる原 因。@高校生の受け皿となっている製造業の工場が中国など海外へ移転している。A高卒者の離職率が高く企業から敬遠されている。B即戦力を求め、企業が大 卒や中途の採用を優先している。同省の対策。@求人倍率が低い自治体では公共職業安定所(ハローワーク)の求人開拓推進員(全国で1,500人)のうちの 半分を新卒者千人にする。A数ヶ月の試用期間を経て正社員への道を開くなどの期限付き求人も新たに開拓する。
 高校側。大阪府立高校教員「生徒側に対しては資格を取得させたり礼儀を教え込むなど地道な取り組みを続ける以外ない」。新設都立高校進路担当「フリー ター施行の生徒は表面的には他にやりたいことがある、などと言うが、実際は就職活動のあまりの厳しさに、最初からあきらめてしまっていることが多いよう だ。」
 今春の実績。今春卒業した高校生の6月末現在の就職率は94.8%。1974年の調査開始以来最低を記録した。求人数は昨年比11.1%減の24万人。 特に製造業の落ち込みが激しく昨年の4分の3の8万人。18万4千人の就職希望者の内17万4千人が実際に就職した。昨年7月末の求職者数は24万8千人 だったが今年6月末18万4千人に減少。6万4千人が、大学進学や激しい求職状況などを理由に就職活動を中止している。求人数を求職者数で割った今年六月 の最終的な求人倍率は1.32倍。採用選考開始後求職者が減ることも倍率を上げる要因になっている。製造業以外で求人が落ち込んだのは前年比9.2%の建 設業や、同2.7%の運輸・通信業など。卸売り小売業飲食店はプラス1.2%の微増だった。6月までに就職が決まらないと一般の求職者と同じ「未就業者」 の扱いになる。新卒扱いされないため今後の就職活動は一層厳しくなる。−以上日経9月6日朝刊より。
 
 かって大企業は優秀な高校生を企業内学校に入学させカネとヒマをかけてじっくり育てた。一方ラインの単純作業の従事者ににも大量の新卒を採用し、ZD運 動やTQC活動などを通じて世界一の生産技術と言われるほどの質の高い労働者に鍛え上げた。製造業でも中小企業や建設業などでは多くの仕事は熟練を要した ので、新卒者は長年次かけて先輩や親方に育てられた。10年以上の下積みに耐え技術だけでなく精神力も鍛え上げられた者が残り、育てられた企業に大いに恩 義を感じて、次代の企業や店を支えた。
 さて、現在では大企業は年功序列、終身雇用制を転換し、社員に忠誠と帰属意識を求めるのではなく業務に応じた能力を有する社員を都度雇用し、その能力に 見合う賃金を支払うという雇用関係に変化しつつある。ラインの単純作業は国内ではロボットに取って代わられ、多くは中国に生産拠点を移した。中小企業は淘 汰され、特殊な技術や特許を保有する少数の企業以外はひたすらコストの削減を要請され、大半は旧式の製造機械を使用し年輩者が低賃金で雇用されている。も はや未来はないから若年労働者を雇用する意欲がない。徒弟制度の中で受け継がれてきたモノ作りの伝統は、労働者の誇りと共に失われたのだ。
 今、企業は短期で流動的な労働力のほうがリスクが少ないので、新卒の正規社員を採りたがらない。雇用される側の立場で言うと、明確に自らの能力を評価 し、それを鍛え、それを必要とする企業に売り込めることがこれからの労働者の資質だ。今の教育制度は社会のニーズに全く応えられていない。
2002年8月23日(金)「常用雇用者比率」 −三井住友銀行発行、日本総合研究所編集マンスリーレビュー’02.8月号より
 雇用者に占める常用雇用者の比率をみると、男性20才から24才の年齢層では1975年に94.7%だったが、2000年には80.4%に下落してい る。すなわち仮に雇用されても臨時的な雇用形態が増えている。世代毎に見てもどの世代も年齢を重ねるに従って常用雇用者比率が上昇して行くが、若い世代ほ ど常用雇用者比率が低い。就業形態が多様化していることに加え、若い世代における職務スキルの蓄積不足がその後の常用雇用者としての就業機会を狭めると考 えられる。−三井住友銀行発行、日本総合研究所編集マンスリーレビュー8月号より

 能力と意欲の低い層が失業と就業を繰り返す、いわば流動層になって雇用調整の受け皿機能を果たしている。若年層はサービス産業を主体として比較的就業機 会が多いので一層流動化の度合いが大きい。現在の日本の雇用状況は、年功序列から職能別給料への大きな流れが始まる予兆ではないか。この10年は日本の経 営者が自信喪失した10年であったが、最近ではGE的アメリカ企業もまた然り。ワールドコムやエンロンの破綻は、企業の公正さと情報公開の必要性を再認識 させた。この二点が日本の企業に求められている変革だ。
END