マクロ経済

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2003年1月23日(木)  名目GDP −日経23日付け朝刊より
 2001年名目GDP順位。単位億$かっこ内は前年比増減[%]内閣府公表@米100,822億ドル(2.6%)A日本41,757(-12.3%) B独18,549(-0.8)C英14,226(-1.1%)D仏13,110(0.4%)E中国11,590(7.3%)F伊10,896(1.5%) G加7,054(-1.6%)Hメキシコ6,177(6.3%)Iスペイン5,836(3.9%)。名目GDPの国際比較は為替レートの変動の影響が大き い。
 購買力平価での名目GDP。2001年、単位億$世銀調べ@米99,069億ドルA中国55,057B日本34,445(前年比1.5%UP)C印 25,459D独21,136E仏14,834F英14,629G伊14,139Hブラジル13,389I露12,959。国内の物価水準が低い中国は、 国民の購買力が大きくなる。−以上日経朝刊より

 GDPを見ると、あらためて日本の経済規模と国際社会におけるあらゆる面でのリーダーシップの無さのギャップを考えさせられる。もっとも日本の政治や個 人の幼稚さをみると、子供がカネだけ持っていてるようなものか。子供が力を持つと怖いから、持たないと言うところだけが賢明。

2002年12月9日(月) 「第三の道は可能か」 佐伯啓思(京都大学教授・社会経済学)ダイヤモンド社「経」12月号より
 レーガノミックスやサッチャーリズムに代表される80年代は「新自由主義」の時代と言われる。戦後の経済成長を支えてきたケインズ主義や福祉国家が行き 詰まったという反省が出てきたからである。この意識は製造業の生産性の低下に悩むアメリカと国有産業の非効率に悩むイギリスにおいてことのほか強烈であっ た。
 ところで、新自由主義は産業の近代化、効率化を達成するために市場競争を唱える「市場主義」と、社会秩序を重んじる「保守主義」という二つの立場を結び つけたものだった。この二つは小さな政府と自助自立の精神を強調する点で一致するが、保守主義が社会秩序と道徳の基礎としての地域コミュニティや教会、伝 統的家族などを重んじた点では対立する。保守主義は経済成長が生み出す急速な近代化よりも伝統的な価値観を守った社会秩序を重視する面があり、これに対し て市場競争はむしろ家族や伝統的価値を破壊しかねない。
 だが、市場主義、保守主義という柱は、「小さな政府」と「自立した個人」というプログラムにおいて一致した。両者の一致を可能としたものは「ケインズ的 財政主義」と「ベヴァリッジ的福祉主義」はもはや成り立たないと言う認識だった。政府の肥大化は資源配分の非効率を招いて、結果として国力の低下をもたら し、また人々の政府への依存は自立した個人の努力を阻害するというのである。
 だが、共通の「敵」が退場すると新自由主義にある矛盾は顕在化せざるを得ない。市場主義はグローバル市場での自由競争やビジネスチャンスの拡大こそが決 定的だと見なすのに対して保守主義はあくまで国家の競争力、経済の戦略的な建て直しに関心の中心があり、社会の安定という点から雇用の確保、物価水準の安 定こそが重要な課題となる。高い利潤と報酬を求めて次々と職を変わる「自立した個人」は保守主義者の好みではなかろう。保守主義者にとって「自立した個 人」とは、勤勉の精神と強い責任感を持って家族や企業のために働き、時には地域でボランティアをすすんで行うものなのである。
 ところで、近年、古典的福祉国家でもなく、また新自由主義でもない「第三の道」が主張されている。ギデンスの著書「第三の道−社会民主主義のリニューア ル」があるが、そこには戦後のケインズ主義的財政拡張と福祉主義による経済成長路線は行きづまったという認識がまずある。保守陣営は新自由主義路線を提出 したが、社民主義の左派は代替政策を提示できていないという危機感があった。ギデンスはグローバリズムを認めるという。彼は市場のグローバリズムだけでな く環境などNPOのグローバルな活動も想定する。犯罪を防ぎ社会生活の安定のためにはコミュニティ再建が不可欠とも言う。企業誘致や職業訓練などは「公的 活動」が民間資本やNPOと強調して行うべきものである。福祉については「所得の再分配」ではなく、平等は「可能性の再分配」によって達成されるべきで、 職業訓練や労働移動によって多くの機会を提供することによる、という。
 これらの主張はもっともであり特に問題とすべきことはない。しかし新自由主義に対する十分な対抗軸を作っているようには思えない。普通の人間にとってグ ローバルな自由の拡大よりもローカルな生活の安定の方が大事であり、自由の行使や利益の追求も安定して信頼になる家族や国家、コミュニテイに支えられてい なければならない。「アクティブな市民社会の形成」「ポジティブ・ウェルフェアの確率」「社会の近代化」などという「第三の道」の標語でこの問題に答える ことができるのであろうか。 −以上 佐伯啓思による。

 キーワードを外さずに要約するのは結構難しいが、下の文章よりもまとまった。「社会民主主義の逆襲」とは知らなかったが今後多少は期待してみよう。

END