行政・地方自治

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2003年9月3日(火) 長野県知事田中氏に聞く−日経9月3日(火)朝刊より
 今回の選挙結果について−「焦点は「公共事業の決め方」だった。ダムの計画中止に県民の多くが賛同したと言うことは、中央官僚、地元政治家、大手建設会 社中心の土建業界が密室で取り決めている市民不在の税金の使い方にノーの意思表示をしたということ」 「中央依存でない自律的な地域経済確立の意欲の現れ でもある。現状はダムや道路の建設は全てが中央官庁主導。、私は公共事業のやり方を根底から組建て直し、道路建設や治山などに県独自の基準を設ける」「新 潟県境の長野県栄村は村道建設に独自基準を設け国平均の十分の一程度の費用で村道を建設している」「行政とは究極のサービス業だ。民間の人材を登用し奉仕 者としての県職員の意識改革を一層進める」「例えば、50余ある県の外郭団体は半分に削減する。組織存続のために事業を営んでいる団体が多い。上下水道事 業なども民営化する」「民間活力を使って秒速10ギガの高速光ファイバー網を整備。新技術や農業振興のため経済特区を活用する。県産材利用で顧客本位の視 点を持つ民間企業との「協働」をすすめてゆく」−以上日経9月3日朝刊より。

 田中康夫に生理的な嫌悪感があるのは私だけでは無かろう。しかし知事になるずいぶん以前から浅田彰との対談を時折目にして「ペログリ」ばかりではないこ とは知っていた。「補助金を取ってくる」という首長(役人は「くびちょう」と読みます)の仕事を真剣にやればやるほど借金地獄という今日本のほぼ全ての地 方自治が落ち込んでいる泥沼は、政治の無能と役人の無責任体質の結果だ。地方が言う事業費の大半は東京のゼネコンが取って行くというのはその通りだが、補 助金の大半は都会の会社やサラリーマンが払った税金だ。地方自治の依存体質を脱却し、自分達の所の事業は自分たちでよく考えて効率よくやりたい、というの は至極まともな言い分だ。しかし問題は地域格差だ。単純にいうと、補助金や地方交付税は役人の中央集権機能の維持と地方代議士の集票という目的のために都 会から地方へ流れている。これらを断ち切ると地方は全くカネが無くなる。地方の多くの建設業者の仕事が無くなり、農閑期の雇用が無くなるという痛みを伴う が、それが地方の構造改革だ。少なくとも田中康夫は私利私欲のために汗をかいているのではないという点で再選されたと思うが、県民の痛みはこれから始ま る。
2003年9月12日(木)  自治体外部監査−9月10日(火)日経朝刊より
 弁護士、公認会計士らが都道府県などの行政をチェックする「包括外部監査」について、市民団体「全国市民オンブズマン連絡会議」は9火、全国の95自治 体の監査を独自に査定した。評価は相対評価でK、AからEまでの5段階。A評価は宮城県、長野県、島根県、長崎県、鹿児島市、八王子市。Eは宮崎県、いわ き市、金沢市、姫路市、倉敷市。いわきは2年連続。−以上9月10日(火)日経朝刊より

 全国の自治体では数年来の無理な公共事業の支出と税収不足のため、財源不足に陥っている。そこで多くの自治体では事業や組織の縮小を模索しているが、住 民サービスの低下は議員や首長の選挙にひびき、人員削減や移動は組合の抵抗を招く。したがって外部の監査法人などに行政監査を委託して事業や組織の改革を 進めようとしている。もっとも、ぬるい業務の実体があからさまになるのを恐れてか、行政監査という名目の内部監査程度にとどまっているようだが、いずれは 外部監査を公開ということになるだろう。大手の監査法人は既にこの膨大なマーケットをにらんで動いている。会計監査の大手は、新日本、中央青山、トーマ ツ、朝日。トップの新日本の前年度業務収入は481億円(1087社)で、大手4社では1,680億円。国内の企業会計の監査ではほぼこの4社の寡占状態 である。自治体の監査業務はブレーク寸前の巨大マーケットだと1年近く前から言い続けているのだが、既存の監査法人にみすみす渡してしまって良いのか。
2002年9月13日(金)  関西再生−9月10日(火)日経朝刊より
 近畿二府四県の域内総生産が日本のGDPに占める割合は、2030年には2001年の15.1%から10.8%に下がる。ほぼ現在の九州沖縄8県の水 準。関東大震災直後の1924年、大阪市とその周辺だけでも全国の23%を占めたが戦後は関西のウェートは下落。関西の人口のシェアはこの30年間横這い だが、生産年齢人口の全国シェアは18.0%から17.3%に低下した。2030年では16.7%と予測されている。−以上9月10日(火) 日経朝刊よ り
 
 最近の工場誘致の話では三重県のシャープ誘致の話が話題になった。しかし概ね役人のやったことはバブル前の計画を忠実に実行し地代の高い埋め立て地を 作った程度である。大阪のみならず工場や人の誘致は難しいのだ。記事中にもあったが大阪では単身赴任者が増大している。嫁さんが大阪に住みたくない理由が わからぬはずがあるまい。
 公園や緑地が広く自然が豊富なこと。土地や住宅が安いこと。水や空気がおいしくて公害が少ないこと。海産物や野菜などが新鮮でおいしいこと。安くて品物 が豊富な店舗が多く買い物が便利なこと。道路や交通網が整備されていること。文化体育施設が充実していること。教育施設が充実していること。医療施設が充 実していること。災害が少ないこと。犯罪が少なく安全なこと。生活習慣や言語に親しみ易いこと。
 人が住みたいと思うような魅力的な町を作ることが行政の仕事だ。敗戦後から知恵を絞って、規制ではなく調和ある町づくりを進めることを怠ってきたからこ うなった。もはや無理に大阪を再生する必要はあるまい。そして大阪が目指すのは東京型の洗練された都市モデルではなく、人間くさい活力に満ち雑多な文化の 交歓や自由な商業活動や学問、芸術を守り育てることではないか。そのためにはさほどカネは必要ないと思う。ビジョンを作れ。
2002年9月24日(火)  第三回「行政サービス調査」の結果− 9月24日(火)日経朝刊より
 日経新聞社と日経産業消費研究所は全国675市と東京23区を対象に「公共料金や福祉・教育など行政サービスの水準を示す「サービス度」の総合評価を実 施した。「サービス度」は公共料金、高齢化対策、少子化対策、教育、住宅・インフラの5項目による評価。「改革度」は公共工事公開などの透明度、行政評価 の導入などの効率化・活性化度、パブリックコメントの制度保証などの市民参加度、図書館の閉館時間などの利便度の4項目による評価。
 「サービス度」では公共料金は埼玉の新座市、上福岡市、鶴ヶ島市など埼玉3市がトップ。高齢化対策では清瀬市、青梅市の次は松本市、駒ヶ根市、塩尻市。 総合評価では1位武蔵野市、以下三鷹市、羽村市、刈谷市、千代田区、中央区、福生市、稲城市など東京勢が上位を占める。「サービス度」と財政の関係は、 「高サービス財政悪化型」は横浜、京都など23市と東京で、リストラ要。「高サービス財政良好型」は富山、宮崎など11市。低サービス財政良好型」は福 島、津など6市。「低サービス財政悪化型」は和歌山など6市。
 「改革度」では透明度では世田谷区、三鷹市、逗子市。最下位は加茂市。効率化・活性化度では宮古市、太田市、東金市。下位は村山市、中間市など。市民参 加度では横須賀市、大和市、岡山市。利便度では上越市、宮崎市。総合評価では一位三鷹市、以下岡山市、板橋区、大和市、武蔵野市、杉並区、宮古市、横須賀 市と続き、東京神奈川が目に付くがサービス度ほど東京に偏っていない。−以上9月23日(火)日経朝刊より

 行政サービスの内容を比較することは意義深い。本当に住民にとって必要な所に財政支出されているかどうかということをひとつづつあきらかにして行くこと によってお役人の勤務査定をしたり議員や首長を選択すべきなのだ。元気なリタイアメント達のNPOの活性化によって、これからの地方自治は大いに良くなる というのはちょっと希望的観測すぎるか。
2002年9月26日(木)  市町村合併について  −9月21日付日経朝刊より
 明治、昭和に次ぐ史上3度目の大合併。7月1日時点の法定または任意の合併協議会に参加している市町村は940。その前段階の研究会などに参加している 市町村を含めると2495。合併特例法の期限2005年3月に間に合わせるには今年度中に合併を決断する必要がある。問題は地方財政の将来の姿が示されて いない点。政府は合併のメリットとして行政の効率化やサービスの高度化などを訴えているが大合併の理念と言えるほどのものではない。小泉内閣は来年6月に 国庫補助負担金の廃止・縮減、地方交付税を見直し結論を出す。市町村はその前に合併決断の期限を迎えるので順序が逆。財政の先行きが不透明なので判断に迷 う。合併する市町村が実施する道路などの基盤整備事業には各省が優先的に補助金を付ける。また70%を地方交付税で穴埋めしてもらえる合併特例債の発行も 認められる。財政再建のための合併推進策のはずが、当面は逆に財政膨張要因になっている。
 さらに問題は政府の推進策は住民自治の充実という視点を欠いていることだ。自治体は住民の合意形成や意思決定に基づいて行政サービスを供給している。政 府が合併のメリットとして強調するのは、専ら行政のサービス供給の側面だ。合意形成の側面は忘れられている。人口10万から20万の規模になれば一人当た りの行政経費を減らせることは統計からもあきらかだし専門職をそろえることも可能になる。机上の計算では合併が行財政の効率化に役立つことは確かだ。しか し実際には計算通りには行かない。地域作りを担う主体の力量、つまり住民力は計算できない。旧市町村などで小さな自治を育てていかないと、市町村合併の進 行は自治の弱体化を招きかねない。宝塚市や高知市は小学校区単位で住民参加による町づくり計画を策定している。群馬県は小学区単位の小さな自治を育てる研 究をしている。川崎市では区の権限を強め将来は自治的な区にしていくことを検討している。6月にはこの分野を専門にするコミュニティ政策学会も発足した。 住民自治には小さい方がいい。−以上9月21日 日経朝刊より

 市町村合併について。公共事業に関わる者として合併は商機である。昨年からそう言っているのに当時具体的な動きが全国で20件程度と少なく、反応が鈍 かった。今も鈍いのでもうどうしようもないのだが、大多数の市町村が合併するのは間違いない。それで西東京市とか東大阪市のようなつまらん名前の市がぼこ ぼこできるのだろうが。
 日経記事は署名入りだが、前半は行政機構の効率性追求と合併推進策との矛盾をもっと掘り下げてもらいたい。後半の行政機構の広域化と自治や地域コミュニ ティの活性化とは次元の異なる問題である。合併により地域コミュニティの育成が困難になるのであれば大都市近郊の人口数十万の市はどうなるのだ。現在の行 政区画が小さいから地域コミュニティが保たれているとは言えない。行政区画と地域の生活・文化は異なるのだ。ともかく東広島市とかいうのはやめて、例えば 郡名を残したらどうか。地名は歴史と文化のシンボルであるというのに。

END