2019年03月


 2019年03月23日 アメリカ映画 「大統領の執事の涙」  原題 ”LEE DANIELS' THE BUTLER”

 2013年アメリカにて製作、監督リーダニエルズ。
 アメリカ南部綿花畑で使役されていた黒人少年が脱走して給仕になり、その後ホワイトハウスの執事になってアイゼンハワーからロナルドレーガンまでの7人の大統領に仕えた実話をもとに作られた映画。

 黒人が白人の使用者の所有物で生死さえ白人の掌中にあった戦後すぐの時代から、キング牧師の暗殺、KKK、ブラックパンサーの実写を交えた黒人解放までを時代背景としている。執事として白人社会のなかで空気のように自分を殺して白人達に仕える父と、公民権運動(The civil right movement)に傾倒してゆく息子との対立と家族の崩壊、そして最初の黒人大統領であるオバマが当選して、退職した父が初めてデモに参加して、息子と和解するまでの日々を描いた作品。
 キング牧師が執事の息子セシルにいう言葉が印象的だ。
 「白人の執事や給仕などをしている黒人は、静かな戦いをしているのだ、彼らは勤勉に働くことで紋切り型の黒人像を変えた。高いモラルと威厳ある振る舞いによって人種間の壁を崩していった。執事やメイドは従属的と言われるが、彼らは戦士なのだ。」
 
 この映画は人種差別を過ぎ去った出来事として懐古しているのではない。今だから描ける部分もあるが、今なお在る差別に警鐘を鳴らすものだ。主演のフォレスト ウィテカーと妻のオブラ ウィンフリーの演技が良い。無表情かつ寡黙に白人に仕える執事が、家庭では父として生の感情をむき出す。黒人差別の歴史がこの家族の目をとおして描かれることによって、生々しい実感として観るものにつたわる。

https://eiga.com/movie/79095/

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