2018年06月


 2018年06月12日 米朝会談

 朝から米朝会談の話題で持ちきりである。現在米朝会談がシンガポールで実施されている。

 米の目的は北朝鮮に核と長距離ミサイルを放棄させること。北朝鮮の目的は政権の体制保障と経済支援。中国の目的はあわよくば韓国から米軍の撤退。

 トランプ大統領は政治家としての理想がなく下品な男だが、ネゴシエーターとしては一流である。習近平とフロリダで会談時にリビアを予告なしで空爆していわば恫喝した。このときは金正恩も肝を冷やしたはずだ。こういうやり方はリスクが大きいとの非難もあったが、交渉事は脅しやはったりが必要だ。今日の会談も北朝鮮が米韓軍事演習を批判して会談の中止を匂わせたらトランプがすぐに中止と言い切った。北朝鮮の強気の発言はなくなり、結果として予定通りに会談が行われた。

 我が安倍政権は、あわよくば拉致問題が進展すれば多少なりとも支持率が回復するとの目論見があるのだがトランプ頼みである。米は北朝鮮への経済支援は日韓に担わせたいので、北朝鮮に日本の支援を取り付ける条件として拉致問題を北朝鮮に提起するだろうが、その先の日朝の交渉では無体な支援要求があるだろう。泥棒が盗んだ品物を返すのに対価を要求するようなものだ。

 こういう相手と対等に付き合うべきではないが、トランプ大統領がシンガポールのセレモニーが北朝鮮のプロパガンダに利用されても敢えて対等の形式で今会談しているのはすでに譲歩であり、北朝鮮の思惑どおりでもあるのだが、戦略核を放棄させることが同盟国にとって最優先課題であるからだ。

 北朝鮮は非核化、長距離弾道ミサイルの放棄がカードであり、日中韓国人の北朝鮮による拉致問題、特に韓国人は五百人といわれ拉致被害者ははるかに多いが、これらも交渉カードである。過去日朝は拉致問題を交渉してきたが、朝鮮は拉致カードを今なお放棄していない。平和条約締結にも日本に戦時賠償を条件としているのだが、拉致問題も含めて交渉では翻弄されるだろう。
 
 話は古くなるが、日清戦争以前は朝鮮半島は清国の属国であった。その後の日露戦争でもし日本が負けていたら、朝鮮半島はロシアの領土になっていた。満州にはロシアが進出していたが、日露戦争の結果日本が南満州を実質的に獲得した。このことが中国、ロシアの革命のきっかけとなり、またアジアを支配しようとする列強が日本を排除しようとして第二次大戦が勃興した。大戦の結果朝鮮半島に進出したロシアとこれを阻止しようとしたアメリカによって、朝鮮半島が南北に分断された。その後の朝鮮戦争は北朝鮮が大韓民国に進出しようとして、それぞれ米中ロの支援を得て始まり、現在休戦状態にある。
  
 つまり朝鮮半島は大国の思惑のために古くから翻弄され、同一民族が分断された。そのことは直接には米中露に責任がある。二次大戦以前のような植民地支配は現代はなくなったが、経済支配、軍事支配という侵略に代わる大国支配の構造の中で、核保有は小国のアイデンティティと権益を確保する動きなのだ。危ういのは核と戦略ミサイルは欲しい国がたくさんあるだろうことだ。

 金正恩が核というもっとも有力なカードをを手放すわけがないではないか。


END