2017年07月


  2017年07月09日  EPA大枠合意について

 日本と欧州連合(EU)は6日、ブリュッセルで首脳会談を開き、経済連携協定(EPA)について大枠合意した。詳細が発表されていないのだが、EUのチーズやワイン、豚肉と、日本の車の関税が引き下げられるとのこと。

 チーズは国内消費のほとんどはEUで生産されていないプロセスチーズであり、EUのチーズはカマンベールやブリー、パルミジャーノなどなど、日本人の食習慣にはなじみが少ない種類だ。これが3割ほども安く販売されると、EUのチーズがあらたな需要を喚起してもプロセスチーズの需要を侵食するとは考えにくい。チーズは安ければ売れるというものではないからだ。

 格安ワインはすでにチリやオーストラリアから格安で輸入されており、フランスワインが一本100円安くなっても国産ワインに影響があるとは考えにくい。豚肉もしかり。国産豚肉が高価でも売れている。ファミレスなどのチェーン外食産業では格安輸入肉を加工して味付けしているので多少は安くなるのかもしれぬが、国産肉とは無関係だ。


 しかるにこれらは国内業者保護を名目にした見せかけの交渉カードにすぎないのだ。政権は不祥事続きだが、国内向けには貿易交渉できちんと仕事をしていますよ、というアピールでもある。北朝鮮非難と同じく中国ロシアに制裁を申し入れた、という類である。中ロは自国のメリットがなければ他国の申し入れなど聞くわけがない。


  交渉下手な日本という実態は相変わらずなのだ。政権はこれまでもアメリカの機嫌をとって国際関係をかろうじて維持しているのだが、そのために左前になった企業を米に安売りするどころか、保険事業のようにほぼアメリカに丸ごと売り渡したような事業もある。

 今回政権が成果とする自動車の関税交渉は、すでに関税や賃金が最も有利な海外拠点で生産するグローバル展開が進んでおり、日本からの輸出の関税を撤廃したところであまり意味がない。金融や保険、建設、医療、交通、さらに教育や公共サービスのような分野の海外展開が課題であるのに、これら事業で国内の古い仕組みを温存している日本は、サービス事業を海外展開しようという意欲に乏しい。政権の役割はこういう業界の体質を変革し、海外展開を外交面でバックアップしてゆくことなのだが、それができないのは既得権益と結びついた政治や官僚機構の問題なのだ。

END