2016年9月


2016年9月2日 台風被害について
 8月末の台風は北日本に大きな被害をもたらした。東北の被害の多くは山間の蛇行する河川の増水により狭い段丘にある家屋や河川沿いの道路や橋梁で発生した。北海道では比較的大きな河川の氾濫により低地で浸水被害が発生している。北海道や東北地方では、これまで西日本に比べて風水害の被害が比較的少なかったことから、堤防などの備えが脆弱であるとも言われている。今回の被害の特徴は、河川の増水によって住居や田畑が冠水し、道路の路盤の崩壊や橋桁が流出するケースが多く発生したことだ。山間では道路の被害によって交通が遮断され、被害発生から3日目の現在も孤立集落で千人以上の支援が必要とされている。

 日本の河川整備の目標は、100年に一度の洪水に対応するものとされているが、当面の整備目標は60分50mm/hrの降雨を想定しているとのことだ。しかしこれを超える降雨は毎年のように発生している。河川ごとの整備状況はわかりやすく公表されているとは言えない。河川の流域の個々の場所に関する浸水可能性は、住民や自治体はほとんど想定することができない。河川の洪水対策は堤防のかさ上げなどの増強、洪水調節をおこなうダムの建設、遊水池や滞水池の建設、雨水の地下浸透など、多面的な整備がなされているが、整備の進捗状況を公開すべきである。

 水害とともに多いのが土砂崩れである。2011年の台風襲来時には紀伊半島で大規模な深層崩壊が発生し60人死亡という甚大な被害がでた。その後奈良県は深層崩壊のマップを作成したように深層崩壊の発生場所はある程度予想可能であり、発生のタイミングも降雨量や計測によって予測可能である。砂防の整備の目標は60mm/hrの降雨であるが、土砂崩れを防止するためには地質調査に始まり砂防ダムや大規模な地盤の強化が必要であり、整備状況は砂防ダムやのり面の構造物が見えるため比較的わかりやすいが、危険箇所はあまりにも多く鉄道や主要道路に関わるもの以外はほとんどが放置されている。砂防事業は国や都道府県が実施しているが、整備の箇所付けは非公開であり、安全宣言もなされておらず、住民は近隣の工事が始まるとそれとしれるのみである。砂防ダムは土砂が貯まると機能を果たせず、建設後恒久的に維持管理が必要である。砂防ダムの状況調査は実施されているようであり、土砂災害への効果を公表すべきである。

 日本の大規模な自然災害には、主に台風による風水害によるもののほか、地震、津波、噴火がある。これら被害の程度と発生確率は場所ごとにおおむね想定が可能と考えられる。土地や建物は私有財産であるからその価値に影響を及ぼすような災害リスクを明らかにすべきでない、との意見もあるが、リスク対策は個人や地域、自治体、国がそれぞれ分担すべきものであるので、調査や評価は国が尺度を作り自治体がしっかり行いこれをわかりやすく公開すべきである。それにより対策に要するコストをそれぞれ判断することができる。

 山間のすべての小さな集落ごとに数千万円の砂防ダムを建設したり、河川の堤防を増強することはできない。本来公平であるべき行政サービスが実は大きな不公平を生じており、このことは行政がリスクを明示し難い理由のひとつでもある。しかしリスクを明示することは行政が土地の用途区分に応じた河川などの整備の優先順位を効率的に設定して投資することができ、コンパクトシティなどの施策に結びつく。用途区分に応じて行政サービスのレベルに段階を設けることも可能となる。

 対象とする災害のレベルについて。100年に一度のリスクなら財産を守る。1000年に一度のリスクなら命を守る。1000年に一度のリスクなら、土木設備の償却期間が100年とすると資産価値の1/10程度なら期間内の保険料として支払うことが可能である。1000年に一度の噴火や大津波には命以外のモノを守ることはあきらめて、モノは保険で守れば良い。保険料は住居場所のリスクに応じた負担となり、土地の資産価値はリスクに反比例したものになるだろう。

 この話はなかなか収集のつきにくい話になった。

2016年9月4日 北岳遭難について

(報道記事) 31日午前11時50分ごろ、山梨県南アルプス市の北岳(3193メートル)で、29日から遭難していた兵庫県の女性(46)と大阪府の男性(45)とみられる2人を山梨県警などが発見し、収容したが、同日夜に死亡が確認された。死因は低体温症の可能性が高い。29、30日に県防災ヘリが計4回出動したが、台風10号による強風で現場に近づけず、ヘリによる救助を中断していた。
 南アルプス署によると、遭難していた2人は同じ山岳会に所属。26日に長野県側から入山する届け出をしており、29日午前6時20分ごろ、女性から「下山道が分からなくなった」と通報があった。同署と2人は30日夕まで携帯メールで連絡が取れており、この時点までは無事だったとみられる。発見されたのは標高約2900メートル付近で「北岳バットレス」と呼ばれる大岩壁。

 29日早朝の携帯電話による連絡で、「山頂を目指して岩場を登っていて迷い、下山道も不明」とのこと。バットレスを登攀していた。早朝の救助要請ということは既に一夜を山中で明かしたようである。
 高山の天候は1000km離れていても台風の影響下にある。29日は台風10号が最も接近しており山頂付近はかなりの荒天であったはず。また最低気温は当日甲府で16度とのことなので、山頂付近では5度以下だったと考えられる。しかしどうやらすべて承知だった様子なので、冬期のトレーニングのつもりだったかもしれrない。雨は雪より怖いということだ。


END