2015年11月
2015年11月17日 テロの抑止について
ISによるパリのテロでは、カラシニコフ銃と自爆によって130人が亡くなった。テロリスト十数人がパリ市内の人が集まる劇場やパブ6カ所で同時に引き起こしたものだ。
テロをなくすために、テロリストがなぜこのような方法でテロを実行したのか、今後どのようなテロが発生するのか、について考えてみる。
(テロの目的)
テロによって紛争に勝利することはできない。テロによって国家が崩壊することはないし、テロによって戦意を喪失させたり攻撃力を弱めたりすることはできない。
ISやアルカイダの先進大国へのテロは、組織のメンバーの戦意高揚のために、「報復」という名目で実行されている。このため必ず実行組織から、自らが実行したとの声明が発表される。
(テロの対象)
パリのテロの方法については、人的、物質的、精神的なダメージを最大化するというよりも、平凡な日常生活を破壊することによって普通の市民に恐怖をもたらした。原子力発電所、化学プラントなどは部分的に破壊されるだけでも影響が長期で甚大であるが、警備が強固で大がかりな武器が必要となり、かつ民間企業を標的にする名分がない。議会や政治家を標的にすることはもっとも難度が高い。わざわざ失敗する可能性があるテロを計画する必要はないのだ。交通は一般市民が直接標的になるため、警備が厳しい航空機を除けば容易に標的となる。従って、今回のパリの標的は典型的なターゲットであり、今後バスや地下鉄などの交通機関も標的とされるだろう。
(テロの方法)
銃や爆弾ではテロリスト一人あたり十数人を殺戮できるが3桁を殺戮することは困難 である。高速道のトンネル火災や地下鉄火災、ガソリンやガスを使用した大惨事を発生させるのは比較的容易と考えられるが、そうしないのはなぜか。
テロの実行者の多くは逃走していない。テロリストの組織は実行者が死亡することによりヒーローの創出と次の報復の種を作っているのだ。つまりテロは実行者が惨めな逃走をするよりも、現場で壮絶に死亡することが重要なのである。従って今後もテロの多くは、実行者個人が明確になるように、かつ生身の自分を異教徒の前に晒した上でいっそう容赦なく残虐な方法で、そしてテロリスト自らが命を敢えて失うような計画として実行されるだろう。
パリのテロは十分にインパクトがあった。すぐに新たなテロを実行すると今回の成功の価値が薄れる。従って今後しばらくパリは安全である。テロ組織が言うように、次のターゲットはアメリカであろうが、アルカイダのWTCに匹敵するインパクトを狙って計画されると考えられ、アメリカの象徴的な建造物や場所が目標になるのではないか。
(テロは悪か)
ISへの空爆が正しくて、テロが悪だというわけではない。テロが卑怯で空爆が卑怯でないというつもりもない。テロも空爆も非戦闘員を巻き添えにし、死者は空爆のほうがはるかに多い。もしISが無人爆撃機や核兵器を使えるとしたら、先進国は容易に手出しができなかっただろう。テロは対等に交戦できる程度の武力を有しない側の唯一の抵抗方法だ。先進国は相手が弱いから叩いている。テロの標的になることは想定内であったはずだ。
(テロの抑止)
テロは組織の結束と戦意高揚の手段であり、組織が存在することのアピールであるから、組織が弱体化するほど増大する可能性がある。従って武力による解決はできない。
テロの大義名分を失わせるためには、テロを犯罪と見なしテロリストを軽蔑し、組織のアピールを妨害する。短期的には人が集まる場所では入場者に対する空港並の監視の強化。長期的には発展途上国に最低限の医療や教育を保証し、人としてのモラルを醸成してゆくことしかない。
国際紛争においては勝者が善となることは言うまでもないが、敢えて今できることをいうなら、国際社会がテロ組織の聖職者やリーダー個人を決して許さず、将来にわたって懲罰を科すようなルールを明確にすることが必要である。またテロ組織を支援する国家や組織への懲罰のルール化が望まれる。
しかしテロがなくなることはないだろう。民主主義以前には圧政に抵抗するいわばテロリズムというものがあった。正しいテロと悪いテロがあるわけがない。したがって戦争や紛争をこの地上からなくさない限り、テロもなくならない。
以上
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2015年11月29日 自転車
2015年11月30日 エベレスト3D
END