2007年10月


2007年10月20日 年収200万円以下が1000万人超す。4.4人に1人、民間給与統計

 国税庁がまとめた2006年の民間給与実態統計調査によると、通年で勤務した給与所得者のうち、年収が200万円以下の人は1022万7000人と 前年から4.2%増え、4.4人に1人の割合となった。性別でみると女性が同3.1%増の759万7000人と大半を占めたが、男性も同7.6%増の 263万人と著しく増えた。

 一方、年収1000万円以上の人は224万2000人で同4.4%増となった。給与の全体平均は435万円で前年から2万円低く、9年連続で減少し た。性別でみると男性は同0.1%増の539万円、女性は同0.7%減の271万円。

 通年で勤務した給与所得者の数は前年比0.2%減の4485万人。性別でみると、男性は1.0%減の2745万人、女性は1.1%増の1739万人 だった。

 これに伴い2006年に民間企業が支払った給与の総額は200兆346億円と同0.8%減少した。ただし源泉徴収された所得税額は同9.9%増の9 兆9321億円で、給与総額に占める税額の割合は4.97%と3年連続で増えた。

 日系BP2007年9月28日の配信記事だ。「通年で勤務した給与所得者」だと、パート勤務も含まれるはずだ。また60歳以上も含まれるから、雇用延長法による再雇用者や年金併用者も含まれる。

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 東洋経済10月6日号が「日本人の未来給料」という特集を組んでいる。厚労省「賃金構造基本統計の業種別平均年収の推移と、会社四季報の業種別業績とから、企業の増益率が年収増加率に反映される比率を算出している。以下。

 3年後の年収の上昇率が高い業界@化学・医薬品662万円→710万円。Aサービス452万円→475万円。B情報・通信625万円→655万円。C証券928万円→962万円。D機会540万円→559万円。一方、低い業界は@不動産525万円→497万円。A電力・ガス723万円→710万円。B運輸443万円→438万円。C小売り390万円→386万円。D放送924万円→922万円。

 業界別の年収格差は、生涯給料を比較する。@サービス業9.3倍。A卸売り6.3倍。B情報通信5.6倍。40歳モデル年収ランキングでは@ファンドA放送B商社。
 
 富裕層は05年純金融資産額で区分すると@5億円以上の町富裕層5.2万世帯。A1億円以上の富裕層81.3万世帯。B5,000万円以上の準富裕層280.4万世帯。C3,000万円以上のアッパーマス層701.9万世帯D3,000万円未満のマス層3,831.5万世帯。

 低所得層については、3人に1人が非正社員。女性労働者だけの調査では、一般労働者に対し派遣労働者の年収は75.5%、パート労働者は58.4%。生活保護世帯は100万世帯超。20歳前後の失業率は8%程度の高水準。

 地域格差は、最低賃金で比較すると、東京、神奈川、大阪が730円台だが、秋田、沖縄は618円。業界内格差は証券では上位10%は下位10%の4.1倍、電気機器では約3倍。親の所得格差は生徒の学力格差に比例する。

 男女格差は1.6倍。学歴格差は大卒は高卒の1.4倍。世代格差は40歳代が20歳代の1.8外。大企業は小企業の1.6倍。部長は非役職者の2.1倍で、課長の1.2倍、係長の1.4倍。正社員は非正社員の2倍。
 
 全産業では日本人の平均年収は489万円。米国443万円、中国24万円。所得上位10%の生涯所得はは2.15億円下位10%7559万円の3.8倍。

 業種別では証券928万円だが、生涯給料では放送446百万円、広告402百万円、石油石炭297百万円、海運295百万円、証券254百万円。電力ガス253百万円、空運252百万円、その他金融250百万円、情報通信250百万円、鉱業249百万円、医薬品248百万円、不動産244百万円、保険242百万円、倉庫運輸231百万円、鉄鋼224百万円、電気224百万円。低い方から小売り179百万円、繊維180百万円、その他製品193百万円、水産農林193百万円。東芝は273百万円。

 職種別では、医師1,143万円、看護師463万円、薬剤師540万円、パイロット1,302万円、CA578万円、大学教授1,126万円、塾講師412万円、幼稚園教諭345万円、理容美容師266万円、記者810万円、タクシー運転手327万円、ホームヘルパー250万円、調理師370万円、販売店員237万円。

 公務員は男子大企業平均708万円に対し、国家公務員825万円(自衛官除く)、神奈川県846万円、自衛官600万円、民間労働者489万円。

 電機では、平均年収は639万円。米国671万円、中国21万円だ。生涯給料では、1位キーエンス634百万、2位アクセル396百万円、3位アドバンテスト384百万円、4位東京エレクトロン342百万円、5位ファナック332逆万円。7位ソニー331百万円、10位キャノン307百万円、松下276百万円。総合電機では、27位東芝273百万円、日立262百万、安川260百万、三菱256百万。情報では、富士通277百万、NEC265百万。世代別では50歳代は20歳代の2.1倍で、全産業と比較してやや大きい。学歴では大卒は高卒の1.3倍で平均。男女格差は2.1倍で大きい。大企業は小企業の2.1倍で、もっとも格差が大きい。役職格差は部長は職長の1.5倍、非役職者の約2倍。正規社員は非正規社員の2倍。福利厚生制度など、給料以外の格差はたとえば松下はソニーより充実している。電機業界の未来年収は655万円で、新興国向けを中心とした需要悪大を理由に現在の639百万円から2.6%上昇するこことが予想されている。

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 サービス業の格差が大きいのは、ファンドが高給だからだ。電機ではキーエンスのような生涯給料634百万円という飛び抜けて高額の企業がある。したがって、業種をさらに細分化して見てゆく必要があり、所得/給料について、もっと調査や分析が必要だ。企業にとって給与は重要な経営的戦略であるが、給与制度を大きく変えることができないのが日本企業の性格という面がある。職種別賃金格差については、理容美容師、タクシー運転手、ホームヘルパーなどが低賃金であるのは、業界団体や官の規制、制度上の問題がある。

 業績や役職に応じた所得差が広がりつつあるが、日本は欧米と比較すると格差が少ない。格差が少ないとリスクをとらないから、安定志向になる。良い意味でも悪い意味でも日本的なシステムではある。また、日本では労働者の流動性が小さいから、所得格差にあまり意味がないともいえる。 



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