2006年4月

2006年4月30日(日) 愛国心
 (教育の目標)「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う。」28日に閣議決定された教育基本法改正案第二条五の、愛国心に関する文言である。「愛国心」については、国家主義につながるとの批判があり、改正案の争点であったが、政府原案では「国を愛し」という言葉が盛り込まれた。「国を愛する」というのはわかりにくいから、初等教育の現場では「国家や国旗に敬意を払え」というつまらぬ話にしかならないのではないか。我が国の伝統や文化が何か、ということになると、皇統だと言う輩も出てくる。
 改正案でもう一つ気になるところは、「生涯教育」である。すでに自治体には生涯教育課などがあるが、文部省の少子化対策としての事業領域の維持、拡大というねらいが見える。
 そのほかには家庭教育について。「父母その他の保護者は、(中略)生活のために必要な習慣を身につけさせるとともに、自立心を育成する(後略)」とある。生活のために必要な習慣とは、たとえばどんなことか。子供が親になってから困らぬように、学校で具体的に教えるなり、明示したほうがよい。「必要な習慣」というのを法で定めて、しつけの悪い子供自身が家庭教育を怠った保護者を訴えるというのはおもしろい。
2006年4月29日(土) タイタニック  [副題:放送と通信について]
 BS2のタイタニックを見た。DVDも持っているのだが、深夜0時半までのTV映画を最後まで見た。ひとりで見たのに恋人と一緒に映画をみているような心地がした。誰かが共感してくれそうな気がしたのが不思議な感覚だ。
 放送の同時性というのは、スポーツや事件のナマ放送の同時性という意味ではなく、見知らぬ人を含めて誰かと経験や感情を共有するという意味で価値があるのかも知れぬ。つまり、放送が通信のようにオンデマンド(一人一人が好きなときに好きな番組を選択して視聴すること)になると、孤独というか誰とも(今の)感情を共有できない寂しさがあるのかもしれない。放送を録画して後で見るとなんとなく間が抜けた感じがするのは私だけでは無いと思う。飛行機に乗って昼近くに朝6時のNHKニュースを聞くような感じ。NHKの大河ドラマを土曜の13時に再放送を見るような感じか。
 むろんTV放送にしろ誰かと一緒にみれば声をだして笑えるし、タイタニックのような映画はぜひ好きな人と一緒に見るべきだ。だが、二人で見るときは録画でも良いわけであるから、放送はひょっとしたら孤独な人に向いているのかもしれぬ。
2006年4月23日(日) 成型肉、人工霜降り肉、増量肉の作り方 [副題:アミノ酸の入った食材は控えよう]
 フォルクスは内臓肉などを接着し型枠で形を整えたものをビーフステーキとして売って、公正取引委員会から排除命令を受けた。この成型肉の年間生産量は1000トン程度と言われ、小売りのサイコロステーキ、コンビニのすき焼き弁当、スーパーのやわらか加工肉などに使われている。作り方は、内臓肉や脂身をかき集めたトリミングミートに牛脂などをまぜ、全体量に対して約3%の酵素結着剤を加える。それをアルミのバットに打ち出し瞬間凍結させ結着、その後カットして出荷する。脂比率の多い悪質なものだと焼くと半分に縮んだりぼろぼろに崩れることもある。

 成型肉に代わって人工霜降り肉というのが浮上しつつあり、市場全体規模は6000トンとみられている。シェア6割を握る食肉加工会社ホクビーでは「メルティーク」と名付け宣伝しており、ファミレスのサーロインステーキやホテルの宴会、飲食店などで使われているが、外食ではメニュー表記が進んでいない。表示義務が無いからだ。作り方は、筋を取り除いた赤身肉がコンベアで運ばれ針山の下で止まる。すると100本近くの針が一斉に赤身肉に刺さり、コンデンスミルク状に乳化された牛脂が、重量に対して20%打ち込まれる。これを成型し冷凍庫で寝かすと水分は肉中に、脂はサシとなって残る。原料肉は豪州産のカウミート(搾乳後の牛)である。

 04年にハム、ソーセージで使われた肉は42万トン。対して実際の生産量は50万トン。大豆タンパクを混ぜているから多くなるという。原料の豚ロース肉にゲル状の調味液を針で一斉に打ち込む。この調味液の中に肉と水とを結着させる各種タンパクの粉が混ぜ込まれており、仕上がっても水分が流れ出ない設計である。大量の水分を打ち込むため本来の味が薄まるので、アミノ酸などのうまみ調味料を加える。1kgの肉はゲル液を含んで1.5kgになり、加熱によって水分が蒸発して1.2kgのハムに仕上がる。高加水ハムは日本ならではのもので、仕上がりに対して加水率が50%以上になると海外の装置では対応できないそうだ。日本では贈答用の高級品以外の殆どがこの加水ハムであるとのこと。健康に対しては、高級ハムに対して増量ハムはカロリーが1/2と少ない。

 唐揚げを油で揚げてもジューシーさを保つ秘訣は軟化剤である。鶏肉を軟化剤につけうと水分を吸い込んで20%以上膨らむ。これを油で揚げれば歩留まり100%以上の唐揚げが完成する。

 ハンバーグは、もっとも安いカウミートとトリミングミート(内臓、腕その他の肉)に豚や鶏の端肉とパン粉代わりの大豆タンパクを混ぜれば安くて柔らかいハンバーグの出来上がり。ビーフエキスで味を調えれば大豆50%のビーフハンバーグとなる。

 [増量ハムのからくり]
 タンパク加水分解物(味付け。仕上がりに対して1〜2%添加)、調味料(アミノ酸など。味付け)、酵母エキス(味付け)、リン酸塩(結着、保水)、増粘多糖類(打ち込み液の均一化)、食塩、カゼインNa(保水、乳化、結着。打ち込み液に対し3〜6%添加)、コチニール色素(着色)、発色剤(亜硝酸Na。発色)、酸化防止剤(ビタミンC)、卵タンパク加工品(結着、保水)、乳タンパク(保水、食感改善。打ち込み量に対して適量)、糖類(水飴、砂糖、ブドウ糖)、豚ロース肉、大豆タンパク(決着、保水、乳化。打ち込み液中に2〜6%)卵タンパク(結着、保水、食感改善、高いゲル性。仕上がりに対し1〜2%、ポークエキス(豚分量が少ないときに味の増強に使用)

 関連記事では、食品添加物のうち、毒性が高く使用基準が厳しく定められている添加物は極力避けるべき、とし以下が挙げられている。
 合成着色料(赤102、赤3、黄4、黄5、青1、青2)、発色剤(亜硝酸Naなど)、合成甘味料(サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムKなど)、合成防止剤(BHT、BHAなど)、合成保存料(ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ブチルなど)、防カビ剤(OPP、TBZなど)

 以上は週刊東洋経済2006.3.11から抜粋。確かにレトルトの唐揚げはやたらに柔らかい。安物のハムやレトルトのハンバーグは不味いが、不味い理由が良くわかった。インスタント、レトルトも良くないようだ。ファミレスも怖いのだなあ。ファーストフードは不味いだけでなく危ないということだ。

 この記事でおもしろいのは、「食のすきやき弁当」の誤字部分等、あきらかに「コンビニ」や「居酒屋チェーン」、「ファミレス」などの言葉をあわてて置き換えたと見られる箇所が散見されることだ。上の文では私の解釈で勝手に修正済みである。特定業種をたたくと週刊誌の生命である広告取りに響くということか。こういう話は本来ワイドショーなどに適したテーマなのだが、食品業界はたたきにくいようだ。特に明確に違法で無い場合は。

 良く思うことは、高校までの学校教育では、生活に即した知識を与える教育が必要と思うのだ。たとえば食品に関しては、新鮮な野菜や魚の見分け方とか、添加物の知識、カロリーや栄養価を考えた献立、ラベルの見方、保存の方法や衛生のことなど。
2006年4月19日(水)  「ドイツの犬はなぜ幸せか」 グレーフェケ子(あやこ) 中公文庫
 著者はドイツ人技術者と結婚してミュンヘンに住む、ミュンヘン市民大学の講師。本書はドイツの市民が犬を飼うとはどういうことか、ということを伝える書である。
 犬を余り好きでなかった著者は、大方の日本人と同様に犬は外で飼うものだと思っていたが、技術者で犬好きの夫と、娘にせがまれてシェパードとコリーの合いの子である大型犬を室内で飼うことになった。飼い主は、子犬の親離れの時期を考え、排泄のしつけ、吠えたり噛んだりしないこと、人間の食べ物を勝手に食べないこと、レストランや電車内に自由に入れるがそこで長時間おとなしく座っていられること、公園で他の犬と遊ぶことなどをきちんと教える。それぞれの犬の気質や体調、発情期などを良く把握して、人間の子育てのように注意深く愛情を注ぐことが犬を飼うということなのだ。
 ドイツで犬は、毎日の散歩の時間まで法律で定められた権利があり、公園では引き紐を解かれ自由に遊べる。だが人間並のマナーを備えることが前提であり、飼い主には躾の責任が負わされる。犬のサイズにより税金の支払い義務もあるのだ。犬の学校(犬の幼稚園もあるらしい)や、避妊手術などの費用も大きい。
 犬の性格やその時々の心理を考えて、様々な問題に家族全員で対処する様子は、さながら人間の子育てのようである。むしろ、日本人の子育てよりもよほど、思慮深さと愛情を注いでいるように思う。普通の市民に、昔からそのように犬を飼う知恵が伝えられており、子供時代に犬を飼っていた家庭での経験が受け継がれている。
 ドイツで犬を飼うことは大変なことのようであるけども、著者は苦労よりも犬から与えられる喜びのほうがよほど大きかったようだ。本書の副題は「犬の権利、人の義務」とされている。
 なさけないことに、私は自分の長男とボニーというこの犬の、どちらが幸せだったか、ということを考えさせられてしまった。この犬以下の境遇の多くの人達の人権ということについても。

 
END