2006年1月

2006年1月29日(日)  皇室典範改正
 29日付け読売新聞大阪本社版1面に中曽根康弘の「内政・外交3つの課題」という署名記事が掲載されている。新聞社がその記事につけた見出しは本題より大きな活字で「皇室典範審議急ぐな」というもので、その見出しの通り中曽根元首相はこの話題に記事の半分以上のスペースを割いている。以下抜粋。

  私は女性天皇は認めるがその系統が皇位に付く女系天皇は認めず、男系の天皇制を維持するよう主張している。その理由は千数百年男系の原則で維持されてきた日本の天皇は国民統合の伝統的権威の象徴であり、また国民も日本の独自性を示す歴史的成果として誇りに思い、大切に維持してきた。世界史の観点からもいままでの天皇制は歴史上奇跡と言ってもよい希少価値を保有しており外国の識者も世界に希有な例として敬重している。これが可能になったのは男系のもとに天皇制を維持する原則を堅持して相続の紊乱(びんらん)やその断絶を防いできた厳粛にして神聖な民族的努力が存在していたためである。このような文化財を現代日本において変更する必要性は全く見あたらない。有識者会議の報告書や政府の採用の背景には、憲法上の男女平等や男女共同参画社会の出現等があるのではないかと思われるが、皇位の取り扱いは普通の法律事項とは全く異なるものである。いわば法律以前、憲法以前の歴史的伝統的事実であり成果であって、小泉首相の言う普通の「改革」にはなじまないものである (以上読売新聞記事)

 歴史的に天皇制が存続してきたのは時の権力者が自らの権威付けのために利用し、皇室も権力者にすり寄り国を支配する実権よりも取り巻きの公家たちを含めた皇統の存続を第一の目的としてきたからだ。そして幸運にも他民族の侵略を受けなかったため、権威のよるべとして存在し続けてきたのである。また、日本の多神教の伝統のために、祭祀(=権威付け)の背景となる宗教(=神道)の盛衰が必ずしも天皇家の盛衰と結びつかなかった。日本の天皇制が長らえたのは、中国の諸王朝の属国政策と大陸から見て辺境に孤立した島国であったこと、ある程度の戦力を有して幸運にも他民族の支配を受けることが無かったことが理由である。
 したがって、天皇制が長く続いたことは、日本人多数という意味での民族的努力の結果ではない。そして戦前、皇室が偏狭な国粋主義を護持する側に利用されたという事実(戦争責任)があり、そのため戦後新憲法では天皇は一切の権威を失い、祭祀を司るための象徴天皇としたのである。天皇の地位は主権を有する国民の総意に基づくのであって、戦前の現人神(あらひとがみ)教育を受けた世代が亡くなり、ようやくこれから天皇の役割を問い直す時機と言えよう。現代の社会通念や戦後世代のおおかたの感覚に照らして、男系天皇の原則には何らの権威も認められない。しかしながら、皇室の変化に反対する人たちは自ら明言しているように、戦前の天皇の権威を復活しようとしている。彼らは偏狭な民族主義者である。また、彼らが戦前の日本の精神風土の中に、現代の精神的な諸問題を解決する手段を求めているのは誤りである。そのなかで天皇がいかほどの役割を果たすこともあり得ない。

 皇室典範改正ほんとうにこれでいいのですか(神社本庁公式サイト

2006年1月22日(日)  有頂天ホテル
 久々に劇場で見た封切りしたばかりの映画について。シネマでは延々と20分ほども予告編を見させられた後でようやく始まるが、この間に浮世の雑念を忘れ、トイレにも行って、なんか口にも入れて映画を見ようという気持ちの準備が整うので、集中するためにはまあ悪くない。いわば書道で墨をするようなものかな。でも長すぎる。

 映画の内容は、大晦日の一日に、ホテルという限られた空間の中で、政治家や娼婦やホテルマンやショーの出演者など、様々な人々の様々な人生の断片や恋愛やアクシデントやらを喜劇タッチで見せるというものである。松たか子始め俳優がすごい。宣伝もすごいからかなり観客数も多いだろうと思う。

 本編が始まると、まずそのカメラワークのひどさに驚かされる。構図が汚くて、テレビのバラエティー以下である。画像の動きや切り替えが早いのは、現実感を薄めるような効果を出すためだろうか。どなるシーンが多いがうるさいだけでユーモアが乏しい。監督、脚本は三谷幸喜。豪華キャストを集めてうんとお手軽に制作したことがあきらかだ。底の浅いストーリーでも私たちの後ろにいた田舎(差別語?)女子高生グループがよく笑っていたのには少し救われた。右隣の60代とおぼしき男性は全く笑っていなかった(と思うが、うすら笑っていたかもしれない)。私はといえば、つまらないという段階を通り越して、ずっと腹を立てていた。それを察知した隣席の友人は、「楽しんでる?」と聞いて、私が「つまらん」といったら、「そんなこと口に出すものじゃない」としかられる始末。この友人自身はおもしろかった、との感想だったが、私は映画が終わってから小一時間も機嫌が悪かったとのこと。

 オールシネマの有頂天ホテル  1/31現在国内興行成績2位

END