2004年 3月

2004年3月13日(土) キダム  
 大阪公演の終わりが近づいた作夏、友人に誘われて公演を見に行った。サーカスのようなものだと思っていたのであまり気が進まなかったが、東京転勤が迫って、ちょっと追い立てられるような気持ちででかけた。

 ピエロがたどたどしい日本語とフランス語を交えて喋りだして始まる。2m位の鉄の輪に入ってくるくる回ったり、男女二人や大勢やらでアクロバチックな組体操をやったり、天井から垂れ下がる布にぶら下がって一気に地上近くまで滑り落ちたり、小さな東洋人女性が紐を使って大きな独楽を投げ合ったり、大勢でコミカルな縄跳びなど様々な、肉体を使った超人的な芸をみせる。それぞれの出し物には意味深げな英語のタイトルが付いている。出し物と出し物の間はフランス語の音楽劇でつながれ、一応ストーリーがあるようだが十分には理解できない。若い清楚な女性がフランス語で哀調のある歌を歌う。中世風の衣装と色調を抑えた舞台は、シリアスで、ちょっと不気味な感じ。小さい子供は怖がって泣く。この出し物の見事さと、観客を即座に非日常的な気分にさせる演出が見物である。

 キダムの母体は、カナダのモントリオールあたりの大道芸人達を組織化して作られた。日本では約1年間、各地で公演が行われ、現在の東京公演が最後だが、その前には世界中で公演されてきた。キダムは今回の演出の名前である。演出が変わると名前も変わる。他にもいくつかの演出があり、各国で公演中である。これらは数年後には日本に来て、公演されるというわけだ。プロデュースの力量を感じる。

 会場は表情が分かるぐらいの手頃な大きさだ。これがクレーンで組立られる冷暖房付きの大型テントなのである。この白いテントがキダムの重要な要素である。計算され尽くしたサイズや形が、どこへ移動してもベストの演出を可能にする。公演が終われば跡形もなくアスファルトの地面になることが、観客の「祭り」と旬の気分を効果的に盛り上げている。

 1万円をかなり超えるチケット料金は、やや高いと感じるが、専属バンドと洗練された演出と、なによりも体を張った芸に、十分に満足する。テレビ画面で見る映像は、合成やCGが精巧になった現在、かなり現実感が薄いものになりつつある。だが公演に足を運べば、本物の圧倒的な緊張感とリアル感が有り、幻想的な雰囲気を作り出す演出が、命がけの芸の緊張感を、むしろ緩和している程だ。スポーツ観戦をしない私は、これまで映像文化を過大評価していたかも知れない。ちょっと言い過ぎか。ともあれ十分に鍛錬された人間の芸は、人を感動させる。

公式HP    日本公演チケット

2004年3月7日(日) Universal Studios Japan(USJ)について   2003.9 晩夏の一日、友人と初めての訪問。
 ディズニーランドへ行きたいですか、と問われて、「子供となら行くけど・・」、というのがおおかたの大人の感覚と思う。ディズニーランド同様、アメリカ直輸入テーマパークのUSJにはスタントなどのショーと、ライド系のアトラクションがある。ライド形アトラクションには、ジェットコースターやウォータースライダーのような過激系と、船や自転車に乗って池から恐竜が出てきたり景色が変わったりするような移動ショー系がある。

 素材の映画そのものの一場面をモチーフにしているが、ターミネーターのようなSFアクションやETのようなファンタジー、ジョーズのようなパニック映画だから、考えさせられたり複雑な感情に浸る必要は無いのである。しかしアトラクション名は忘れたが、スタントのショーは訓練された見物だったし、動物のショーも結構楽しめる。路上のパレードはちょっと怖かったが、衣装やメーク、小道具も凝っていて、ダンスは良く訓練されていたし、インラインスケートのスピード感やバネ付きの靴で飛び跳ねる動きも変化が楽しめた。パレードはディズニーランドと違って、出し物がガラリと変化するらしい。

 高校生以上向き。アトラクションによっては小学生高学年以上向き。従業員はディズニーランドのように完璧な訓練はされていない。アトラクションは危険なスタント、音や火薬や水しぶきなど、全体に刺激が強く、ディズニーランドのメルヘンチックな気分を大切にするものは少ない。
 アトラクションの疑似体験をより感覚的にリアルに受け止められるかどうかが、楽しめる度合いなのだ。子供の心で楽しむことが唯一の楽しみかたなのかも知れない。大人のためのテーマパークというものは存在し得ない?子供が楽しめれば大人も楽しめる?。

 それにしても、平日昼間にカネと時間のあるリタイア達を呼ぶ工夫が足りない。往年の名画や名優を特集したシーズン替わりのアトラクションなんてどうか。UNIVERSALにこだわることもあるまい。フランスや邦画もよかろう。ホールが無いのも残念。新しい映像技術の実験的な試みや、アワードを主催するとか、映像文化を作ってもらいたいものである。役人OBと関西財界ではカネを出して高価なアトラクションはアメリカとそっくり同じに作れても、文化まで作れというのは無理か。
END