2003年 4月

2003年4月27日(日) ゴールデンウィークは読書がはかどって良い。 「中国人と気分良くつきあう方法」 講談社α新書 花澤聖子著、より。
 著者の中国居住時の体験談であるが、普通の日本人の主婦として日常生活でふれあった中国人の気質について、豊富な事例を紹介した本である。
 「中国人は物を貰って有り難う、と言うのは一度だけ。何度もお礼を言うともっと欲しいと思われるから恥ずかしいのだ」
 「人が血を流して倒れていてもだれも病院に連れていったり警察に通報はしない。病院から費用を請求されたり、被害者に犯人にされる可能性があるから」
 「市場などでスリの現場を見かけてもその場で騒ぐと報復されるから、すられた後で被害者に教える」
 「個人同士のネットワーク(人情網)が法以上にものを言い、上手に生きるカギである」
 「中国人はプライドが高く自分本位」
 「宴会は主人の面子がかかっており、食べきれないほどの量が出る。食べ残すのがマナー」
 「おみやげは相手の地位や会う目的によって値段を良く考えないと相手の面子を傷つける」
 「女性は仕事を持つのが普通。きちんと自己主張する」

 中国では現在も社会システムがかなり不完全で公正でない。そのなかで生き抜いてゆくためには自己主張も必要だ。簡単に他人を信用しないことも自分や家族を守るために大事なことなのだ。中国がコネや賄賂が横行する不公正な国で、社会秩序が無く法も十分に個人の生命や財産を守ってくれないとすれば、社会や見知らぬ他人に貢献するという感覚が乏しいのも当然か。中国人がプライドが高いというのは他人により高く評価されたいということだ。中国の過去の歴史や文化の優越性と現在とのギャップが、社会的地位と豊かさを求める気持ちを一層強くしているのかもしれない。
 それにしても学生時代に中国語を学び、外交官の妻として数年以上も中国に住んだ著者が指摘する中国の社会システムの問題は恐らくかなり信憑性が高いと思う。中国人評もかなり辛口であるが中国人と接した日本人の多数意見であろうと思う。しかし、成り上がりで恐らくタカピーで黄色人種に対して多少なりとも潜在的な優越感を抱いている日本人に対する反感があるかもしれぬ。

2003年4月21日(月) 現在の国際情勢を理解するためには、米中関係の歴史と現状が要諦となる。光文社新書、田中宇(たなかさかい)著、「米中論」、はお勧め。出来の悪い歴史小説と旅行記をミックスしたような内容がなかなか楽しめる。著者の大胆な憶測も交じるがそれゆえに理解し易い現代史書となっている。世界一周はマゼランの約100年前、1423年頃明朝の鄭和であるが「冊封」政策で資料が消失したという話から、列強の植民地支配下での米の中国政策、最後は中国と台湾の現状レポートで締めくくられている。

 田中宇の国際ニュース解説  http://www.tanakanews.com/

4月20日(日) 石油戦国時代に突入−「船橋洋一の世界ブリーフィング」週刊朝日4月11日号より
 イラクの油田の管理について、米国際開発局(USAID)の高官は、米国はあまり前面にでるべきではない、との考え。一方米政権内部では、エリオット・エイブラムズ国家安全保障会議(NSC)中東・北アフリカ部長らネオコン(新保守主義者)の主張は、イラクの石油を米主導で民営化すべきという。イラクが石油国営企業体制によるOPECに加入しないとすると、世界石油市場におけるサウジの支配力を弱めることができる、というものである。先の高官は「イラクの石油はイラク人のためにある」というが、イラクにはクルド人もシーア派もいる。「米国務省はスンニ派中心の現石油産業体制を大きく変えることには慎重だ。イラクの専門家のレベルは高く、協力が不可欠」と明かす。トルコはクルドが油田を握れば将来のクルド独立の経済的基盤になる、と警戒している。
 サダム・フセイン政権がロシア、フランス、中国に与えた石油利権の扱いが課題である。また、ロシアには約80億ドルの累積債務が残っている。湾岸戦争のサウジ、クウェートにタイする補償もある。それらの返済も含めて戦後のイラク再建はイラクの石油を当てにして進められることになる。イラクの石油埋蔵量は20億バレル。サウジアラビアに続いて世界第二位。ドル換算で4兆ドルである。湾岸戦争後国連の経済制裁下「石油と食料の交換」だけが輸出を認められ、米国の石油資本は米国の法律によってイラクの石油開発に一切投資できなかった。90年代半ばのクリントン政権時代、サウジのヤマニ元石油相の証言によれば「チェイニー(副大統領)、ラムズフェルド(国防長官)、ウォルフォウィッツ(国防副長官)、アーミテージ(国務副長官)らは、イラクを占領して石油をコントロールすべきだと大統領に進言したことがある。」とのことだ。
 しかしこの戦争を石油のための戦争と見るのは誤りである。それは9.11テロ後の部国の新たな政治、外交、安全保障のうねりの中ででてきた。アメリカは石油価格の下落は望んでいない。特に石油産出州のテキサスは価格安定を強く施行する。イラク戦争は石油のために戦ったのではない。しかし、イラク戦後は、石油をめぐる戦いとなるだろう。−以上、「船橋洋一の世界ブリーフィング」による。

 「ブリーフィング」の最後はどんでん返しで、「イラク戦争はオイルの為に非ず」となる。彼が今後も米国現政権のロビーに居続けるために踏みとどまったように見える。米ネオコンは、軍需による米国の経済振興と、オイル市場を支配するために、ブッシュを押し立ててイラク戦争を始めたのだ。

4月12日(土) エンターテインメントについて − いとこの家族がポップサーカスを見に行って、大変楽しめたとのこと。
 WEBで調べてポップサーカスなるものがわかった。上海雑伎団も加わっている。オリンピック以上に難易度が高いと思う。今はテレビで一流が見られるから、なんでも世界一だけが生き残れる面があって、エンターテインメントの多様性が失われている。ちょっと古いが、昔沢山あった地方周りのサーカスや旅芸人は農閑期の人々の楽しみであったが、現在は廃れてしまった。一流のもの以外はコンビニの品揃えのような必需品しか生き残れない。それ以外には自己参加型のシステム(たとえばカラオケ)が残りそうだ。このことはエンターテインメントの世界にとどまらない現象。テレビというより情報化の結果だ。
 それで失われたものはコミュニケーション。さっきの自己参加型というのは一人遊びだ。失われたのはエンターテインメントへの観客の参画である。落語は噺家と客のやりとりが面白いが、落語の客はプロだ。一流は完璧であろうとするが故に観客の干渉を許さない。例えばディズニーランドは全てマニュアルの世界。観客はどこまでも観客だ。ディズニーランドの対極にあるのがコペンハーゲンのチボリ公園である。ジェットコースターなどは無い。例えば、ゴムのボールを時々口を開けるゴリラの口に放り込むだけのゲームなのだが、それを実は一緒にゲームを始めた他の客と競うのである。観客同士のコミュニケーションを作ること自体を目的としたエンターテインメントなのだ。

日本の土地利用別面積
(万ヘクタール、小数点以下は四捨五入、かっこ内は%)
水田
284
(54.3)

127
(24.3)
樹園
46
(8.9)
牧草
65
(12.5)
林野
2510
(66)
その他
755
(20)
耕地 520 (14) (注)
3777(100)
(注)数値は95年時点、耕地は休耕田を除くと400万ヘクタール
(出所)坂井正康・長崎総科大学教授(21世紀エネルギー)に加筆
 4月11日(金) ゼミナール「エネルギー新世紀 NO.37」 (新資源戦略研究会)−4月10日日経朝刊より
  日本は温帯モンスーン地帯に属し、降雨量が比較的豊かで、草木などの育成が速い。日本のバイオマス(生物資源)は森林廃材や耕作放棄地などでの草木栽培(プランテーション)で、年間1億トンを超える。得られるエネルギーは石油換算で年間6千万トンと総エネルギー年間5億トンの1割強に相当する。今世紀、化石燃料の価格は確実に上昇するので、企業化農業経営によるエネルギー作物のプランテーションは採算を取れる事業になる。バイオマスエネルギーは発電にとどまらず、熱利用もできる。マンゴーの温室栽培や畜産・水産工場の資料となるクロレラを育成したり医療介護施設などサービス業の採算を改善してゆくことが出来る。
 このように経済的波及効果や雇用創出効果がきわめて大きいのがバイオマスエネルギーである。現在、全国どの地域の就業比率を見ても1割以下となった農林水産業は、エネルギー産業化によって持続可能な地域経済の主役に返り咲く可能性もある。−以上4.10日経朝刊より。

 「化石燃料の価格が確実に上昇する」ことが前提になっている話だが、バイオマスエネルギーは自然エネルギーで最もコストが低い風力よりもさらにコストが低いことが知られている。また、比較的植物資源に恵まれた発展途上国で現在有効なシステムである。バイオマス発電は原油に依存せずに燃料が自給できるシステムだ。そしてこういう援助こそが求められているのだ。 

END