2003年 3月

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3月21日(土) 米英軍のイラク攻撃59%不支持−22日付け朝日新聞朝刊より
 米英軍のイラク攻撃について、「指示しない」59%、「指示する」31%。開戦前の2月調査ではイラクへの軍事行動には78%が反対していた。開戦後でみると01年のアフガニスタン攻撃時の調査では指示46%、不支持43%と拮抗。今回不支持と答えた人の理由。3択では、「戦争そのものに反対」が6割。「正当な理由がない」が2割。「国連の決議がない」が1割。イラク攻撃に「支持」と答えた理由は「フセイン政権が危険だから」が約5割。「日米同盟の重視」が2割。−以上朝日新聞より。
 
 「戦争そのものに反対」が6割、という数字には日本人の健全さが感じられる。先の戦争の記憶が薄れたとはいえ、戦争を体験した世代の「子や孫には決して悲惨な体験をさせない」という強い思いが十分に浸透しているようだ。日本人の平和主義(pacificism)は自らの体験に根ざした文化なのだ。小泉政権は目先の利害に捕らわれ、姑息な戦略的判断をした。哲学や信念のない外務官僚に最も大きな罪がある。
 仮に戦略的な議論をするとしても、イラクの人民を必ず犠牲にするような武力行使は必要ない。フセイン政権が周辺諸国に対して軍事行動を開始すれば直ちに国際世論はフセイン政権を排除すべきとして一致するだろう。そしてフセイン政権が無くなってもテロは無くなることはない。自らを爆発物として市民を標的にするようなテロは、決して武力による威嚇で無くなるものではない。イスラエルとアラブ諸国の歴史を見ても明らかではないか。平和と民主主義、医療や教育の充実、貧困や差別の問題を無くすことしかない。先進国(developed countries)にはこのような役割を果たす義務があり、これこそが現代の安全保障をもたらすのだ。
 米国は緻密な計算の結果イラン侵攻の損得(自国にとっての)を判断したと考えていたが、今や後にひけなくなっただけだ。多数の人命を犠牲にし、さらに大勢の難民を生み、戦勝国たる米国は威信すら保つことが出来ない。ブッシュの盲信はアルカイダと同レベルといわれても仕方あるまい。

3月6日(木) 下水道はいま(中) 日本下水道新聞4日付け
 下水道と合併浄化槽の比較。初期投資の事業費だけで比較できない。機能に違いがある。汚水処理のみを行う合併浄化槽に比べ、下水道は汚水処理は当然として浸水対策や汚泥処理など多くの役割を担っている。各家庭に設置する合併浄化槽を学校や会社に背負って行くわけにも行かないので単純な設置費用の比較は無意味だ。
 耐用年数は合併浄化槽の駆体30年〜、機器設備7〜15年。それに比べて下水道は処理場15〜70年、管渠50年〜120年とされ、平均しても下水道が勝っている。現時点での整備単価を比べても下水道は10,160円/人/年で、合併浄化槽の12,700円/人/年より有利とのデータもあり、維持管理費を加えたコストでも同様な判断ができよう。さらに見逃せないのが地域の水環境にも影響を与える放流水質の違いだ。下水道の水質基準は最大20ppm(BOD)。合併浄化槽は構造基準で平均20ppm(BOD)とされ、不安定な処理水質が懸念される。合併浄化槽の処理性能や維持管理についてここまでの指摘には異論も多いだろう。経済諮問会議等の議論から個別処理を積極的に推進すべきという声も高まっている。しかしどのように技術が進歩してもしっかりとした維持管理無くしては判断の余地はあるまい。さらに下水道FTTHによる地域情報網の実現など、将来を見据えた役割の広がりを期待されていることも付け加えておく。−以上4日付け日本下水道新聞より
 
 記事では放流水質の比較として、下水道の放流水質(BOD)が100%20ppm以内におさまっているとし、2度にわたる合併浄化槽の水質調査例では基数にして15%位が20ppmを超過していることを示している。ヒステリックに合併浄化槽をたたくところにいわば建設の時代を終えつつある下水道に関わる人々の焦燥を感じる。
 放流水質に関しては下水道法で定められた20ppmを上回る報告がなされることはない、ということは事業に関わる者なら誰でも知っている。下水道では雨天時の初期雨水の問題や、合流式の下水管渠のフラッシング放流について基準値以上の放流水質となっていることが従来から指摘されている。それどころか終沈がバルキングによりキャリーオーバーしているのに放置されている処理場もあった。
 耐用年数で挙げられている数字もクビを傾げざるを得ない。木造家屋の耐用年数から浄化槽は30年と言われているようだ。FRPで作れば再利用ができる。7年と言われているのは換気ファンのことだ。下水道施設でも機械や電気設備では7年とされているものも多い。管渠は50年以上使用するとなると多額の更正費用を要する。
 建設費の比較について。5万人未満の市町村の下水道普及率は今なお29.5%(H13年度末)であることからも、今後汚水処理は比較的人口の少ない地域で整備を実施して行くことになる。管路恒長あたりの人家が少なくなると、汚水を集めてから処理する下水道の方式だとこれまで以上に管渠整備費が上昇するのだ。下水道管渠が整備されて下水道が地方にあまねく普及するにはまだ数十年を要すると言われている。一方地方の河川や湖沼の水質保全は急務である。下水道法では、下水道事業が今後20年以上整備されない見込みの地域でしか、合併浄化槽などの方式は認められていないのだ。
 下水道と合併浄化槽は二者択一ではなく、それぞれの長所を生かしていずれかを設置すればよいのだ。しかるに役所のなわばり(下水道−国土交通省、合併浄化槽−厚生労働省)意識と下水道事業のなかで様々な既得権(技術や権勢)を有する産学の後押しがあって、正当な議論がなされていない。
 実は農村集落排水事業や漁村集落排水事業と言うのもあって農林水産省の管轄なのである。下水道以外の汚水処理施設を下水道類似施設と言う。下水道普及率(H13年度末で63.5%)と言う場合これらを含めないが、汚水処理普及率(H13年度末で73.7%)というと下水道類似施設を含む。合併処理浄化槽の整備状況は、H13年度末で9,646[千人]であり、汚水処理施設整備人口計93,260[千人]の10%強を占めている。

3月5日(水) Netpress SMBC経営懇話会発行 「大型貨物自動車に速度抑制装置の装着義務づけ」
 新保安基準の施行により今年9月以降、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の自動車(以下大型貨物自動車)に、最高時速を90km/hとする速度抑制装置(スピードリミッター)の装着が義務づけられる。新車の登録条件となるほか、使用過程車については最大3年の猶予期間が設けられている。 −以上ネットエクスプレスより。
 
 大型トラックが高速で120km以上でとばすヤツがいる。運動エネルギーは莫大だから、事故は桁違いに大きくなる。小型乗用車(1トン)が60kmで走っているのと比べると、エネルギーは32倍だから恐ろしい。だいたい鉄道が頼りないから日本の物流はトラックが主体になってしまったのだ。ほんとに道路のほうが物流コストが安いのかどうか。LCAやCO2はどうか。都市での渋滞ロスはどうか。最適解があるはず。

3月5日(水) 地方の雇用は厳しくても自助自立から −5日付け日経社説より。
 一月の完全失業率は5.5%で過去最高を記録した。昨年の年平均を都道府県別に見ると沖縄の8.3%から島根の3.5%まで格差があり深刻さの度合いも様々だ。総務省が試算した昨年の都道府県別年平均完全失業率によれば沖縄に次ぐ7.7%の大阪府を初めとする関西地方の落ち込みが目立つ。京都府、兵庫県がともに6.6%で並ぶ。東北、北海道も厳しい。地方経済を下支えしてきた公共事業の縮小や製造業の空洞化、流通業の店舗閉鎖などの影響が地域ごとに違うため雇用情勢に格差が生じている。大阪が厳しいのは重厚長大型産業の衰退、家電関連産業の海外への移転、テーマパークの不信などが重なっているからである。秋田などの東北地方はかって雇用を生んだ電子部品などの工場閉鎖が相次いだ。しかし地場産業が疲弊した地域は手詰まり状態である。情報やソフト、サービス関連の都市型の産業が少ない地方は政府の支援に依存しがちだが、財政難であてにはできない。困難でもここは自助自立の発想に立つしか活路は開けないだろう。経済規模では大阪はオランダに近く、京都兵庫とあわせればインドやオーストラリアを上回る。海外との経済交流なども含めて地域ごとに独自の戦略を競ってはどうか。政府は環境を整備する責任があり、構造改革特区などの規制改革にもっと真剣に取り組むべきだ。−以上日経による。

 日経案は「海外との経済交流」、条件が「構造改革特区などの規制緩和」。その具体的なアイデアと実現こそが火急に求められているものなのだ。中小企業と大学の橋渡しや特許取得・ベンチャー支援、イベント企画など官がうまく後押しできるような事業がある。外食チェーンやコンビニが乱立する商店街は個性が無くなって自ら衰退するなど、地域振興のために必要な規制もある。してみると地方行政組織の活性化こそが始めにありきだ。硬直した職員組合を解体、再生し現業部門を民営化し、人事評価制度や給与制度を改め、民間との人事交流や外部監査制度、情報公開、地方への権限委譲、財源委譲が必要だ。こう書いてみると実現性が殆どないこともあらためてよくわかってしまうのだが。


3月3日(月) 「中国発物価安、アジアに拡散」 2日(日)付け日経

 内閣府調査による消費者物価(年間)内閣府
1980年代
平均
1990年代
平均
2002年
日本 2.5% 1.2% −0.9%
中国 12.0% 7.8% −O.8%
香港 1.5% −3.0%
台湾 4.6% 2.9% −0.2%
シンガポール 2.8% 1.9% −0.4%
韓国 8.4% 5.7% 2.7%
米国 5.6% 3.0% 1.6%
ユーロ圏 3.3% 2.7% 2.3%

 香港の下落が大幅となっている。中国本土への交通が便利になり中国との価格の平準化が強烈なデフレ圧力をもたらしている。シンガポールや台湾にも中国製の割安な衣料品や日用品が流れ込んでいる。台湾ではIT関係の生産拠点が中国に移転しており、産業の空洞化が進んでいる。香港に比較してシンガポールや台湾のデフレの影響は今の所限定的だが、中国の世界貿易機構(WTO)加盟などで「より安い価格への収斂」は避けられなくなってきている。みずほ総合研究所によれば「中国の市場経済化で特にアジアでは価格の均衡が進んでいる」と指摘。デフレの発信源とされる中国だが、自らも物価下落に直面している。投資ブームで過剰設備を抱え、供給超過になっている。 −以上日経朝刊より。

 韓国では今なおサムソンのような財閥が政治を支配していて、規制の壁が安価な海外製品の輸入を阻んでいるのだろう。規制緩和と市場経済のグローバル化は先進国と途上国の物価格差と賃金格差を是正するのだ。長期的には円を切り下げ政策とせざるを得ない。国内産業は特許や著作権以外に身を守る手だては無さそうに見える。
 
 
 


END