2003年 2月

2003年2月26日(水) 社長100人アンケート 日本経済新聞社による主要企業の社長、会長、頭取へのアンケート集計結果
 景気関連。集計結果によれば「景気動向は底ばいが続き、底入れ時期は来年前半」と見ている。米景気も同様に見られている。大半が「物価下落は続く」としている。収益環境の変化については、3ヶ月前とはほぼ同様で、昨年6月よりはかなり悪化している。
 株価関係。今年3月31日の日経平均株価の予測では、「8,500円から9,000円」が半数強、「8,000〜8,500円」が25%。年内の日経平均株価予測では高値「9,000円から9,500円」が25%、「10,000円〜10,500円」が22%、「9,500円〜10,000円」が16%。安値は「8,000円〜8,500円」が54%、「7,500円〜8,000円」が35%。
 円ドル相場では高値が「110円〜115円」、安値が「125円〜130円」と見る人が約半数。高値を「115円〜120円」、安値を「130円〜135円」と見る人が25%強。
 政策関連。為替政策では「円安誘導を望む」のは25%、「現状水準維持」が47%。インフレ目標については「導入すべきでない」が51%。景気回復のために必要な政策(複数回答)、「法人税減税」77%、「規制改革の強化」74%、「雇用対策」66%、「景気回復を優先する予算」50%。
 経営戦略関連。経営の不安要因(3つまで選択)、「消費低迷]60%、「販売価格の下落」44%、「世界景気の停滞」40%、「競争激化」32%(前回20%から大幅増)、「株価低迷」29%、「国際情勢の不安」21%など。自社の重点施策、「商品開発力の強化」36%、「財務体質の強化」21%。設備計画「前年並み」41%。コーポレートガバナンス、「現状の監査役制度を継続」60%、年度内に「委員会等設置会社に移行」5%。
 雇用・賃金関連。ベア、「廃止」31%、「存続」19%。定昇、「廃止」35%、「存続」18%。春闘、「必要」62%。春闘を必要とした理由、「労使で認識を共有できるから」80%。望ましい賃金制度(複数回答)、「成果主義」88%、「業績連動型」68%、「職務給型」61%、「職種別」27%、「年俸制」24%。現在の賃金水準、「適正」42%、「やや高い」37%。総人件費の抑制、「やむを得ない」76%、「消費と関係ない」14%。自社の正社員数、「過剰」50%、「適正」41%。今後の雇用推移、「減らす」57%、「適正」32%。 −以上日経アンケートより

 アンケート結果を見る限り日本の大企業のトップは「当面厳しい収益環境が続く」と予測し、政府には「規制改革の強化」「雇用対策」を求めている。経営施策では「販売価格の下落」「競争激化」のなかで「商品開発力の強化」を重点目標とし、賃金制度では「成果主義」への改革を進めつつある。
 企業トップは概して政治に甘えず、小泉内閣の改革路線を基本的に支持している。かっての財界による政治支配から、癒着、そして今はようやく財界と政治の好ましい関係が気付かれつつあるのかもしれぬ。自社の体質強化については、労使協調のもとで改革を進めようとしている。健全でおだやかで強い意志を感じる。(とはちょっと誉め過ぎか) 
 日産がベア、一時金の満額回答をだした。トヨタも一時金では満額回答だった。企業格差が一層拡大し淘汰が進む。

2003年2月12日(水)  環境(サステナビリティ)報告書
 下記のURLは、中央青山監査法人の環境報告書に関するページだ。「自主的な報告で有りながら作成公表している企業数が急増している」とあるが、環境報告書は、公共事業にこそ求められているのではなかろうか。LCAのような製品レベルの評価法はほぼ定まったが、企業や自治体の事業全体に対する環境監査のノウハウは現在どこにあるのか。
 「外部行政監査は莫大なマーケットだ」とは以前から言っているが、現時点では「会計監査」の域をさほど出ていないようだ。様々な外部監査システムがビジネスになると思うが、例えば「(水道)事業監査」と「環境監査」はいわば縦割りと横割りの関係にあり調整を要する。監査法人が得意な「会計監査」がいわば横割りだから、「環境監査」はマッチングがいいというわけだ。
 情報処理の資格に「システム監査」というのがあるが、この分野も建築の「設計・施工管理」のようなメーカーから独立した事業になかなかならないのが不思議だ。知恵を売る商売のタネはいくらでもあるのだが、知恵にはカネを払いたがらないのが、いまなお日本の商慣習であるらしい。

http://www.chuoaoyama.or.jp/environment/trend/030206_0101.html

2003年2月5日(水)   賃金・賞与諸手当ガイド−日本総研・産労総研共著
 2002年の2001年比。
・賃上げ状況は、主要企業193社では5,249円、1.59%、従業員500人未満の中小企業612社では3,274円、1.27%。調査史上最低であった。
・定昇とベアの区別がある企業では2002年の賃上げでは「定昇のみ実施」が73.6%で大半であった。
・初任給については「凍結」が86.5%。2002年度初任給は学卒196,286円、高卒15,8181円、従業員数規模による企業間格差は少ない。
・賃金の年齢別格差は学卒総合職22歳199,531円、30歳292,852円、40歳421,078円、50歳539,364円、55歳581,441円。格差はやや減少傾向にある。
・賃金の規模別格差は1000人以上を100として、22歳では格差が殆どないが、500人以上、300人以上、300人未満規模の企業を比較すると、30歳で5〜10%、40歳で5〜15%、55歳で10〜15%の格差がある。
・年収は22歳2,925千円、30歳4,722千円、40歳6,792千円、50歳8,851千円、55歳9,476千円。規模別では1000人以上規模の55歳では10,828千円。300人未満では8,732千円。年間賃金は前年比マイナス。
・賞与は大手147社平均で4.7%減。最も下がった鉄鋼が▼12.3%、電機が▼12.1%。
・年収に占める賞与の割合は26%前後。
・大卒部長の年収は1,108万円、課長が909万円。部長の年収は1998年11,823万円がピーク。
・役職者の規模別賃金は、1,000人以上の部長が72.7万円で500人未満が59.8万円(82.3%)、1000人以上の課長が59.4万円で500人未満が46.9万円(79.0%)。
・定年退職金は大卒で2,222万円(40.4月)。高卒が2,084万円(38.5月)。
・制度面では、セクハラ対策が67.9%で実施。、分煙対策が76.9%で実施。
・完全週休2日制は1,000人以上規模では73.6%、300人未満で38.3%。企業格差が大きい。
・変形労働時間制の採用割合は54.3%、フレックスタイム制は5.6%。
・アルバイトの月収は19.5万円。女性パートの時給は890円。
−以上、賃金・賞与諸手当ガイドによる。

 相変わらず年功賃金制で、30歳と55歳では賃金格差が約倍である。日本企業では労働者の流動化が増大しているというが補助職などでのみ増大しているようで、相変わらず終身雇用の年功賃金である。企業格差は、例えば中小企業の部長と大企業の課長がほぼ同じだ。大企業へ入社するのは大変だが賃金格差は案外少ない。権力や名声も給料の内、といったところか。倒産リスクも中小企業が大。しかし個人の能力が業績を左右する点や実力主義という面では中小企業のほうが優れている。別格は公務員。

2003年2月2日(日)   
 デフレは悪か。この書き出しは以前もあった。「インフレは生産者と流通機構が儲かる」と高校の「政治経済」で習った。つまりデフレは消費者が徳をするのだ。給料が下がるよりもモノの価格が下がる方が先だから。してみるとデフレは悪くない。悪いのは下手な経営者が倒産して失業が増えることか。以下世相をマクロ分析してみる。
(景気について)
 どうやら日本の景気は今後数年以上回復する見込みがなさそうだ。しかし中国を中心とするアジア諸国への投資はこれからもっと伸びる。アジア諸国との賃金格差がある内はモノの生産では国内企業は勝てないからだ。衣料品や食品から始まったアジア諸国への生産拠点の移動は、現在家電製品の大半に及ぶ。今や国内で生産すべき製品は殆どない。企業にとって人員のリストラは一時的な手段に過ぎない。生産設備のリストラとグローバルな資本の配置または選択事業への集中投資が必要。国内企業の勝ち負けが明確になりつつある。言えることは国内の雇用拡大は今後も難しいいうことだ。
(教育について)
 忠誠心だけで自分の仕事の意味も考えないようなロボット人間が大量生産されてきた。かって日本の規格大量生産時代には効率の良い労働者が求められ、学校は読み書きそろばんが人並みに出来て休まず遅刻せず従順な労働者を生産してきた。アジア諸国ではようやく教育が普及して、今や日本と同じ道を辿っていると言うわけだ。いやな表現しか思いつかないが、「知的階級社会」とでも言う時代がもうすぐ来る。一人一人が自分の労働力としての価値を見極めるべき時代だ。有名大学のブランド価値は既に無いに等しい。一流企業も一寸先は闇。それでも入試のために記憶力競争を続けているのはなぜだ。
(外交政策について)
 グローバルに展開しようとする企業活動を支援するのが政治。支援というのは目先の支援ではない。例えば外交相手国との対等な信頼関係を構築する、とか国際社会におけるリーダーシップを発揮するとか、好感を持たれるといったような意味である。支配し搾取すれば継続的な関係は構築し得ない。その意味でも日本に自立した外交政策はあるのか。ないとすれば政治が理想や哲学をおろそかにしたつけだ。芸術や文化もしかり。
(為替)
 中国の元を4倍にすべきという意見がある。スウェーデンで通貨切り下げがデフレ対策として成功したので、円を50%ぐらい切り下げすべきだという意見がある。切り下げが近いという話は最近外貨預金の宣伝でもしきりに使われている。短期的には米ドル安なのでユーロ買いと言う意見が大勢のようだ。
 円切り下げ(政策)は、輸出企業を壊滅させるだろうか。最も優良な自動車産業は海外に生産拠点を移しているのでさほど心配がなく、むしろ短期的には関連産業の国内生産が好転する。よって大幅切り下げは有り。
(消費税)
 だれもが消費税が上がるという前提で話している。いずれはヨーロッパ並の18%位になるのだろうが、まず7%となるタイミングは、半年先の総選挙後かもしれない。上がる話は個人消費や企業投資を短期的に増大させる面もある。

END