2002年11月

2002年11月29日(金)  新エネルギー −日経29日付け朝刊、全面広告より
 風力発電は日本で最も急速に普及・拡大が進んでいる新エネルギーの一つであり、特にここ数年の伸びが大きい。国内における累積導入量は1996年末で1万2千キロワットであったが、2000年末に約13万7千キロワット、2001年末には30万キロワットを超えるレベルとなっている。
 急増要因は風車の大型化による設備容量当たり建設コストの低下である。4,5年前までまでは平均的な風車規模は300〜400キロワット前後であったが現在はこれより遙かに大きくなっており01年の1年間に導入された風車の平均規模は900キロワットを超えている。そしてこれに伴い建設コストが低下しており、3,4年前には30万〜40万円・キロワット程度が一般的水準であったものが、現在は20万円/キロワットを切る水準になっている。風力発電の設置には政府からの助成制度があるのでこれを使えばされに実質的な建設コストを押さえることができる。 −以上日経29日付け朝刊より

 風力発電はコスト的には太陽光発電の1/2〜1/4ぐらいである。クリーンな発電装置では、そのほかには海の干満を利用したり波力発電というのもある。深海の温度差発電。地熱発電、水力発電は新エネルギーとは言われないが、これらは運転による環境汚染が殆ど無いいわばクリーンな発電である。
 資源採取から製造・販売・使用・廃棄にいたるまでの製品のライフサイクルにおいて、製品がおよぼす各種の環境負荷や環境影響を定量的に評価する手法をライフサイクルアセスメント(LCA)という。クリーンなエネルギーを生産する装置を建設したり寿命を終えて取り壊したりするためにクリーンでないエネルギーを大量消費したり環境を汚染したりすると意味がない。だからLCAという手法で装置や事業を評価する必要があるのだ。
 電力は送電や配電のための設備もLCA的にいうと負荷が大きい。原発無き今(と言ってもよいだろう)、旧来の火力発電所は数百万kWと大きいことが発電コストを低減し環境対策も容易になる面があったので都市の海沿部に多く建設されてきた。一方電力事業は電気事業法を初めとする様々な規制があり、いわば電力会社の利益が守られてきたが、1995年の法改正によってようやく独立発電事業者(IPP)が認められ、発電事業への自由な参入が可能になった。
 これからは多様な発電装置がその特性に応じて使用されるようになるだろう。安定した水素供給を前提に、燃料電池やマイクロガスタービンが安価でクリーンな、地域のエネルギー供給源となる可能性もある。目障りな電柱と電線が無くなる日も近い?

11月28日(木) 全ての本にICタグ−28日付け日経朝刊より
 出版各社は2005年を目処に、国内で出版される全ての本の背表紙などにICチップを埋め込み売れ行き管理や万引き防止に活用する。出版500社、取り次ぎ40社、書店9千社が加入する「日本出版インフラセンター」で詳細を詰める。ICタグは電波を発し、1ー2mの範囲内で有れば受信機で認識できる。書店に受信機を置けば販売管理や万引き防止に使える。
 国内では年間60億冊発行される本の販売・物流管理にICタグの導入を固めたことでICタグの普及に弾みがつく。現在100円/個程度だが、10円/個以下に下がると見られ、さらにシステム導入に伴って膨大なデータベースの管理やネットワークを致したサービスの業務委託の需要が増えるためビジネス機会は拡大するとみられる。 −以上日経より。
 ICチップは砂粒ほどの大きさの、非接触でデータをやりとりできる発信機付きメモリーである。例えば生鮮食料品なども、卸売りや小売りの段階でタグを付け替える際に生産者の認証を得て付け替えれば末端消費者までの商品の認証が直接可能となる。BSEの問題が発生した牛肉やブランド米なども産地管理が可能となる。商品だけを見て生産者や流通経路が判明すれば流通の信頼性が向上し商品自体の価値を高めることになる。冷蔵庫の内容品が外出先からチェックできたり、段ボールに収納した本のリストが自動的に作成できたり、電気製品の説明書や衣料品の手入れ方法がインターネットで直ちに表示できたり、という感じである。やっぱり人間にICチップが埋め込まれる時代が目前ということか。医療情報のため、などの名目で始まるのだろうなあ。

2002年11月25日(月) ウインドウズXPタブレットPCエディション
 各社のタブレットPCによるWIN/TABのデモに出くわした。始めて実物を見て簡単な説明を聞いた。TVでもコマーシャルをさかんに流しているのでみんなご存じと思う。画面にタッチペンで手書きするとそのまま文字や絵が描ける。手書き文字のテキスト変換も結構高性能だった。しかし、キーボードの達人の私としてはこれまではタブレットなぞキーボード入力ができない輩のためのおもちゃだという認識であった。ビギナーはともかく一般には手書きよりもキーボードの方がはるかに早く文字入力ができるからだ。ところが実は大まちがいで、タブレットは文字入力ツールではないのだ。エクセルやワード、HTMLの画面を表示させて、その上に自由に文字や絵などの落書きができる。また手書きで囲った範囲だけを元のデータから切り取ってメールで送ることもできる。GIFファイルだから数十kぐらいのさほど困らない程度のサイズとのこと。プレゼン用としてもちろん威力を発揮するが、コミュニケーションツールとして大変強力と感じた。タブレットはビギナー用ツール、という認識を全く改めた次第である。
 注:タブレットというのは、画面上を専用ペンでタッチすることにより手書きの文字や絵が描けるというもの。アイコンにペンで触れるとマウスの代わりにもなる。

2002年11月24日(日)  携帯電話の機能[3] (10月25日、24日の続き) 
 携帯電話の機能(10月24日の続き)
 21.電子辞書、音声自動翻訳機
 22.全世界対応
 23.ウェアラブル
 24.地震予報、津波警報、災害警報受信
 25.有料道路ノンストップ自動料金支払いシステム「ETC」
 26.WEB対戦ゲーム
 27.コンサート、スポーツ観戦、TDLやUSJなどのチケット機能
 28.PCの個人環境設定機能(家庭や職場、学校の共用PCのカスタマイズ機能)
 29.個人認証機能。指紋、声紋、目の虹彩などによる個人認証。
 30.パスポート、各種ライセンス機能
 31.病歴、履歴、持病、血液型、臓器提供意志確認

 24日第3項の表示画面の大型化について。既にめがねのように装着したり、のぞき込むと離れたところに大画面が見えるようなディスプレイが販売されている。
 31項目挙げたなかで技術的な問題があり実現困難な内容はほとんどない。音声自動翻訳が実用の域に達していないことぐらいか。電波の認可などの制度上の問題があり現時点では対応困難な項目は全世界対応、大画面動画表示ぐらいだ。
 本人の認証機能を有し常時通信可能でカラー動画表示画面や音声入出力が可能なコンピューターを先進国の多数の人々が常時携帯するという環境はかってなかった。携帯電話は普及期を終わったので、今後は個人のニーズに応じた多様な機能が付加されてゆく。仕組みを握るものが勝者となるのだ。

2002年11月14日(木) カーオブザイヤーは「ホンダアコード」−日経産業新聞14日付け朝刊より
 カーオブザイヤーはいろいろ批判を浴びながらも続いてきた。しかしなんともつまらん結果になった。アコード348点、フェアレディZ321点、アテンザ217点、BMWミニ182点、ベンツEクラス117点。ホンダはシビック、フィットに続き3年連続受賞。朝日、日経共に小さな扱い。昔はご祝儀の全面広告が全国紙全部に出たものだ。(明日かもしれないが)
 一体、車は趣味か実用か。実用車なら安くて荷物や人が大勢積めるのが良いということになる。趣味なら操縦性が良くて外見にこだわるのが良い。個人で所有することがレンタカーやタクシーよりもはるかに費用を要することを考えると、車は趣味と言って良かろう。しかるに最近はトラックのようなマルチユースというか一見機能的そうな車ばかりがはやりだ。ワゴンやワンボックスカーは車重が重い上に重心が高い。FF(フロントドライブ)なので室内は広いが小回りが利かず、操縦性が悪い。
 みんな知らないのだが、出来の良い車はどこまでも走って行きたい気分になる。車との一体感がある。スピードを出さなくても同じだ。昔乗っていたS13K’sシルビアが最高だった。それ以前に所有していた130Z(2.8L2by2)よりも良かった。借りて乗った30Z(2.4L)ぐらい良かった。マツダのロードスターを若い人に貸したら、それが東京の友人の所有なのだが、そのまま九州まで走っていってしまったそうだ。若い人にはぜひ、小振りなスポーツカーに乗ってもらいたい。

2002年11月14日(木)  日経平均、バブル後最安値8438円−日経14日付け朝刊より
 デフレは悪か。最近落ち目のユニクロ、65円ハンバーガーのマクドナルド、百円ショップのダイソー。価格破壊を主導したこれらの企業のおかげで、特に生活必需品が安価になった。物流も早く安くなり、通販も発達して地域格差や価格格差が減少した。その結果日本人は給料はやや減ったが、高価なブランド品や趣味にカネを使えるようになった。土地や住宅の価格や通信費は大幅に下がった。
 企業は甘い汁を吸えなくなったが、いわば人、カネ、モノの浪費の時代が終わったと言うだけのことである。企業は本当の価値を創造することが求められている。官も同様である。官に求められているのは真の価値を見極めることだ。そして目標を示すことだ。

2002年11月10日(日)  「食料無ければ平和も築けぬ」 ノーマン・ボーローグ博士(ノーベル平和賞受賞者)−朝日新聞11月9日付け
 技術協力に赴いたメキシコで、病害に強く高収量の小麦変種を開発した。穀物管理の改善と相まって農業生産を飛躍的に増大させ、60年代の「緑の革命」の口火を切った。世界の小麦の収量は3億トンから6.5億トンに倍増、何億人もの飢餓を救った功績で70年にノーベル平和賞を受賞。アメリカ人。10月東京都の国連大学での講演から。
 「平和と農業の間には深い関係がある。食糧不足に悩む国の56%は内乱に見舞われており、栄養不足の無い国で紛争を抱えている国は8%に過ぎない。それなのに全世界の軍事費の合計は8500億ドル。残念ながらその47%は米国だ」
 「60年代に高収量品種が導入されてからアジアの穀物生産量は大幅に延びた。心配なのはアフリカだ。ベトナムや日本の1f当たりの肥料投入量が300〜400kgなのにアフリカの国々は2〜10kgに過ぎない。肥沃土を取り戻すにはとうてい足りない」
 「人口抑制という言葉は嫌いだ。人口問題を解く鍵は教育だと思う。世界の成人の8億人以上が非識字者だ。彼らが等しく教育の機会を与えられれば、立派な技術者になり得るだけに、現状はたいへんな人材の浪費だ」 −以上 朝日新聞から

 もうすぐ半世紀にもなるぐらい以前から、日本の米作りは機械化と化学肥料によって大きく変革され、農民は過酷な労働から解放された。農協の組織化の結果、農業経営や肥料などの仕入れの事も考えなくて済むようになった。そして、減反である。米を作ることが喜ばれない時代になって日本の農業は目的を見失った。土にまみれて家族だけで働く。毎年同じ事を繰り返す。収穫量が天候に左右されるリスクを負う。後継者の問題が一層深刻である。
 これからは農業に普通のビジネスの手法を持ち込むべきである。すなわち、金と票の搾取のための農協支配を、企業による合理的な経営に転換する必要がある。企業は開発投資をし専門家を雇用し設備や肥料を安価に購入し生産を効率化し販路を開拓する。
 農業のマクロな目的はアジアの一国である日本では、一層米の収量を増やすことであろう。そしてマクロの農業問題の解決には、政策による企業活動の誘導が必要だ。それが高邁な理想に基づくものであれば、企業や労働者に最善の新たな目標を与えることになるのではないか。

2002年11月7日(木)  松山市が給水制限 −日本水道新聞 11月4日付け
 松山市が28日から給水制限の二次減圧(平均25%から50%へ)に踏み切った。大渇水に見舞われた平成6年以来8年ぶり。地下水位が観測井戸で4.89mで平年水位2.46mを大幅に下回り、平成6年の最低水位5.49mに近づいているため。石手川ダムの貯水率も45%で割り当て水量が15%の取水制限相当に削減された。−以上、日本水道新聞より。

 漏水量と圧力の関係について。圧力が変化したときの漏水量は、一般に圧力比の1.15乗に比例するとされている。従って、給水圧力を25%から50%に減圧強化すると、漏水は63%に減少する。給水制限の際に配水圧力を減圧する理由は、例えば定量使用するフロの水など貯水される水量は変わらないが、流して使用するような水量が減圧によって減ることを期待しているわけである。さらに渇水がすすむと時間給水となり、一日の内時間を決めて給水する。
 水道水は生活に影響があるだけでなく飲食店などでは死活問題であるから、給水制限で重要なことは公平性である。このため松山市クラスでは数千個のバルブを開閉するのに給水工事店などを動員して数百人を要す。この費用が一回の給水制限で十億円近くになる。従って給水区域を細分化し、これを配水ブロックと称するがこのブロック単位で電動圧力調整弁によりきめ細かな調節をする訳である。100個つけると30億円ぐらいになるが、渇水時の費用を考えると十分に見合う。福岡、松山、高松、丸亀など主要な渇水地ではこのような整備がだいたい完了している。圧力調整を実施すると副次的に昼夜間の水圧調整などにより漏水を減少させる効果が生まれる。
 ブロック化整備はこのような機能のためだけでなく、断水などの事故の影響を最小限にすることができる。さらに、配水池の配水エリアを適正化できるので、送水電力を削減できる効果が生じる。また、配水施設をブロック単位で評価できるので効率的な施設整備のための投資ができる。しかしながら全国の大半の事業体で一向に整備が進んでいない。

2002年11月7日(木) 下水道事業における排出枠取引制度 −日本下水道新聞 11月5日付け
 国土交通省下水道部は、高度処理についての排出枠取引制度を活用した対応を検討するため委員会を設置した。来年三月までに東京湾流域を対象に取引モデルを検討する。「排出枠取引」とは、汚濁物質の排出総量を決めた上で、排出枠(排出許可証のようなもの)を発行して、あらかじめそれを各自治体に配分しておいた上でその権利を売買する経済的手法のことを言う。東京湾におけるモデルの枠組みは、流域の7都県市で高度処理(COD、T−N、T−P)を対象に排出枠を設定し、汚濁負荷量を「T−COD」という指標に一元化。一単位当たりの平均削減コストを算出し排出枠価格を設定する。取引の前提として「東京湾高度処理協議会(仮称)」を設置し、流域の下水道管理者に削減量を割り当てそれに基づき許可排出枠を決定する。さらに同協議会に「東京湾流域高度処理基金(仮称)」を儲け、同期金が排出枠の売買を斡旋・調整する取引形態が考えられている。−以上、下水道新聞による。

 東京湾や瀬戸内海などは「閉鎖性水域」として、CODに関して総量規制が実施されている。公共用水域の水質保全を目的として、総汚濁負荷量を調整しようというものだ。この調整方法に関する話題である。
 下水の高度処理は用地問題などのため合理的に進めにくい面もあるので、汚濁負荷の枠取引というのは一見合理的に見える。しかし公共事業として求められているものは金銭による枠売買ではなくもっと高邁な理想ではないのか。さらに、下水処理場の処理水が上水道の水源となっているような現状では、事業体間のもっときめ細かな連携が必要だ。枠取引の思想は、整備しやすいところだけ整備すればよいという安易な発想を招きかねない。

2002年11月5日(火) タクシー実車率過去最低の42%−4日付け日経朝刊記事より
 2001年度実車率(総走行距離のうち乗客を乗せて走った割合)は前年度より0.5%減少し42.7%と過去最低。売り上げは前年実績を下回り4万3千円程度。実車率の最低は沖縄の31.3%、ついで北海道34.5%、熊本、青森と続く。東京では乗車率44.3%、平均営業収入は51、348円。2月の改正道路運送法施行で新規参入が規制緩和された。利用者が低迷する中、増車の動きが広がっている。−以上日経による。

 大阪で聞いた話。三菱タクシーは台数が少ないが以前から料金が安く初乗り550円、迎車料を取らない。業界ではアウトサイダーで、カンキョウの社長が三菱の社長を殴ったとか言う話も。ところが一転、カンキョウの運賃はこの夏からメータ料金で5000円を超える額は半額となり、今や東京や名古屋へゆく客もたまにあるそうだ。運転手の質が悪く道を知らないのが多いが料金が安いのは魅力。長距離の客がカンキョウにシフトしたため、個人タクシーなど他の業者も一斉に陸運局に値下げを申請した。しかし陸運局から経営計画書を要求されたりして半年以上放置されているとのこと。「カンキョウは陸運とツルんでいる」そうだ。以上は複数の運転手の話だが、タクシー業界は競争心が剥きだしでこれは良いことだ。陸運局が台数と料金の許認可権を握っているのが問題。全く自由にしても利用者が不利益を被るとは思えない。料金だけでなく知恵を絞って多様なサービスを行えば全体として客は増えるはずだ。みんな新しいサービスに知恵を絞るのだろうなあ。ちなみに古典的サービス: おしぼり、ティッシュ、文字ニュース、テレビ、車載電話、クレジットが使える、あんま機、ワゴン車、高級車、制服、飲み物販売、ガイド。最近のサービス: 禁煙車、車椅子対応、プリウス、介護保険による病院送迎サービス、GIS搭載。
 高齢化社会を迎えて、ドアトゥードアのサービスは成長産業の筈。都市部では自家用車を持たない層がもっとリッチなショーファードリブンシステムを待ちかねている。もしとても良いプランが有れば「ビジネスモデル特許」を申請しておくこと。

2002年11月5日(火) 平成の大合併−4日付日経朝刊記事より
 全国3217市町村を千程度に集約する政府の「平成の大合併」構想が滞っている。財政優遇措置を柱とする政府の誘導で合併協議に加わる市町村は増えたが中央主導の再編には反発が出ており地域間の対立も表面化した。現時点で減少が見込める自治体の一は目標の5分の1以下。首長や議員などの反対が目立つ。
 合併の遅れに経済界や中央政界はいらだちを募らせている。全国経済同友会の主要メンバーで構成する地方行政改革推進会議(小林陽太郎議長)は10月2日、人口10万人を標準的な市の要件とし、要件を満たさない規模の小さい自治体は業務を基礎的な生活行政に限定することを提言した。提言では地方交付税と補助金の廃止を提唱しており、その後小規模自治体が従来通り事業を進めるのは無理と断じている。日本経団連も市町村を千程度に集約すべきで、自立と財政基盤の強化が不可欠としている。政界は保守三党は基本的に推進の立場。自由党は全国を300程度の市に再編と踏み込んだ。知事には法定協議会の設置勧告権があり自民党内ではその行使を求める声が強まっているが実際の勧告例はない。
 注)法定協議会: 市町村合併特例法に基づき、合併を検討する市町村が参加して新しい自治体の基本計画などを話し合う組織。地方議員や首長、職員、学識経験者らで構成する。任意の協議会や研究会と異なり、合併に向けた新事業を手がける際、合併特例債の活用などで財政支援を受けられる。総務省は協議会設置から合併実現までの目安を22ヶ月と設定している。従来は住民が協議会設置を求めても地方議会が否決するケースがあったため、総務省は今年3月に同法を改正し、協議会設置の賛否を住民投票で問う仕組みを導入した。−以上日経朝刊による。

 合併とは、国が補助金と地方交付税で地方自治を支配しあげく195兆円という借金を背負わせた結果であることは違いない。しかし地方の自立のためには一定規模が必要であることも間違いない。地域の文化を守れと言う反論があるが合併して無くなるような文化は単なる制度とみなせる。小さいほど癒着やなれ合いもある。それにしても昔流行ったが「地方自治とは何か」という問いの答えは?

2002年11月4日(月) 電子政府ムダだらけ−4日朝日新聞朝刊より
 政府のIT(情報技術)戦略の目玉として始まった「電子政府」が税金の無駄遣いと批判されている。政府文書の電子化などの事業は、省庁の担当者の知識不足からシステムの開発業者に割高な契約を強いられ、縦割りの弊害で重複予算も目立つ。理念や目的をはっきりさせず、予算を大判振る舞いしたツケが回った形だ。政府は1日、各省庁の責任者の会議を立ち上げ、無駄の排除に乗り出した。
 00年7月予算額5億5千万円の実験事業に3社が応札した。NTTデータが1万円の札を入れ、アンダーセンコンサルティングの9万7千円、沖電気工業の1億7千万円に勝った。その後3回の入札はいずれもNTTデータがとった。2回目の設計は9億8千万円で応札。その後は入札をしても競争相手が現れず、3回目の入札は61億円、4回目の機器の借り入れは月額2億7千万円(一時金7億円余)で契約した。政府や業界関係者によると「最初は赤字でもいったん参入すれば自社に有利なシステムを構築しその後の契約を独占しやすくなる」という。省庁の担当者はITの知識が少なく、企画段階から業者に頼らざるを得ないからだ。業者におんぶにだっこが実態という。
 経済産業省によると政府と地方自治体による01年度の情報システム発注額2兆2千億円のうち、6割はNTT、富士通、日立、NECと関連グループが押さえた。NTTデータの受注した事業の下請けにNECやIBMが入るなど、大手同志で仕事を分け合う例もある。中小やベンチャー企業は技術力があっても、大手の安値競争や人海戦術に太刀打ちできない。健全な競争がなければ、「IT立国」も掛け声倒れに終わりかねない。−以上朝日新聞より。

 情報システムの構築費用は結局は人手の大きさできまる。データベースの項目数や入出力装置の種類、作成する画面や帳票の枚数により、概略何人日要するかを見積る。データ入力(帳票のデジタル化)は部分的に実行してみれば工数がわかる。さらに試験や修正工数を見込み、打ち合わせや出張の費用を加え、最後に経費と利益を乗せると見積金額となる。
 公共事業の情報システムは、発注の際に「何をどう作るか」という仕様が明確でない。そしてプログラムがあらかた完成したころに「ああしろ、こうしろ」という追加要望が続出する。業者は何度も作り直すことが当然のように繰り返されているので、作業量をかなり多めに見積もる。情報化は人員配置の転換や組織の改編を伴うが、官はそれを望まない。書類や文書の書式や承認ルーチンを考え直すことすらしない。そのため情報化には費用がかかるが効果が少ない。さらに、記事のような官の管理能力不足という問題もあるのだ。

 官が大規模システムを効率的に作成する方法は次のようである。大規模システムを縦横に分断して別業者に委託しかつ、相互に監理させる、という方法である。システムの汎用性を高め、単位システムの機能を明確にし、業者の適正な競争を維持することができる。
 まず少数のチームで、官の業務の概略を把握し官の組織と業務変革を含めて「システムの要求定義」を作成する。この業者は官から見て安全のために大手コンサルタント業者の少数精鋭のチームが適している。官の責任者と協議をして官の意向に添ってシステムの基本機能とシステム化の範囲を明確にする。
 次に、「システムの基本仕様」作成を別業者に委託する。ここで入出力仕様を完全に押さえる。この業務は「システムの要求定義」の委託業者により監理される。データ化業務はサンプリング作業を実行し工数を把握する。プログラム作成作業を切り分け難易度と工数を査定する。
 最終的なシステム構築やデータ化は中堅以下の業者に切り分けて発注する。この委託は「システムの基本仕様」を作成した業者が監理する。

 例えば、地方自治体の基本的な事務処理は同一である。つまり事務系の業務は文書さえ統一すればデータ量の違いはあっても処理の違いはない。従って基本システムは国が品揃えすればよい。データベースの汎用性を十分に高めておけば、自治体独自のサービスが必要な場合はその部分だけを開発すればよい。いまだに国がこれをやらないのは犯罪ではなかろうか。事務処理では大規模なシステムといってもデータは多いが処理は単純である。あるいは、だれでも簡単に間違いのないシステムが作れるような新たなツールが提供されるほうが先にやって来るのかもしれない。
END