「九死に一生を得る」、「生死の境目」。 共に命に関わる言葉である。 自分の命の終りと言うものは当たり前の事だが誰も知る事の出来ない、また誰もが知りたい要素の1つである。 自分の命をすくう方法はいったい何か・・・?? 運? 実力? 行動力? いろいろな要因があるけれど、今回の出来事では「行動」だったのだ。 西暦2000年1月19日の午後7時半頃だったと思う。 私はその日、職場の人総勢8名と上越国際スキー場にまでスキーに出かけていた。 8人中5人は「先発隊」として午前9時頃から滑っていたので午後6時ぐらいに引き上げ、残りの「後発隊」はナイターを楽しんでいた。 夕食をサービスエリアで済ませている時。 「KAMIU、終電に間に合うの?」 そんな発言からサービスエリア以降のメンバーの振り分けを考えていた。 ほとんどのメンバーが横浜方面に住んでいるので、東京に住んでいる私は横浜駅で別れても時間的に電車が無くなりそうだったからだ。 そこでATが「自宅近くにまで送ってやる」と言ってくれた。 車は2台。 ATの車にATと私が、TBさんの車にTBさん、HI、NMと振り分けが決まり、私らはそのサービスエリアから別行動になった。 サービスエリアを出たあと、TBさんの車にちょっとしたハプニングがあった事以外、車は順調にすすみ、関越自動車道を東京へと快適に走っていた。 と、そんな車の進行を妨害するべく事故を知らせる看板が飛び込んで来る。 「この先2km、事故により渋滞」 「事故で渋滞ぃ〜?」(T_T) くら〜い雰囲気の中、しばらく走っていると夜の高速道路の形を表すかのように赤いテールランプの長ーい行列が見えるようになった。 最後尾に近付いたATはドライバーの常識である「ここが最後尾だよー」とハザードランプを点灯させつつ、私達は3車線ある道路の真ん中の車線の最後尾に停止した。 「KAMIU、左車線どう? 空いてる?」 「ん〜?? 空いてはいないけど・・・少し前に最後尾が見えるなぁ・・・」 渋滞の中、少しでも前に出たいと思うのは人間の当然の考えである。 私達は2人して左右の車線の様子をみていたのだが、 「ん・・・まあいいか、このままでも」 というATの一言でその場に落ち着く事になった。 3車線ある高速道路の真ん中の車線、最後尾に・・・。 「キキキキキキーーーー!!!!」 刹那、ほんの数秒後の出来事だった。 突然の音に右車線へと視線を移動させたその時。 乗っていた車の右隣は白煙に覆われていたのだ! しかもその中を1台の車がものすごい勢いで移動している。 ロックされたタイヤから吹き出る白煙・・・慣性の法則を打ち消す事が出来なかったその車はとても「止まっている車に近付く速度」とは思えないスピードで消えていったのだ。 そして・・・「ドンッ!」という大きく嫌な音が聞こえ辺りは静かになる。 「ばっかやろうっ!! スピードなんて出してんじゃねえよっ!!」 ATの一括する声。 事故で止まっていた私達の目の前で新たなる事故が発生した。 合計5台の玉突き衝突。 車線変更をして事故現場の横を通り過ぎていく時に、どれほどすごい事故だったのかが分かった。 飛び込んできた車は私達の3台前に止まっていた車の右前方と、隣の車線に止まっていた車の左後方を突き飛ばし、その前方に止まっていた車へと突っ込んでいったのだ。 衝突をもろに受けた車はその衝突の威力で前方の車をさらに突き飛ばしていた。 突っ込んだ車のフロントはペシャンコに潰れて原形をとどめていなかったし、衝突された車の後ろ部分もかなり潰れていた。 すでに衝突事故に巻き込まれたドライバーが全員集まり何やら話をしている。 が、まさしく衝突してきたドライバーは「大バカ野郎」としか言い様がない。 渋滞の情報はすでに高速道路上の掲示板に出ていたし、ほとんどの車は止まっていた、さらに3車線とも最後尾の車はハザードランプを点灯させている・・・。 この追突してきたドライバーが全額負担するのは、まぁ、当たり前の事だろう。 本来の事故現場の隣を通り過ぎ、以前の走りを取り戻した車の中で、私とATはいろいろと話をしていた。 「もし、車線変更していたら・・・」 「もし、もう少し早く渋滞の中に入っていたら・・・」 そう、あの時に空いていると言う理由で右車線に入っていたら完全に私達の車も巻き添えを食らっていた。 それに僅か3台とはいえ、それらの車がなかった時も同様・・・。 新たな事故が起きたばっかりだと言うのに、時速110キロほどの早さで走っている私達の車を、右隣の追い越し車線をかっ飛ばして追い抜いていく車が後をたたなかった。 「何を考えているんだろう?」 私の頭の中にはそんな疑問しか浮かんでこない。 よく「自分さえちゃんと注意していれば事故は起こさないよ」と言う言葉を聞くし、私も少なからずそう思っていた事がある。 だが、今回目の前で起きた衝撃的な出来事はそんな考えをもろくも打ち崩す事となり「巻き添え事故」の存在をあらためて実感する事になった。 「ん・・・まあいいか、このままでも」 この何気ない一言が私達の命をすくう全てのキーワードだったのだ。 |