「空」
出演協力    りかさん


りか
「・・・・・・・・・・・」

コード
「・・・・・・・・・・・」

りか
「・・・・・・・・はぁぁ」

コード
「気持ちいいよねぇ・・・」

りか
「うん♪ あったかくって、草の匂いもいっぱい・・・」


旅の合間のちょっとしたひととき。
2人は景色のいい高原で、何も考える事なくどこまでも続く空を見つめていました。
ぽかぽかと暖かいお日様。
駆け抜けて行く涼しいそよ風。
お花からただよう甘〜い匂い。
それらがときおり感じるまどろみをさらに心地よくさせ、まぶたがゆっくりゆっくりと合
わさっていきます。

りか
「すぅ・・・・すぅ・・・・」

コード
「んんっ・・・・・」


楽しい夢の時間の始まり。
辺りは眠りを邪魔しないように静かになります。
虫達はその足音をたてるのを止め、よそ風は撫でるように優しくふき、草はぐっすり眠れ
るように柔らかく、空を流れる雲もその歩みを遅らせました・・・。
ゆっくりとした時間が流れ、疲れた2人を癒していきます。

2人で始めた冒険。
自分達の知らない世界を見つける旅。
とても危険で、恐く、不安な旅。
自分達を守ってくれる家族や仲間はいないし、ご飯だっていつも食べられるわけではあり
ません。
けれど、とても大切なモノを2人はたくさんたくさん手に入れてきました。

「ピィ〜〜〜・・・・・・」

コード
「・・・・!!」

りか
「んんっ・・・」


静かな時を壊すように、遠くから鳴き声が聞こえて2人は目を覚ましました。

りか
「なに? 今の声・・・」

コード
「きっと、あの鳥だよ・・・」




コードに言われてりかが見上げると、はるか上空を2羽の鳥が飛んでいました。
気持ちよさそうにその翼をいっぱいに広げて大きく円を描きながら・・・。

「ピィ〜〜〜・・・・」

コード
「ほら、ね?」

りか
「なんだぁ・・・びっくりしたぁ・・・」

コード
「あんなに高く飛んでるね」

りか
「気持ちよさそう・・・あんなに高いところから見る景色ってすごいんだろうね。私も飛
べたらなぁ・・・」


飛ぶ事のできない2人にとって大空は夢以上に遠い世界でした。
お日様やお月様やお星様、そして鳥だけが見る事のできる場所。
「いつか見てみたい・・・」そんな強い思いを込めながら、ゆっくりと飛んでいる鳥を見
つめ続けました。

コード
「・・・いこっか?」

りか
「うん」


しばらくして2人はまた歩き始めました。
まだ見ぬ世界を探しに。


** ** ** ** ** ** ** ** ** **  ** ** **


ザッパ〜ン!!
ザブ〜ン!!


りか
「ねえ・・・泳いで・・・・・・いけ・・・る?」

コード
「・・・・・・・・・・無理・・・だね」


足元に広がる海は、今日に限って荒れていました。
まるで2人を困らせるかのように・・・。
その海の沖・・・遠く遠く離れた場所に目指している島があります。
ペンギンのりかにはこの程度の海を泳ぐ事は問題ありませんが、犬のコードにはとても無
理。
仮に泳いだとしても途中で疲れてしまい、泳げなくなるのは2人・・・特にコード自身に
は分かりました。

りか
「どうする、こんなに荒れてたら泳げないし・・・戻ろうか?」


引き返す事も考えましたがお日様はすでに西の空へと傾きはじめていて、引き返している
途中で夜になるのは明らか。
夜の森は何が待ち受けているか分かりません。
道具も安全な場所も何もない今、森の中で夜をむかえるのはとても危険。
暗い森の中で夜をむかえる事は、自分自信を危険な目にあわせるだけ。
途方に暮れる2人の前に、突如大きな鳥が1羽舞い降りてきました。


「こんにちは」

りか
「きゃっ!」

コード
「うわぁぁぁ」


いきなり現われた鳥にびっくりした2人は一目散に近くの茂みの中に隠れました。
その勢いに驚いた鳥は、どうする事もできず2人の姿を見失いました。


「ま、待ってよぉ・・・どこにいるの?」


りかとコードは茂みの中でしばらく様子を見ていましたが、襲ってくる様子もなく困って
いるその鳥に話しかけてみることにしました。

りか
「あ、あなた誰?」


「!? ああ、よかった・・・まだ居てくれたんだね。 驚かせてごめんね」

コード
「僕らを食べようったって無駄だぞっ!!」


「そんな事しないよ・・・君たち、さっき高原でお昼寝してただろ? 僕、その時上を飛
んでいたんだ」

コード
「・・・? あの時2羽いた鳥かな?」


「君たちがこんな所に居るから、どうしたのかなって気になって降りてきたんだ。ここは
危ないよ・・・森の中には僕らを食べようとするヤツもいるし・・・」


襲ってくる気配の全くない鳥に少し安心した2人は、襲ってこない事を確認すると茂みの
中から姿を現わしました。
りかとコードが姿を見せると鳥は喜びながら再び問いかけ、2人は事情を話しました。

りか
「・・・というわけなの」

コード
「どうしていいか悩んでいたんだ」


「ふぅん・・・・・・あの島まで行きたいんだね。あそこだったらそんなに遠くないし、
僕がのせて行ってあげるよ」

コード
「えっ、ほんと?」

りか
「そんな事できるの?」


「うん。君たち2人ぐらいなら大丈夫だよ。さ、僕の背中にのって」


鳥はその場で姿勢を低くするとうながすように背中を向けました。
りかとコードが遠慮がちにのると鳥はその翼を大きく広げて・・・。


「さあ、いくよ!! しっかり掴まってて」

りか
「きゃあっ!」

コード
「うわっ・・・」


大きく羽ばたくと同時に「ふわっ」と浮き上がる感触。
そして今までいた地面があっという間に離れ、眼下の海がすごい勢いで流れて行きます。
潮風が顔に当たり、潮の匂いでいっぱいになりました。

コード
「飛んでるよっ! 僕たち空を飛んでるんだっ!!」

りか
「うんっ。 すごいね、さっきの所がもうあんなに小さくなって・・・。 風が気持ちい
い♪」

コード
「空・・・かぁ・・・」


「もうちょっとスピードを出すからねっ。落っこちないで」

コード
「うんっ、行け行けー!」

りか
「やっほ〜〜!」


夢よりも遠い願いがかなった瞬間・・・。
大きな翼を手に入れて、2人の冒険はさらに大きくなりました。
後悔なのか・・・、それとも満足なのか。
この先に何があるのかは誰にも分かりません。

けれど、たくさんの夢をもって冒険を続ける2人には・・・。
きっと・・・。