「天馬」


きつね
「ペンギンくんあけましておめでとう!」

ペンギン
「おめでとうきつねくん・・・今年もまたよろしくね」




新しい年が始まりました。
1年が移り変わる瞬間には、どれだけの人達がワクワクしたでしょう?
どんな年になるのかな?
いい事でいっぱいの年になるといいなっ♪
今年こそは××できるといいなっ♪
膨らむ夢や希望はい〜っぱいっ!!


不安に包まれた1年だったから・・・良くなるように願います。
楽しい1年だったから・・・もっと素敵な事が起きるように願います。
だって、みんなが笑顔になるのが嬉しいから。
にこにこ顔を見ていると、にこにこ顔が広がっていくから。
泣き虫もどこかにいっちゃうから・・・。
プンプン顔よりにこにこ顔。
みんなが一番望んでいる物。



ペンギン
「ねぇ、きつねくん・・・翼の生えた馬がいるって知ってる?」

きつね
「えっ? 翼の生えた馬・・・ペガサスの事でしょ? 知ってるよ」

ペンギン
「ペガサスに乗って空のお散歩ができたら良いなって思わない?」

きつね
「うん! きっとすごく気持ちがいいと思うなぁ・・・山の上だって雲の上だってどこにでも行けるもんねっ」

ペンギン
「僕は・・・ペガサスに乗れたら、お星様をとりに行きたいなぁ」

きつね
「お星様を?」

ペンギン
「うん♪ それでね、ネックレスを造ってみたいな・・・キラキラ光ってすごく綺麗だと思うな」

きつね
「お星様かぁ・・・僕はお月様に乗るんだっ。それでね、お月様がどこに行くか確かめてみるっ」

ペンギン
「ふ〜ん・・・お日様は?」

きつね
「お日様は・・・おしり熱そうだからやめとく」




楽しい楽しい夢の世界のお話。
でも、止まる事なくどんどん2人の会話は弾んでいきます。
そう、遠くにゆらめく「あるモノ」に気がつかないまま・・・。



きつね
「・・・にも行ってみたいんだぁ」

ペンギン
「そうだよねぇ・・・遠い遠い知らない場所にも行ってみたいよね」

きつね
「うん・・・」

ペンギン
「ペガサス、ホントにいたらいいのにね・・・」

きつね
「お話の中の動物だもんねぇ・・・」




「ふぅ」と2人がちょっとがっかりしたその時でした。




ヒヒヒーン!!




ペンギン
「!?」

きつね
「な、何? あぁー! ぺ、ペンギンくん見てっ」




お日様のように真ん丸になった2人のおっきな目。
それもそのはず・・・なんと2人の目の前には優雅に空を飛んでいるペガサスの姿が・・・。



ペンギン
「・・・・・・、いた・・・」

きつね
「ねぇっ、見てる? 見えてるよね? ねっ? ペガサスだよね?」




まるで夢を見ているかのようにぼんやりとしたペガサスの姿。
でも、耳をすませば翼の羽ばたきも息づかいも聞こえてきます。




ヒヒーン!!




優しい瞳で2人を見つめたペガサスは力強く、でもとても美しく鳴くとその場をあとにしました。
きつねくんとペンギンくんは、まるで凍ったように固まっています。
「信じられない!」・・・驚きでいっぱいでした。
「本当にいたんだ!」・・・喜びでいっぱいでした。
ペガサスの姿が消えるまでの間、とても長いようで短い時間・・・2人は見つめ続けていました。
ようやっと言葉が出たのは、姿が完全に消えてしばらくしてから。



ペンギン
「いた・・・よね?」

きつね
「うん・・・いた・・・見た・・・」

ペンギン
「うわぁ〜いっ!! 本当にいたんだっ!! ペガサスに会えたぁ!!」

きつね
「お話じゃなかった!! ウソじゃなかった!! ヤッホぅ!」




静かな山の中に2人の声が響き渡りました。
2人だけが体験できた、不思議な不思議な出来事。
話をしたら誰も信じてもらえないかもしれません。
ひょっとしたら「ウソつきっ」て言われちゃうかも。


けれど、何があっても真実はたった1つ。
それだけを信じて前に進んでいきましょう。
馬のように、力強く大地を蹴って。
どこまでもまっすぐ・・・。


だって、体験した事はまぎれもない事実だから♪