「新世紀」


ヘビ(右)
「兄ちゃん、ずいぶん登ってきちゃったよ・・・」

ヘビ(左)
「しょうがないさ・・・ここが1番きれいに見える場所なんだから」



2匹のヘビがKAMIU's Worldにある名もない山の頂上近くにまでやってきました。
1月1日のまだ太陽も顔を出さない時間に・・・。
お互いに気づかいながらの登山。
ふもとを出たのは夕方頃。
ちょうど真っ赤な夕焼けが見えていました。
西の空だけでなく、山も森も湖もすべてを真っ赤に染めあげる夕日。
東の空から出てくる朝日をその夕日に重ねて、2人は暗い夜道の中をここまでやってきました。


弟ヘビ
「ねぇ、兄ちゃん・・・今年は僕たちヘビの年なんだってね」

お兄ちゃんヘビ
「ああ、そうだよ」

弟ヘビ
「みんな喜んでくれるのかなぁ? 嫌な年にならないかなぁ?」

お兄ちゃんヘビ
「大丈夫さっ! ウサギさん達の時だってみんな元気だったんだからさっ」

弟ヘビ
「うん・・・そうだよねっ、みんな喜んでくれるよねっ」



動物達は自分の干支になると物凄く不安でいっぱいになります。
みんなが喜んでくれる1年になるのかな?
みんなが元気でいられる1年になるのかな?
みんなが悲しまない1年になるといいな。


別に自分の干支になったからといって、特別に何かをするわけではないんです。
きゅうに魔法が使えるようになって病気を防いだり、世の中のために一生懸命になる事もありません。
ごく普通・・・いつも通りに生活をしていくだけ。
朝になればわかります。
「おはようっ」
いつもと変わらない挨拶、いつもと変わらない笑顔で1日がはじまります。


お兄ちゃんヘビ
「ほらっ、お日さまが出てきたぞっ!」



東の空の一番低い場所からゆっくりと朝が広がっていきました。
ひとすじの光が見え始めると、その光はゆっくりとゆっくりと大きく膨らんでいきます。
朝日・・・。
21世紀の1番最初の1日のはじまり。


弟ヘビ
「兄ちゃん・・・綺麗だねぇ・・・」

お兄ちゃんヘビ
「そうだろ? ・・・・・・明けましておめでとうっ」

弟ヘビ
「おめでとう、兄ちゃん・・・」



100年に一度変わる時間・・・「世紀」。
でも、動物達の間では特に気にはしていません。
毎日が大切な日だから。
毎日が想い出になっていくから。


ヘビ君の体のように長い1年がまたはじまります。
過ぎてしまえばあっという間だったと感じてしまう、長い長い1年が・・・。
いろんな出来事・・・楽しい事も不安な事もいっぱいあるでしょう。
そんな時、朝日を追うように顔を上げていきましょう。
今、日の出を見ているこの兄弟のように♪