1つ山をこえた場所に住んでいる叔父さんの所までクリスマス用のワインを届けに行ったぶた君。 毎年毎年、続けられているこのおつかいを、叔父さんは楽しみに待っていてくれました。 「今年も、よく来てくれたね・・・」 そう言って、しわだらけの大きな手がぶた君の頭を撫でてくれました。 険しい山道を歩いてきた疲れが、ゆっくりとゆっくりと和らいでいく時・・・。 叔父さんの顔を見上げるぶた君の顔も、笑顔でいっぱいに。 会えなかった時間を埋めるように続いた楽しいおしゃべり。 暖かいスープに、柔らかい暖炉のぬくもり・・・。 でも、楽しい時間はいつまでも続きません。 心配に見守る叔父さんに元気よく手をふって、ぶた君の足は家へと向かいました。 「おつかいが終わってよかったぁ・・・早く帰ろっと」 ふだん通る事もある山道。 途中にある川や谷、岩場に草原に森林・・・見なれたものもあります。 今年も、今までと何も変わっていませんでした。 ゆっくりゆっくりと進んでいる大自然の時間・・・。 でも、その中に住んでいる動物達にとってはまるで時間が止まっているように感じます。 ビュウウウゥゥゥゥゥ・・・・。 いつの頃からか、冷たい風が駆け抜けていくようになっていました。 木々の中には、身にまとっていたたくさんの葉を無くしてしまっているものもあります。 緑を失って、固く変わってしまった葉。 確実な、そしてハッキリと分かる「冬」のおとずれ。 お友達の中には、春がくるまで長い長い眠りにつく子も。 暖かくにぎやかな時間から、冷たく寂しい時間へ。 誰も変える事のできない、自然の出来事。 「はああぁぁ〜〜、寒いなぁ・・・急がなくちゃ」 冷たくなった2つの手のひらに、暖かい息を。 待っているお母さんに心配させまいと、ぶた君は少し速めに歩き出します。 いつしか、空いっぱいに薄暗い雲が敷きつめられていました。 どんどん寒さが、そして冷たい風も強くなっていきます。 吐く息がうっすらと白みを帯びてきたその時・・・。 ビュウウウウウゥゥ!!! ぶた君を襲った突風。 大切な帽子が飛ばされないように、しっかりと押さえます。 小さな身体が飛ばされないように、その場にしゃがみ込みます。 「・・・・・・あれ?」 まるで、気のせいだったかのように突風は止み、辺りは静かになりました。 静寂・・・無音の世界。 ぶた君がたった独り、この世界にいるような感じ。 そんなふうにも思えるような、静寂。 その時・・・。 「んっ?」 目の前に落ちる、小さな白い固まり。 地面に落ちると、すぐに消えてしまいました。 不思議に思ったぶた君が顔を上げてみると・・・。 「わあぁ・・・雪だぁ」 |
寂しい世界に訪れた、白い白い旅人達。 灰色の雲の中から生まれる、真っ白な結晶・・・。 冷たく寂しい時間が、白く静かな時間に変わりました。 「いっぱい積もるといいなぁ・・・そしたら、雪合戦して、雪だるま作って、それから、それから・・・」 今この時、空からの送り物を見て、同じ思いをする子がどれだけいる事でしょう? 冷たい世界を、楽しい世界に変えてしまう、大自然の魔法。 夜の間に降り積もった雪で、明日の朝は銀色に輝く大地が待っている事でしょう。 その時、いくつ出来るのでしょうか。 純粋な純粋な笑顔が。 |