原案協力 むらたしほさん 出演協力 フリスキー、ノーティー、ギン |
ぎん 「ふぇ〜ん、パパァ・・・ママァ・・・恐いよぉ!! おばけが・・・おばけがぁ・・・」 真っ暗やみの中、一匹の子猫が大きな涙をポロポロと流しながら一生懸命に走ってる。 この子の名前は「ぎん」。 KAMIU's Worldに住むフリスキーとノーティーの間にできた可愛い可愛い一人息子。 そのぎんちゃんの少し後ろ・・・ぎんちゃんから見たら山のように大きな2匹のお化けが、 「ドスンドスン」と大きな音をたてて追いかけている。 目玉お化け 「泣き虫がいるぞぉ!! へへへへっ・・・まてぇ〜〜っ!」 がいこつ 「美味しそうなやつだなぁ・・・頭から食べてやるぅ!」 ぎん 「パパァ・・・ママァ・・・どこ? いやぁ〜〜っ! パパァ、ママァ!! 助けてぇー!!」 ![]() ぎんちゃんを捕まえようと、大きな手が何度も何度も伸びてきます。 でも、一生懸命逃げるぎんちゃんには届かずあと少しのところで空を切りました。 しかし・・・。 目玉お化け 「すばしっこいチビめ・・・だがっ!!」 「どす〜んっ!!」と大きな地響き。 目玉お化けの巨体が宙を飛びぎんちゃんを両手で捕まえてしまったのです。 ぎんちゃんのちっちゃな歯が、爪が、何度もお化けの手にくい込みましたが、お化けの手は びくともせず、ぎんちゃんは逃げられません。 2匹のお化けが震えるぎんちゃんを見つめました。 目玉お化け 「げっへっへっ・・・本当にうまそうなチビだ。どうやって食おうか?」 がいこつ 「おい、ちゃんとオレの分も残してくれよ」 ぎん 「ひぐっ・・・ひっく、ひっく、パパァ・・ママァ・・・ひっく、ひっく、おばけに、おば けに食べられちゃうよぉ・・・ふぇ、ふぇ〜ん!!」 がいこつ 「泣いたってダメなんだよっ! 泣き虫は頭からガブッだ」 目玉お化け 「いただきまーす!」 ぎん 「いやーぁ!! パパッ!! ママッ!!」 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ぎん 「パパ・・・ママ・・・」 ノーティー 「ぎん・・・・ぎん・・・・」 ぎん 「パパ・・・? ママ?」 ちっちゃな目がゆっくりと開きました。 眩しい光が差し込み、ぎんちゃんの目にいつもの見なれた家の景色が。 その中には心配そうに覗き込んでいるノーティーとフリスキーの姿もありました。 フリスキー 「どうした、ぎん? ずいぶんうなされてたぞ」 ![]() ノーティー 「恐い夢でも見てたのね・・・おめめが真っ赤よ」 ノーティーの暖かい手がぎんちゃんの頭を優しく撫でます。 ぎんちゃんは涙の溜まった目をゴシゴシと擦りながら家の中を見回し、そして安心しました。 もう大きなお化けはどこにもいません、恐い夢はたった今終わったばかり。 フリスキー 「さあ、起きて出ておいで。KAMIUが遊びに来てるぞ」 ぎん 「みう? みうが来てるの?」 まだまだ「KAMIU」の発音ができずどうしても「みう」に。 フリスキーにだっこしてもらい、さくの中から出たぎんちゃんは先ほどの夢の中のお化けのよ うに、訪れたKAMIUに向かって駆け出すと「ぴょ〜ん」と飛びつきました。 もうさっきまでの恐い夢の記憶はどこにもありません。 ![]() KAMIU 「おっとっとっ・・・」 ぎん 「みう〜!!」 KAMIU 「はっはっ、ぎん、今日もパパとママの言うことを聞いていい子にしてたか?」 ぎん 「うんっ! ぎんたんね、今日も良い子してたよ」 KAMIU 「そうか・・・よし、良い子にしてたご褒美だぞー。美味しいケーキを作ってきたんだ」 ぎん 「みう〜」 ぎんちゃんは嬉しくってKAMIUにスリスリと頬擦り・・。 ぎん 「!? みう〜、しほたんは? しほたんどこ?」 いつも優しく微笑みかけ、遊んでくれるしほの姿が見えずきょろきょろとKAMIUの周りを 見回すぎんちゃん。 今日はKAMIUと大好きなしほが遊びにくると聞いていたぎんちゃん、本当なら今、KAM IUの隣に立っていて抱きかかえてくれるはず・・・。 ぎん 「ねぇ、しほたんは? どこぉ〜」 KAMIU 「あのな、ぎん。しほさんは急に具合が悪くなってね、今病院にいるんだよ」 ぎん 「えーっ!!」 KAMIU 「それでな、『今日はぎんちゃんの所に行けなくてごめんね、すぐに病気をなおして遊びに行 くから、待っててね』ってこれを預かってきたんだ」 ぎん 「??」 KAMIUが取り出した物・・・それは真っ白なウサギの人形でした。 そのウサギを受け取り「じーっ」と見つめるぎんちゃん、ウサギの顔はまるで「元気出してね」 とでも言っているようです。 ぎん 「ぎんたんね、このウサギさん宝物にするっ!」 KAMIU 「そうだな。ぎんのその言葉を聞いたらしほさんも喜ぶぞ」 プレゼントをしっかりと抱き締めたぎんちゃんはKAMIUの前から走り出すといつもぎんち ゃんが入っている柵の中へ。 家の中で唯一のぎんちゃんだけが入ることの許されている聖域。 フリスキーとノーティーでさえ入ろうとするとぎんちゃんに怒られてしまうんです、「めーっ !!」って。 ![]() ぎん 「うさたん♪、うさたん・・・♪♪」 ノーティー 「まあ、ぎんったら・・・すっかりとお気に入りみたいね。さっ、KAMIUこっちに・・・」 ぎんちゃんの姿を見た3人はテーブルへ・・・ティータイムのはじまりです。 一方、ぎんちゃんはウサギの人形と夢中になって遊びはじめ、自分の事や両親の事、それに今 までにあった出来事などまるでお友達と会話しているみたいに話しかけました。 ウサギの人形もニコニコと楽しそうにぎんちゃんの話を聞いています。 楽しい幸せな時間がゆっくりと過ぎていきました・・・。 ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** 時計の長針がひと回りした頃・・・大人達は会話に花を咲かせていました。 まさに「雑談」、「井戸端会議」と言った言葉があう、たわいもない会話でしたが絶えず笑い 声が聞こえています。 一方ぎんちゃんの方は・・・。 ぎん 「それでね、ぎんたんね・・・!?」 ウサギの人形との楽しい会話。 ほんの刹那、ぎんちゃんの瞳にKAMIUの持ってきたケーキの箱が。 「美味しいケーキを作ってきたんだ」と言う言葉が頭の中でグルグルと回り出しました・・・ 時計の針はちょうど3時、おやつの時間。 ぎん 「うさたん、あれね、みうが持ってきたんだよ・・・・」 ![]() ぎんちゃんの目が一点を見つめたまま動かなくなりました。 お腹の虫が「ごはんくれー」と言いはじめ、「キューッ」とちっちゃな音がひとつ。 お口の中にはあまーいクリームの味とフワフワしたスポンジケーキの感触が蘇り、ジワーッと 唾が湧いてきました。 「ごくんっ」 ぎんちゃんのちっちゃな喉が動きます。 ぎん 「みうの・・・ケーキね、あまくってね・・・・それでね、それで・・・」 ぎんちゃんの体はゆっくりと、そして自然に動き出しました。 ケーキのある方へと一直線に。 今まで一緒に遊んでいたウサギはおいてけぼり・・・「待ってよー」と寂しそうにしています。 コツンッ・・・・おでこに柵が当たりぎんちゃんの行方を邪魔します。 時々乗り越えることもありますが、今はケーキのことだけが頭の中にあって「どいてっ!」と いう感情しか。 一言、「ママ、ケーキ」とでも言えばいいのに美味しいケーキをひとりじめしたいがために声 も出しません。 時間が過ぎていくにしたがってお腹の虫があばれまわり、ぎんちゃんをくいしんぼうに変身さ せます。 ぎん 「んー・・・・んしょ、んしょ・・・・」 目の前にある柵の間隔が頭の幅とほとんど一緒。 そう気がついた瞬間に、ぎんちゃんは柵を両手でしっかりと掴んで頭をぐりぐりと押し込みは じめました。 少しずつ・・・少しずつ・・・、ぎんちゃんの頭が出ていきます。 ほっぺたがちょっと痛いけど、ケーキの前ではどんなことも感じなくなります。 グニグニグニ・・・・・・・ポンッ!! ぎん 「にゃう♪」 ついに頭が抜け出ました。 さあ、後は体の番・・・・でも、 ぎん 「??? ふにゃ? んんーっ!」 肩の辺りがぶつかって押しても引いても通り抜けられません。 片手を柵の外に出したり、体を縦にしてみたり・・・いろんなことを試してみたけどけっきょ くだめ。 ぎん 「にゃ・・・だめかぁ。 !? あれ?」 頭を引き抜こうとしたけど・・・こんどは頭が抜けなくなっちゃいました。 力を入れるとほっぺの後ろの辺りがものすごく痛くなります。 もうケーキのことは頭の中から無くなり、「どうしよう、どうしよう」となんにも考えられな くなってしまいました。 「ずっとこのままになっちゃうんだ・・・」 そんな考えも頭の中に・・・。 ぎん 「とれない・・・・ひっく、とれないよぉ・・・ふぇ、ふえ〜んっ!!! パパァー!! マ マー!! 助けて・・・とれないよぉ〜、ひっく、ひっく・・・みう〜!! 助けてぇ・・・」 ![]() 突然のぎんちゃんの泣き声に3人が慌てて駆け寄ります。 ノーティー 「まあ、どうしたのぎん?」 KAMIU 「なにやってんだ、お前は・・・??」 フリスキー 「・・・・・・・まったく」 ぎん 「え〜んっ!! パパ、ママ、とれないのぉ・・・ふぇ〜ん・・・・」 とんでもない事になったぎんちゃん。 なんとか頭を抜く事はできましたが、ノーティーとフリスキーからはきつーいお説教を。 でも、ちゃんと「ごめんなさい」をしたおかげで無事、美味しいケーキを食べる事ができました。 |