図書館奇譚


ジャブジャブサーキット『図書館奇譚』☆☆☆☆

図書館を舞台にした本格ミステリー。とにかく伏線の張り巡らし方が見事。そして、そのすべてに答えを出してくれるのが心地よい。最近の芝居は、あえて答えを出さない芝居が多かったので、この素直な展開は新鮮でさえあった。

図書館の本に残されている筈のダイイングメッセージ、謎の女性、反感を買いやすい迷探偵、お約束の突然の停電、そしてどんでん返し。最後まで息つかせぬ展開でした。登場人物のキャラクターが面白く、推理ドラマに入る前の、図書館を巡るエピソードもあきさせない。

売れっ子作家に、司書を目指す男子学生、へんなホームレスのおじさん、几帳面な市職員、などなど。学生さんは、なんの説明もなく女性が演じていたのだけど、そのレトロな言葉づかいが、芝居に不思議な味を加えていた。

幕切れ、ひとり残された図書館の女性職員に、最後の伏線の結末がほの苦い。

劇場に持ち込んだ二千冊の本とか、突然動き出す原始人人形などの小道具の使い方も面白く「わくわく」できた芝居だった。

【追記】このお芝居は私も題名が気に入ってて、見ようかどうしようか迷っていたんですが思いきって見に行って本当に良かった芝居の一本です。学生時代に図書館好きだった人が後年劇作家になったらこういう作品を書きたいと思うだろーなー、ってかんじの清涼感が漂う舞台でした。

Rに補足しておきますと、この芝居には裏のストーリーとして、図書館の精霊のような存在が現れてきまして登場人物にいろいろヒントを与えたりする訳なんですが、その精霊が去っていく時に、ぱぁーっと本棚が二つに割れまして、その向こうに消えていくシーンがあるんですが、そこには木漏れ日に溢れた森が広がっているんです。劇中でも触れられていましたが、本は木で出来ているんだから、その中にいることは、森の中にいるのと同じだ、ということらしいんです。これはなかなか素敵な考え方だと思いましたね。云われてみると「本を探す」という行為も森の中をさまよっているのに似ている気がするし、本の分類分けの仕方も、よく樹木にたとえられるし。。。廃館間近の図書館が、ちょっと人間に何か云いたくて出てきたってな感じで、作者の心根が気持ちよかったです。


劇団ジャブジャブサーキット『図書館奇譚』☆☆☆☆
【作・演出】はせひろいち
【会場】シアターグリーン 【期間】94.11.17 〜 11.20

時かけ


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