わたしがこどもだったころ


MODE『わたしがこどもだったころ』☆☆☆

子供の遊びが延々と続くオープニング。見ていてつい、子供の頃を思い出させる演出。普通の人の普通の生活を、観客に引き写して考えさせようという狙いがよく分かる。日本の時代の流れとともに、市井の人々の生活を描いて秀逸だった。でも、原作で読みたいな、と思った。生活に重点が偏り過ぎた結果、人間そのものの描写が若干弱くなっているようなきがしたからだろう。役者は相変わらず上手い。演出は相変わらず押さえている。おさえて、しんとした感動を観客に与えようというのである。でも、この手法は、観客自身が十分成熟していて、創造力で欠けている部分を補えるのでなければ、単に、すかすかの空間と見え兼ねない、両刃の剣である、ともいえよう。

私にとっては、死んだ彼女が、生きている人間がどれほど、互いに見詰め合っていないか、どれほど時間の大切さを分かっていないか、を嘆くシーンに共感したのだが、芝居のクライマックスはそこではなく、夫が彼女の墓に黙って向き合うシーンに、雪がしんしんと降り積もる場面に置かれていた。ふってくる雪が、「固まり」で降ってきたから、だけではなく、なんとなく乗り切れない自分を感じていた。


【作】ソートン・ワイルダー、坂手洋二 【演出】松本修
【会場】スペース・ゼロ  【期間】02/18-20
【観劇日】2.20 14:00〜16:55

時かけ


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