ダブルアルバム


グループる・ばる『ダブルアルバム』☆☆☆☆

永井愛、絶好調です。(^_^) 芝居の構成力では、今、随一じゃないかしら。

登場人物は全部で三人。きっちりした性格の姉と、奔放な妹、人のいいおじさん(?)。ある日突然、姉が「私自殺するから。後のことはちゃんとしておいたからね」と宣言する。妹は動じず「ここで死ぬのは気持ち悪いからよしてね」と云う。このあたりから歯車の噛み具合がおかしくなり、かきまぜ器が見付かったら死ぬ、ということになる。それを探している最中に、いろいろと過去の事が思い出され、それまで蓄積していた、けれど隠していた様々な鬱屈が噴出しはじめる。あの時のあれは、実はこうだった。あの時、私はこう思っていた。本当は、こうなる筈だったのに‥‥。

現実の暮らしでも過去のそういうこと、ありますよね。それらが一度に爆発したら、耐えてゆけるでしょうか。現実には爆発することはないけど、ここは舞台の上。次々に連鎖反応を起こして、とめどなく掘り返されて行くのです。封じ込めた筈の過去の思い出が。互いに思いやっての心遣いであったから、たがが外れた時には、憎さが倍になってしまう。争う二人の一歩も引かない演技が効いています。

一歩間違えると陰惨な物語ですが、舞台上には終始笑いがあり、決して後味の悪いことはありません。兄弟って、どんな喧嘩しても、いつの間にか仲直りしてるじゃないですか。あれ、不思議ですよね。

もう究極の組み合わせと思えた、秋子=松金よね子 夏子=岡本麗 の組み合わせでしたが、田岡美也子さんも加え、日替わりでキャストが替わっていると聞いてびっくりしました。松金さんの出番は既に終了、最後の挨拶で、「北見さんは、今日も良かったけど、Dの組に一番力をいれているのよね。麗ちゃんも、Dが一番しっくりくるのよね」と売り込んでたのがおかしかったです。(^_^)

PS. あと、20年前の過去と現在をいききするセットも面白かった。家の柱組が、新しくて白いのと、古くなって黒ずんでいるのが、平行してあり、20年前の時は、白い梁にかかった風鈴に照明、現在の時は、黒い梁にかかった風鈴に照明をあてることで、時の経過をあらわす。時々、風鈴に風があたって、チリンと鳴るわけですが、すぐ近くの風鈴が微動だにしないのもいい。

私は普段、題名で見る芝居を決めるくせに、題名の意味についてはほとんど考えて いないという奴であります。で、あらためてこの題名を見てみました。 「ダブルアルバム」。。。確か、本編の中には「アルバム」は出てきませんでした よね。これはどういうことなのでしょうか? (初演にはでてきたのかな?)

で、出した結論は、「アルバム」とは「思い出」ではなかろうか、というものです。 共有していた思い出でも(アルバムは一つでも)、それにこめられた思い出は、人によって違った表情を見せる。だから「ダブル」アルバムなのかなぁ、と。 で、人によって思い出が異なるなら、演じる役者によっても思い出は異なるのでは ないか、そうか、だから今回、いろいろな組み合わせがあるのか! こうして、演出家の狙いに今頃気がついたというわけです。(^^;)


グループる・ばる『ダブルアルバム 改訂版』☆☆☆☆

【作】マスオメノス 【演出】永井愛
【出演】松金よね子、田岡美也子、岡本麗、北見敏之
【会場】THEATER/TOPS 【期間】1994.2.5 〜 2.18
【観劇】2.13
【問合せ】東京乾電池 03−3476−1495
     THEATER/TOPS03−3350−9696
※2/21 所沢公演あり
※東京公演の残る組合せは、秋子=田岡美也子 夏子=岡本麗、のみ。

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