キル


野田地図『キル』☆☆☆☆

少しだけ、野田さんの言葉を引用したいと思います。「これからの一年は充電じゃなくて、停電です」これはイギリスへいく前に野田さんが言った言葉だそうなのですが、不幸にして(?_?;)私は知りませんでした。でもその言葉がぴったり、という感じの公演だった。(本人も書いてるけど)

イギリスで何かを掴んで、それを舞台ですぱっと見せるのかと思っていたら、全然そんな事はなくて、「迷い」は「迷い」のままに、そのままを舞台で繰り広げてくれたような気がしています。行った時と少しも変わっていない。言葉遊びも相変わらずだし、わけがわからぬまま感動するのも「これこれ (^_^)」って感じ。舞台の転換とか全然すっきりしてなくて、これでもか、というくらいのこりまくり。いっけいさんは、舞台を裏から支えてくれていたし、鷲尾さんもちゃんとやってくれたし、晶紀さんは凄く可愛らしいし、西牟田さんは、やっぱり目だっているし、日本でハンプティダンプティが出来るのは深沢さんだけだし(註:この芝居でやっているわけではない)苅部さんもなかなかだし、小田さんは、気になるオヤジだし、堤さんは、おお「真夏の夜の夢」からこんなに成長したのねだし、新橋さんは、毬谷さんは将来こうなるのかなだし、みんなみんな良いのです。

ことほどさように何も変わってないのだけど、一年の時間は厳然と流れていたわけで、始まる前にこれほどわくわくしたのも、終わった後で寂しさに襲われたのも、久し振りだったし、何より、カーテンコールで拍手に包まれている野田さんを見たときには、あふれるものをどうすることもできなかったのでした。


野田地図 第一回公演 『キル』☆☆☆☆☆

【作・演出】野田秀樹
【美術】堀尾幸男  【照明】服部 基
【衣裳】内藤こづえ 【選曲・効果】高都幸男
【振付】謝 珠栄  【音楽演奏】東京中国歌舞団

【劇場】シアターコクーン 【観劇】1/11 19:02〜22:07
【席】XB15

東京公演:94年1月7日 〜 2月27日 シアターコクーン
大阪公演:94年3月4日 〜 3月13日 近鉄劇場
問合わせ:NODA・MAP TEL.5478−0771

時かけ



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