キャンドルは燃えているか


キャラメルボックス『キャンドルは燃えているか』☆☆

すでに、たくさんのRがアップされていることでもあり、時間物というのは、私にとっては永遠のテーマなので、今回はそのあたりに焦点を絞って感想?を書いてみます。若干、ストーリーにうんぬんかんぬんするかもしれませんが、大きな心で見つめてください(^^;)

今回の芝居を見て、成井さんの構成力は凄いと思いました。オープニングから、ラストまで、縦糸と横糸が絡まり合い、適当にお休みタイムもいれての、ノンストップで、観客を飽きさせない展開は素晴らしいです。上演時間の制約があったのかもしれませんが、これ以上はないほど刈り込まれた密度の濃い舞台だったと思います。

時間物としても、オープニングの、一年間の仕事の後、記憶を消去してしまう、というアイデアはいい。今出ていった三人がすぐ帰ってきて、はい一年たちました。という展開は、これから始まる物語を予感させるのに十分すぎるほどの設定です。タイムマシンにロマンスは良く似合います。空間の隔たりよりも遠いものが時間の隔たりだから。今回はさらに「記憶」の要素が加わっています。記憶は時間と密接な関わりがあるものですし、記憶が消去された、ということは、すなわちある意味で、時間を跳んだ、というのと同義です。三人は、一年を跳んだのです。既にこの時点でタイムマシンの予感がありました。

時間と記憶と恋愛が絡み合えば、これはもうかなり複雑なストーリーが展開するのは必至であります。でも、今回はそういう展開にはなりませんでした。ほぼ人物関係のみで物語は完結してしまいました。その点がやや物足りない感じがしました。また、最後のクライマックスもあっさりしていたように感じました。もっと二人の気持ちを盛り上げてほしかったです。二人は五千万円よりも、恋愛の記憶を消したく無かったために逃亡を企てた。その辺りの事をはっきりと、セリフとして聞かせてくれれば、泣けたかもしれない。キャンドルの炎に永遠の時を感じることが出来たかもしれない。これはまったく私のわがままにすぎないんですけど。。。

私としては、もっと記憶消去前の三人を積極的に物語に関わらせて欲しかった。今回、西川さんが三日前の人物として出てきたけど、あれだけでは不十分。もっといえば、二人が脱走を決意した経緯を物語の中に織り込んで欲しかった。そうすることによって、ラストの二人の思いがより盛り上がるだろうから。

「キャンドルは燃えているか」というのは、三日前の脱走を諦めた二人が、記憶の再生を願ってつぶやいた言葉だという気がするのです。俺たちはいろいろ努力して記憶を取り戻せるような工夫をしたけど、本当にそうなったのかな、キャンドルは燃えているのかな、と。。。そして思うのです。もしかしたら、その場面がみたくて、タイムマシンで確認にきたんじゃないのかな、と。

時かけ



観劇印象レビュー[ TOP | 93年 ] 時かけ