In CAFE


オーツーコーポレーション『In CAFE』☆☆
写真集「It's a small world(小劇場の俳優たち)」のカメラマン、大須賀博によるプロデュース公演。(THEATER GUIDEより)

チラシから受ける、おしゃれっぽいイメージとは異なり、馴染みのある小劇場の世界でした。どーもこのチラシは失敗だったんじゃいなかな、とさえ思います。もっとも狙いとして、今まで小劇場に来なかった人達を引き付けるための見本市と位置付けていたのであれば、うなづけることはうなづけますが‥‥。でもお客さんが少ないのは残念でした。スペース・ゼロのだだっぴろい空間もなんとなく好きでない私だったりします(^^;)。以下、感想文に移りますが、STORY 1,2,3ではあまりにそっけないので、勝手にサブタイトルをつけてしまいます。(^^;

舞台はとあるカフェの店内。テーブル席には三組のいわくありげな人達が座っている。これから、それぞれの物語が綴られるのだが、それはまだ分からない。左の机の一組のカップルの照明が一際強くなり、まわりの灯りが次第に落ちて行く‥‥。

STORY 1 「ヴァーチャルメモリー」☆☆
結婚間際の若い二人。女はこのまま結婚してしまうことに不満を感じている。「たまたま」社員旅行で隣に座り気が合って付き合い始めたなんて‥‥、しかもプロポーズのきっかけが、式場の予約をすれば熱帯魚セットが貰えるから、だったなんて‥‥。仲人の部長夫婦がやってくる。子供の出来ない寂さを紛らわすために始めた仲人だが、今回で100組目なので気合いが入っている。そこへ、思い出を貸すという怪しげな男女。若い女が、もっと素敵な思い出がほしいと呼んだのだ。その仕組みは、人の「思い出」を、他人に話さないという条件で買取り、会社がその事実を客観的に証明する、というものだった。「思い出の証拠品」を渡され「思い出」を読み上げられるうちに次第にその中に入り込んでしまう若い二人。部長はそれをひややかな目で見ていたが、妻の希望により、いない筈の子供との思い出を試すことになる。思い出の中の子供が迷子になり、半狂乱で探し回る妻を見て、部長はもうやめよう、と言うが、妻は「子供の思い出の方が、仲人ずきの夫婦の思い出よりもいいわ」という。実は、部長夫婦も思い出を借りていたのだった。一方、若い女は、これからの結婚も「思い出」次第で楽しい物になるは、と夢をふくらませるのであった。

この後、再びカフェのシーンに戻り、女が紹介したい人がいるの、といって、例の怪しい男女がやってくる、という場面で終わります。多分、今までのは、彼女の空想で、これから、その物語が綴られる、ということなのでしょう。

役者では、高橋克実さんがいい味だしていました。ぼけ味がいいですね。どうも、三宅裕司と混同してしまうのだけど。(^^;)  あと、遊眠社のワキの人って、松浦さんといい、どうしてこんなに芝居がうまいんでしょう。
川俣さんの、子供を探して必死に走り回る母親、は、迫真の演技でした。彼女のまわりだけ違う空間になっていましたから。やっぱり只者ではないです。
あと、茂原裕子さんもキュートでよかった。(^_^;)難点としては、メフィスト役の二人が、もう少しパワーがあってもいいかな、という気はしました。

STORY 2 「終りなき夜に生まれつく」
時は2009年、空から降り注ぐ紫外線の量が極大化の一途を辿り、人類は地上を捨て生産活動の基盤を地下へと移して行った。地上にぽつんと残された、廃屋のようなカフェ、場所的には一等地なのだが、幽霊が出るという噂で、買手が付かない。不動産屋がお客を連れて店内を案内していると、一人の男がいた。すわ幽霊か、不動産屋とお客は店を飛び出して行った。男は、ここで会おうと十年前に約束した女を待っていた。やがて現れた女は、彼女の妹だった。妹と一緒に、義兄、つまり女の夫も‥‥。その義兄はかつて女を争い、このカフェで決闘した相手だった。男はその時に死んでいたのだ。男は自分が幽霊だったことに気が付く。女は失踪していた。義兄と妹は女を探す為にカフェ来たのだ。男に渡すわけにはいかない。再び繰り返される決闘。男は再び義兄に撃たれるが、既に死んでいるのでもう死ねない。成仏しろ、といわれ、思い出の歌を妹にねだる。女は夕焼けを見て、茜色に染まりながら、その歌を歌うのが好きだった。今はもう決して見ることのない夕焼けを思い、二人の男はいつまでもその歌に聞き入っていた‥‥。

本当はちょっと違うんですが、頭の中で再構成して見ました。(^^;)

この芝居の落ちは、義兄も妹も実は幽霊でしたというもので、今にして思えば<生者のいなくなった地上で死者が三人、夕焼けを思う、という「シェルター」なんかにも通じるテーマの作品だったと思うのだけど、そのあたりの味わいが全く感じられず、平板な印象しか得られませんでした。

PS.そういえば、STORY 1 か、STORY 3 の時か忘れたけど、オープニングのカフェのシーンに戻った時、手前右の幽霊三人組が珈琲を三つ頼み、ウェイターが珈琲を持って来ると三人とも忽然と消えていた、というシーンがあったんだけど、あれは「幽霊」だったからなのか。今頃、気が付きました。(^^;)

STORY 3 「はるか、ノスタルジー」☆☆☆
カフェの二人。男は少し荒れ気味。女は自分たちの関係をそろそろはっきりさせたい、という微妙な時期にいる。女はプロポーズされていることを告げる。男「勝手にすればいいだろ」 女、席を立つ。しばらくして、一人の老女が男の前に立つ。女が出ていったことを知り、「遅かったかぁ」と嘆く。

とりあえず二人は、男の部屋へ。(すみません。未完の感想です。確か、老女は未来からタイムスリップしてきた、てな設定だったと記憶してます。)


STORY 1
【作・演出】大橋泰彦
【出演】高橋克実、川俣しのぶ、茂原裕子ほか
STORY 2
【作】北村想 【演出】肝付兼太
【出演】忍野タケル、依田朋子ほか
STORY 3
【作】堤泰之 【演出】高橋いさお
【出演】仁藤優子、西山水木、手塚とおる

時かけ


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