お茶と同情


シリーウォーク『お茶と同情』☆☆

巷では、森田童子の『僕たちの失敗』が大ヒットで、昔の暗い歌が見直されているという事ですが、僕にとっての昔の暗い歌の一つにジャニス・イアンの歌があります。『お茶と同情』という同名の曲も、繰り返し聞いたものでした。悲惨な少女時代を送り「17才で人生を知った」彼女を先日テレビで見ました。思い出の歌を歌いながら、時折見せる彼女の笑顔は限りない優しさに溢れていました。

シリーウォークの『お茶と同情』は、否応なく「昔」を思い出させる作品でした。ドリフの『8時だよ』は、まさに子供時代の思い出だし、友紀少年を語りべとして、子供の視点から大人を見る構成は子供時代の自分が、当時の両親、ひいては、叔父さんとよばれるようになった自分を見詰める作業ともなり、あざとく涙腺を刺激されていたなら、心に痛い芝居となっていたでしょう。けれど、演出はその点、あえて押さえていました。一日の出来事は「淡々と」綴られて行きました。僕にとっては、その点が「乗れなかった」原因であったと思います。正直いって、リアリズムは苦手です。どちらかというと、舞台が進むにつれ感情が高まり別世界が現出する、あるいは、カタストロフが訪れ、静まり返った中セリフだけが綴られて行く、あるいは単なるコメディ(^^;) のような、なんというか、見る側の気持ちがジェットコースターに乗って翻弄されるようなのが好きなのです。舞台に身を任せて、たゆたうようなのが好みなので、等身大の現実を見せられるのは苦手なのです。

そんな私ですが、岩松了の『市ケ尾の坂』は良かったです。カタストロフがありましたから。リアリズムに特徴的な「間」は、この舞台でも、緊張感を持っていました。けれど、『市ケ尾の坂』の場合には、ほとばしるような感情のぶつかり合いが肌で感じられたのに対し、時に棒立ちになっているようにも見えました。もちろんこれは、個人的な感想ですし、もっと前の席で見ていたら、また違った感想になっていたかもしれません。

PS1.
瞳さんが、友紀の部屋へ入って行き、「私と結婚したいのかぁ」と笑った時、これで泣かせてくれるのかな、と浅はかな私は考え、その通りにならなかった事も感動を押さえる原因となったのですが、それはまぁ、個人的な理由と云う事で勘弁してくださいまし。(^_^;)

PS2.
このお芝居をみながら連想した物。「ありがとう」「寺内貫太郎一家」「時間ですよ」「東京物語」「岸辺のアルバム」「北の国から」「不揃いの林檎たち」「機械仕掛けのピアノのための未完成の戯曲」「僕の叔父さん」etc.


SILLY WALK PRESENTS 『お茶と同情』☆☆
会場:下北沢本多劇場
期間:1993/2/19 〜 2/28 観劇日:2/25 K-10
作・演出:手塚とおる
連絡先:03-5477-8145 シリーウォーク

by. 時をかける少年



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