生まれてはじめて、みた。


青空美人『生まれてはじめて、みた。』☆☆☆☆☆

男1
パーフェクトですね。一緒にトゥゲェザーしようぜ。てなもんです。私、思わずコピーが浮かんでしまいました。「どうどうどっこの青空美人」その心は、若い時ゃあ二度とない、です。どんとやらなきゃ。人の出来ない事をね。てな感じです。では、ここで一句。

思い出のフィルムに秘めた悲しみはどうどうどっこの青空美人

男2
若さが高揚した時に、一瞬、奇蹟のように輝く瞬間があります。そのようなはかなさを秘めた芝居です。言葉でほめようとすると、口にした瞬間嘘になってしまいそうな恐怖を感じます。とにかく見ていただくしかないでしょう。あえていいます。今しか見れない舞台です。

男3
とりあえず告知ということで、これは正式なRではありません。正式なのはまた後日UPします。‥‥多分。
え?、私ですか? ト書きですよ。ト書き。

登場人物は五人。役名は覚えてないので(^^;) 仮名にて続けます。(__;)

男0(ト書き)
この芝居の演出者。他の男達に指示をだす。かれの指示には皆絶対的に従わなくてはならないか、何故そうなのかは、誰も知らない。
男1(山岡) 美術商?
増殖する彫刻展、という展覧会の企画をするが、彫刻がまだ到着しない。だまされたと思い、開催を間近に控え自殺を計ろうとする。
男2(星野)
山岡と昔のシナリオを映画化しようとやって来て自殺しようとしていた山岡を見つける。昔の容疑で志望の会社へ就職できず、落ちぶれている。
男3(平?)
五年前謎の死をとげた、平の役をやる。しかし、その演技がト書きは気に入らず、目の敵にされる。
男4[公安の男]
かつては、平の自殺を担当。殺人ではないかと、星野の後を執拗に追い掛けていた。現在は、何故か平役の男を「青木」と呼び、その行方を探している。

※(ト書きは男達を例えば、男1としか呼ばない。男達は互いに名前で呼びあう)

考えてみたら型通りの芝居である。声を張り上げるテンション芝居。封印された五年前のシナリオ。友人の自殺の謎。はたしてそれは殺人だったのか。死んだ平がシナリオに残した謎とは‥‥。態度の大きな公安の出現。二重構造の芝居の演出者、ト書き。それに反抗する出演者たち‥‥。

山岡に五年前の映画を作ろうという星野。それを断る山岡。平の自殺の謎がこのシナリオには隠されているんという。平とは一体どういう男だったのか?五年前、星野は好きな女の子にいい所を見せたいという、切実な願いを平に話すが、平は「今はその時期ではない。五年後なら‥‥」と星野の願いを断る。「お前からも話してくれよ」という星野に、山岡は何故か気のない返事。ところが、その平が失踪。「平が出て行っちゃったんだよ」息せききって駆け込む星野。結局平は自殺だった。それを報告にいった星野は逆に疑われ、就職取り消し。山岡はすんなりと就職、そして五年の歳月が流れた。

山岡の前に現われた公安。かつて平の事件を執拗に追っていた奴だ。ところが、公安は、「青木」を追っているという。「青木」とはさっきまで「平」を演じていた男だという。山岡「おい、ト書き、どうなっているんだ?」。ト書き「そんな事知りませんよ。それより今の状態をどうするかです」 実は、さっきまで「平」だった男は、ト書きに「お前には平の役は無理だ。お前に平がこのシナリオに隠した謎がわかるのか」といわれ、失踪していたのだ。公安との会話の中で、山岡の妻はかつて星野が好きだった女性と同じ名前であることが判明する。

「平らに映画はやめよう、と言ったのは俺だったんだよ」、ト書きに告白する山岡。

平との会話再現。
映画を作るのはやめにしたいんだ。でも俺が言っても聞かないだろう。お前が駄目だと言ってくれないか。そして、自殺してくれないか。それが一番いいんだ。
帰って来た男3
「平はね、そういうことのために死ねる男でしたよ」

男3は、ト書きの方を見て微笑む。‥‥そして平は死んだ。

山岡
「言わなくちゃいけないとは思ったんだ。でも、どーしてもあいつには言えなかったんだ」

もう一回やりましょう。「平らが出て行っちゃったんだ」の所から。ト書きが微笑む。「用意 スタート!」台詞は同じでも、全てを知り、かみしめながら、微笑みながらセリフを喋る星野。映画のラストが近付いていた。

星野
「俺はなぁ。どーして映画が作りたいか、その訳までいっちゃったんだぞ。それでも、平はやめるって、いうんだ」
山岡
「あぁ」やっぱり何も言えない。星野は笑っている。「カット!」の声。
星野
「美奈子夫人にもよろしくな。学生の頃の熱い体温を思い出したよ」笑って去る星野。去って行く役者の背中を映写機の光が照らし出す。

結局謎は何ひとつ解明されないまま、終焉を迎えるわけです。この後、こうやって、ああやれば、お涙頂戴シーンが、三つや四つはすぐ書けるぞ、というときに、それらをいっさい省略してしまう、その大胆さに惚れました。

なんでも饒舌に語り過ぎる傾向のある現在、あえて語らず、胸の中に飲み込んで終わる潔いラストはたまらなく眩しく映りました。思いは全て、映写機の白い光に込められています。その光の中には、決して作られることの無かったあまたの映画たちが上映されているのです。

余談ですが、映画館の写真集で、白いスクリーンばかり撮影したものがあります。それは、実際に映画を上映し、長時間露光で撮影した物で、スクリーンは、白くしかうつりませんが、そこには確かに「映画」があるのです。


青空美人 THE PRIVATE FASCINATION 「生まれてはじめて、みた。」☆☆☆☆☆
作・演出:木内宏昌  公演日程:12/5 〜 12/6
劇 場:新宿バーニーズニューヨーク8F VIA EIGHT
観劇日:1992/12/5 15:00〜 当日券
(四方に長椅子がおいてある全方向スペース。その最前列どこか(^^;)
連絡先:03-5388-9414(ヤマシキ)

時かけ



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