「山茶花」


 季節感の乏しい都会にも、冬の訪れを知らせるようにひっそりと開き始める山茶花の花。指先に感じる空気が冷たくなる頃になっても、花びらのまわりだけはほの暖かく、小さなマッチのように感じられます。

 車に乗せてもらっている時、国道の中央分離帯にびっしり植えられた山茶花を見かけることがありますが、排気ガスで真っ黒になっていて、いかにも哀れです。家へ帰り、カーテンを開いて、そこにも黙って可憐に咲いている山茶花を見ると、木や草や花たちは、健気に黙って大気の浄化に貢献しているのに、本当に私たちはこれでいいのか、と、いつも思ってしまいます。




sazanka