「森の伝説」あいさつ


 今回の絵は、みんな朝の3時から、7時、8時までに描いたものばかりです。子供の大病を機に、私の制作時間は大きく制限され、それ以来、毎日、朝の時間だけ、静かに絵に向かうようになりました。

 でも、この数年間に学んだことは大きいです。子供の生命の中に棲み、そして大きく世界全体をも生かしてくれている愛ある存在を、じかに感じながら、ごく自然に、感謝の気持ちを持って生活できるようになりました。

 日常自然に触れ、その中で、他者と共生しているよろこびを再発見することも出来ました。そして、生まれながらに、やさしさやあわれみや感謝する心を持っている幼い子供を見ていて、教えられたり、感動したりする事が、数えきれないくらいありました。

 朝、一人になって机に向かう時、私は一番正直な気持ちになる事が出来ます。一番正直な願いやイメージを画面に定着させたいと思いながら、制作の時間を持ってきました。

 まだまだ人に見ていただくに値しない拙作ばかりですが、ご高覧いただければ幸いです。

   一九九六年五月吉日

                        松生 歩