光測定とは?


文字通り、光を用いて様々な量を計測することです。
したがって、どのような光を用いて、どのような原理で、何を測定するのか、の問題が発生します。
(1)どのような光を用いて?
白熱電球を始めとして、白色光もありますが、光計測で使われる光源はほとんどレーザです。レーザには固体レーザ、ガスレーザ、半導体レーザ、色素レーザなどがあります。波長選択性で言えば色素レーザがダントツです。自由に波長を選べる有利さがあります。固体レーザは短時間パルス(アト秒、フェムト秒パルスなど)を作り出しており、ガスレーザでは炭酸ガスレーザなどは金属の切断にまで使われています。半導体レーザは光通信の中心部材です。用途により、レーザが使い分けされています。また、大きさも様々です。色素レーザや固体レーザ、炭酸ガスレーザは大きく、冷暖房完備の部屋に収まっているものさえあります。半導体レーザは顕微鏡で覗かないと本体を認識できません。測定する対象により、どの程度の光パワー、波長などが必要かを検討し決める必要があります。これは次の、どのような原理で測定する?、と関係しますが、測定では光源が大きすぎても、パワーがありすぎても無用な長物です。そこで、適度なパワー、適度な大きさのレーザを選択することになります。更に容易に、安価に入手できなければなりません。(以下ここでは、金額を考慮しない測定は考慮の対象としません)。結果として、固体レーザ(YAG)、ガスレーザ(Ar,HeNe、Kr)、半導体レーザがその対象となります。以下の表にまとめました。

レーザ種類 波長 光パワー 価格 寿命 特記事項
YAGレーザ 1.064μm 数十mWから数十Wまで    数十万円から数百万円 数万時間以上 倍高調波利用で532nm波長
Arレーザ 488nm,514.5nmなど 数W  数十万円から数百万円 1万時間程度 装置大型
HeNeレーザ 632.8nmなど 数mWから数W程度まで   数万円から数十万円まで 1万時間程度
Krレーザ 356.4nm482.5nmなど 数W 数十万円から数百万円 1万時間程度 装置大型
半導体レーザ 半導体種類により波長が数多くある
赤外通信用
1.55μm、1.31μm
光ピックアップ用
600nmから850nm
様々にあり、十数W程度まで 数百円から
数十万円まで
数万時間以上 電源は付属していない。
別途APCやACC装置が必要


(2)どのような原理で測定する?

レーザの種類((1)で選択した範囲に限る)は様々ですが、共通しているのは、波長範囲が狭いことです。更にそのすべてが、人間の目に映るわけではなく、人間の目は、300nmから800nmの範囲(可視領域)しか認識できません。測定も人間の行うことですから、まずはこの可視領域の範囲のレーザを用いることになります。この波長と光の偏光性、二重性、速度一定性、レーザの単色性、コヒーレント性を利用して、様々な測定があります。
(a)速度一定性を利用
試料に当たって、帰ってくるまでの時間を正確に測る方法があります。有名なのは、月までの距離を測る装置でしょう。また、アイセーフレーザを用いた測距装置が市販されています。いずれも長い距離を精度高く測ろうとする要求にこたえています。光は1nsで30cm進みます。現在の電子技術は容易に10psを、(金をかければ10as=0.00001nsも可能だが)、識別できるので3mm程度の誤差で測定できます。
この時間差測定から、物質の屈折率も評価できます。また、光は極めて早いので、対象物の時々刻々の変化(経時変化)を調べることが可能です。
(b)偏光性を利用
材料には特定偏光成分のみを透過や反射させるものがあり、特に、結晶材料では結晶軸に対する入射角度に依存してこの性質が現れます。これを利用すれば、結晶方向や結晶の大きさ、多結晶材料の結晶接合などの情報を得ます。材料評価の分野では重要な測定原理です。液晶分野の成長でこの測定原理は重要性が増しています。
(c)単色性、コヒーレント性を利用
ニュートンリングなどは一例です。干渉させて材料の平坦度をその干渉縞から認識します。光学部品の平坦度を表現する際に使われる、例えばλ/20、の表示は測定波長(大半はHeNeレーザが多いので、633んmとします)の1/20、つまり32nm程度の凹凸以下にある平面であることを示しています。
(d)二重性を利用
粒子性と波動性の二重性はすべての物質が有しているのですが、光が顕著にその性質を示してくれます。(弊社名にも使っていますが)”フォトン”は粒子性を強調した面から呼ぶ”光”のことです。たとえば、回折は波動性の側面が如実に現れていますが、その回折リングの様子を光検出器で検知できます。光検出器は粒子性の側面が見事に現れているからこそ、電流に変換されるのです。したがって、光測定は、知らず知らずに、二重性を利用しています。回折、干渉測定なども恩恵にあずかっています。

(3)何を測定する?
現在では、様々な分野で測定に利用されています。そのすべてを記載することは困難です。幾つかの分野でのみ紹介します。
(a)材料分野
半導体、セラミックス、結晶、有機物、ありとあらゆる材料が対象です。最近の技術の進歩は、半導体とセラミックス、液晶関連において突出しています。半導体の品質の高さは8インチウエハを作り出し、製造技術の高さは数十nmのライン幅を実現しています。これらの目に見える結果の裏に数多くの測定評価システムが存在しています。歴史は製造・失敗・評価・対策の4つのル−チンを何回となく繰り返すことで成長したことを示しています。光測定がこの評価の部分で重要な働きをしており、現在も同様です。これらの評価において、材料を変質させるような方法は許されません。光測定の無振襲特性が生かされます。そのほかに、位置合わせ技術や移動設置などの製造時の基本動作の中にも使用されています。非接触で行うことでノイズ発生を抑えています。
(b)機械・機構分野
より高精度の製品を生み出すためには、製造設備もそれを支える数多くの部品も高精度が要求されます。液晶ガラスの平坦さを生み出すためには、製造過程での装置の平坦さが要求されます。機構に関しても、部品結合をより精密にするためには、高精度が要求されます。これらの要求に対して、人の手で触れることはおろかほかの物質で触ることは、狂いを生じさせます。光測定の非接触測定が優位性を示しています。


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