干渉させるにはどの程度のビーム重なり、平行度が必要か?
波動は干渉させることで干渉信号が得られます。
その最もわかりやすい例が干渉縞です。
よく模式的にわかりやすい例として使われるのが、モアレ縞です。
このような干渉縞は光にも見られます。逆に光が波動の性質を有することを如実に示しています。
光の干渉縞は位相がわずかに異なる2つ以上の光が重なることで作られます。光は電磁波ですから、E波ベクトル、H波ベクトル、kベクトル(ポインチングベクトル)、と3次元で表現されるベクトルで表現しなければ、本来いけませんが、ここでは簡単に、E波ベクトルのみ取り上げて説明します。
E波強度は進行方向に垂直の面内でその大きさを変動させます。振幅は通常次の式で与えられます。
E波振幅=Aexp(i(ωt+φ))
Aは振幅強度、ωが角振動数です。”i”は虚数です。物理量は本来虚数量で、波動は通常上記のようにかかれます。
(1)2つの光が、その進行方向をまったく同一にし、かつ、各々のE波ベクトル方向も同じであるとすれば
干渉信号は
干渉信号強度=|A1exp(i(ω1t+φ1))+A2exp(i(ω2t+φ2))|^2
=constant量 + A3cos((ω1ーω2)t+φ1ーφ2)
となります。A3が干渉信号強度で、A1とA2の積です。
この式から、次のことがわかります。
1.干渉信号強度を上げるには、積の値を大きくすることが必要。良策は2つの信号の強度を揃えることと知れます。
2.干渉信号はその周波数が変動すること。干渉信号周波数を通常の電子回路で検出するためには、ω1ーω2=2π×10^9程度にしなければなりません。しかし、緑色の光は大体、ω=2π×6×10^14です。6桁も食い違っています。逆に言えば、ほとんど同じ波長の光でないと干渉を検出できないことがわかります。
後者の問題は、周波数安定化レーザや周波数シフタにおいても説明しています。
(2)上式はビーム径がゼロの話でした。
しかし実際は、光ビーム径は有限です。HeNeレーザの場合は1mm程度です。また、その強度は均一ではなくガウシアン分布をしています。
したがって、2つのビームが重なることによる干渉信号強度は、x軸y軸をビーム形状を表す方向として、2重積分で求められます。
その積分結果から次のことが知れます。
1.2つのビーム径はほとんど同じ程度が良策である。
2.2つのビームが離れると急速に信号強度は減少する
ファイバーコリメータを介してもビーム形状はさほど変わりません。その様子はファイバコリメータにおいて説明しています。
(3)上式は2つのビームが同一方向の話でした。
2つのビームの信号方向が異なっていた場合の干渉は、次のような理由で減少します。
片方のビーム(Aビームと呼ぶ)の方向と、もうひとつのビーム(Bビームと呼ぶ)の方向が、θの角度を持っていた場合、BビームのAビーム方向成分は、cosθ、の因子がつきます。
先の式で
干渉信号強度=|A1exp(i(ω1t+φ1))+A2cosθexp(i(ω2t+φ2))|^2
=constant量 + A3×(cosθ)^2×cos((ω1ーω2)t+φ1ーφ2)
となります。
信号強度を上げるためには、θを小さくすることが必要です。
(4)上記では計算しやすい特殊な場合を想定して求めました。
残念ながら、実際のビームは、もともと広がっているビームの集合体であり、コリメート性も悪く、形状もガウシアンからはずれ、波長も単色光でなく、光源から離れると、その性質が変化している、そんな複雑なビームです。実際には、ほとんど計算どおりには議論できません。上記計算は目安だと割り切って検討することが必要です。
レーザ個々で、干渉信号を求めると理屈どおりに求められないことが知れると思います。
後は、いくつかの干渉信号を得た経験から判断するのが、この質問、”ビーム重なりはどの程度必要か”、の回答になると思います。
実験でそれを確かめてください。
ちなみに、弊社では
1.(干渉位置において)、ビーム径を揃えること。
2.(干渉位置において)、ビーム強度を揃えること。
3.ビームの中心ずれは、ビーム径の1/10以下に抑えること
4.2つのビーム角度は、最悪0.3mradとすること。
を設計に取り入れ、実際の組み込み調整の指針としています。
そのために、弊社内利用を目的に、ビーム平行度測定装置も開発してきました。
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