3年選択理科 炭酸ガスが増えると地球は温暖化する 月 日
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炭酸ガスによる地球温暖化説には政治がらみのインチキがある!
――環境問題には、これまでお話をうかがってきたリサイクルとか、ゴミ問題とか、安全な食品とかいった、いわば生活の現場の問題とは別個に、熱帯林の消失とか、砂漠化とか、地球温暖化とかいったグローバルな関心があります。こうした地球規模の問題に対して、私たちはどのように考えればよいのでしょうか。
グローバルというのは、だいたいが人を騙すのにいちばんいい構造なんです。例えば炭酸ガスによる地球温暖化問題というのは、「風が吹けば桶屋が儲かる」の典型みたいなものですね。石油を燃やすと炭酸ガスが出て、炭酸ガスは温暖化ガスだから地球の気温が上がって、地球の気温が上がると南極やグリーンランドの氷が溶けて海面が上昇して、海面が上昇するとモルジブ共和国は水没してオランダはますます困難になる、とまあ、こういう論理になっているわけです。
――それがどこが変なんですか。
槌田 この理屈の言い出しっぺの一人はハンセンというNASA(アメリカ航空宇宙局)の研究だったわけですけれども、それを世界的に広げたのはフランスなんです。
だけど、フランスがそういうことを言い始めた時、他の国々はびっくりしたんです。なぜなら、フランスというのはそれまで、環境問題に対していちばん冷淡な国のひとつだたからです。フランスの学者たちは、それまであまり地球温暖化なんていうことは言わなかったんです。ところがある時から一斉に騒ぎ出した。なぜだと思いますか。
――さあ。それだけ炭酸ガス問題が深刻になったからじゃないですか。
槌田 そうじゃなくて、原子力産業が斜陽化してきたからなんですね。つまり、原子力発電は炭酸ガスを出さない。炭酸ガスは地球環境を悪化させる。だから原子力発電は環境にいい発電だ、ということにすることで、傾きはじめた原子力産業をバックアップしようと考えたわけです。フランスにとって原子力産業は国家の命運を左右するような重要なプロジェクトになってしまっていますから、これが衰退してしまうのは何としても防ぎたい。そこで出てきたのが、環境問題を利用して原子力発電の優位性をアピールしようとする戦略だったわけです。
もともと原子力発電は、石油があと三十年で枯渇すると騒がれたときに、その代替エネルギーとして登場してきたわけです。もちろん原子力では石油を代替できないわけですけど、そのことは別にしても、石油そのものがいっこうに枯渇しないばかりか、世界的にダブついて価格が下がってきた。だからもう、「石油が枯渇するから原子力が必要だ」という理屈が言えなくなってしまった。そのうえさらに、石油価格が下がって原子力発電のコストが相対的に高くなってしまったことと、原子力利用に予想以上のコストとリスクがかかることが明らかになってきて、原子力産業そのものが不況業種になってきてしまった。
温暖化で海面が上昇するという嘘
――でも、原発が炭酸ガスを出さないというのはほんとうなんじゃないですか。
槌田 いやだいたい、原発が炭酸ガスを出さないという前提からおかしいんです。たしかに発電所の中では石油をあまり燃やしていないから炭酸ガスは出ないけれども、発電所を建設したり、ウランを掘ったり、そのウランを燃料に加工したりするときに石油をいっぱい使っているわけです。その分を考えると、原子力発電所は火力発電所とだいたい同じ分量の石油を燃やしているわけで、大きな声で、「原子力発電は炭酸ガスを出しません」と言うことはできないんです。炭酸ガスを出さない原子力発電なんていう言い方は、はじめから人を騙しているんです。その次に、例の「風が吹けば桶屋が儲かる」式の論理がくるわけでですが、これがまたインチキもはなはだしいんです。
炭酸ガスが増えると地球が温暖化する。それが本当かどうかも問題なのですが、温暖化したら南極の氷が溶ける、これが真っ赤な嘘なんですね。
当たり前のようだから、騙しやすいのです。もちろん地球が温暖化すれば、南極大陸の縁の部分で少しは氷が溶けるかもしれない。でも、何十度も気温が上がるわけじゃないから、南極大陸の大部分が氷点下であることに変わりはない。つまり、たいして氷は溶けないんです。
ところでその一方で、地球が温暖化すると大気中の水蒸気がどんどん増えて、それが南極大陸に流れるわけです。すると、その水蒸気はどんどん水蒸気になって南極大陸に積もっていくことになる。
最近の研究では、温暖化によって南極の氷は増えるほうが多いということになっています。温暖化で海面が上がるというのは嘘なんです。
それでは困るから、また別の理屈を考えたんですね。今度は何と言ったかというと、海水は温度が上がると膨張して体積が増えるんだそうです。でも、、海水は温度が上がると、そんなに膨張するより先に蒸発しますし、蒸発すれば海水の温度は下がります。それに、海水の膨張率は小さく、増えるといってもせいぜい10センチ程度です。海面が上がって困るほど海水が上がって困るほど海水が膨張するなんてありえませんよ。もう滅茶苦茶な論理になってきているんです。
つまり「地球」とか「グローバル」とかいう形容詞のつく問題は、ほとんどの場合、政治的に使われているわけです。眉に唾をつけておかないと、騙されてしまうわけです。真実というよりは、むしろ政策の正当づけのために使われているんですね。
――でも、原発廃止を決めたはずのスウェーデンも、炭酸ガス問題には積極的に取り組んでいますよ。
槌田 スウェーデンの場合も、理由ははっきりしています。ちょっと考えればわかるように、スウェーデンはあんなに寒い国なんですから、温暖化しても何も困ることはありません。むしろ逆に、温暖化したほうがずっと好ましいわけです。なのに、なんで炭酸ガスを問題にするのかと言えば、それも結局、原子力発電なんです。 つまり、スウェーデンは原子力発電を再開したいわけです。でも、いちど廃止すると宣言してしまったものを、「やっぱりうまくいきませんでした」と言って再開するのでは都合が悪い。そこで考えたのが、温暖化問題です。原子力発電を廃止すると化石燃料に頼ることになる。そうすると炭酸ガスが放出されて地球が温暖化してしまう。それを防ぐために、やはり原発を再開するしかないんだ、という理屈で自分たちの政策に正当性を与えようとしているわけです。地球温暖化問題に積極的に取り組んでいるのはフランスとスウェーデンのほかに日本とアメリカなんですが、すべて理由は同じです。つまり、原発問題という政治で、世論が歪められてしまっているんです。
環境問題という国際政治のゲーム
――炭酸ガス問題の背景にはおっしゃるように原子力産業の保護という政治的意図が隠されているかもしれませんが、しかし、結果的に、今、炭酸ガスの放出量を地球規模で規制しなければいけないという議論がなされるようになってきたわけですよね。
はい。資源をやみくもに使っていいわけはないのだから、資源の使い方を制限しようということでみんなが議論するのは、もちろん悪いことではありません。ただその時に、日本はいくら、アメリカはいくら、と決めようとするならば、炭酸ガス排出規制は国際政治の綱引きの要因のひとつになってしまいます。その意味で地球環境問題というのは、核軍縮問題が一段落した後に登場した、国際政治の新しいゲームのコマだということもできるんじゃないでしょうか。ただ、国際政治のゲームであれ何であれ、そういう試みをみんなが始め出す時代になったんだというふうに、僕は思っていますけど。
炭酸ガス問題の場合、それが解決に急をようするかどうかは、僕には疑問なんです。
温暖化の原因は、たくさんあるんです。過去数千年間に何回か温暖化がありましたが、どれも炭酸ガスが原因ではありません。もちろん、炭酸ガスがどんどん増えているということは、そのまま放置しておいてもいいというような問題ではありません。だけども僕は、現段階ではそれが決して悪いことだとは思わないんです。
温暖化を問題にする人たちは、炭酸ガスが産業革命の頃に比べて二割増えていると言って騒ぐわけですが、そのことで今、どういう影響が出ているかということはぜんぜん議論していないんです。炭酸ガスが二割増えたことによってどういうことが起こったかを検証しないまま、これから炭酸ガスが増えていったらどうなるかだけを議論する。これは科学ではないです。気象学者たちは、今から十年前までは、地球寒冷化と言っていたんです。その頃には、炭酸ガスの量はもう、産業革命期の二割増になっていたんですよ。そのとき彼らは、今は一時的に温暖化しているように見えるけれど、今後は確実に寒冷化に向かっていくんだといって、われわれを脅かしていたわけです。原子力推進派は、だから原発が必要だと言っていました。それがなんで、いきなりみんな温暖化説になるんですか。
大気中の炭酸ガスが増えれば温暖化するというのは、新発見でもなんでもないんです。ではなぜ、気象学者がみんな温暖化に与するようになったのかと言えば、そう言わないと研究費がもらえないシステムになってきたからです。また、寒冷化と言ってももはや新聞が取り上げてくれないからです。この二つが、気象学者たちが寒冷化説を捨てて温暖化説に走った原因なんです。もちろん、いまだに地球は寒冷化するという研究をしている気象学者もいないわけではないのですが、そんな研究にはもはや誰も興味を持たないんですね。
炭酸ガスが増えても誰も困らない
――でも、温暖化か寒冷化は別にして、炭酸ガスが増えていること自体が問題なんじゃないですか。
槌田 なぜですか。炭酸ガスが二割増えても、少しも困ったことは起きていませんよ。
産業革命以降、大気中の炭酸ガスが二割増えたことによって確実に起きたことは、作物が二割よけいにとれるようになったということなんです。どういうことかというと、炭酸ガスというのは肥料と同じなんです。植物が育つのに必要なのは、光と、肥料と、水と、炭酸ガスです。三大肥料といって、窒素、リン、カリをやると植物がよく育ちますね。それと同じで、炭酸ガス濃度が増えるということは、木がよく育つということです。炭酸ガス濃度と作物の出来は比例しますから、炭酸ガスが二割増えていれば、作物も二割よけいにとれるんです。大気中の炭酸ガス濃度は、今は300ppmぐらいですが、600ppmぐらいになると飽和してしまって、それ以上は効果が変わらなくなるんです。だけど今は、まだ炭酸ガスの少ない、貧炭酸ガス状態ですから、作物の生育と炭酸ガス濃度はまだ比例するわけです。
これはそんなに難しいことではなくて、すでにビニルハウスで実践されていることなんです。ビニルで覆っていると、外から炭酸ガスが供給されない。そうすると、いかに一日じゅう日光で暖められていても、作物は育たないんです。そこでどうするかというと、ぽんぽん灯油を燃やして熱とともに炭酸ガスを足してやる。すると、作物がすくすく育つんです。
だけど、炭酸ガスが増えることによって起きるこうした良い効果は、誰も言いません。悪いことの話ばかり議論されているわけです。
炭酸ガス濃度が600ppm以上になったら悪影響があるでしょうけれど、600ppmになるまでの間は、炭酸ガスというのは光合成に決して悪い効果をもたらしはしないんです。
ほんとうの問題は異常気象
槌田 このようにグローバルと言われている問題のほとんどは、一歩退いて、本当かどうかよく考えてみる必要があります。地球温暖化などを議論する以前に、異常気象問題など、もっと急いで議論しなければいけないものはいくらでもあるわけですから、そういうものをこそ考えるべきだと僕は思います。
去年だって、今年だって、おかしいでしょう。こうした異常気象で作物に甚大な被害が及ぶということは、現実に予想できる段階に入っているんじゃないですか。異常気象がこれからも続くようになったら、もっと深刻な不作の危険は予感してもいいんじゃないかと思います。炭酸ガスによる地球の温暖化なんていうのは机上の空論でしかありまでんけど、異常気象による飢餓の問題は、現実のものとして考えていく必要があるんじゃないでしょうか。
――そのためには、どうすればいいんでしょうか。
槌田 例えば、このところ経済とか外交のレベルで論じられている米の問題を、環境問題として考えてみる必要があるということです。
米を自由化して日本の米農家が壊滅した後に世界的な飢饉がきたらどうするのか。日本がまだお金を持っていれば、世界じゅうの食料を買いあさることができるかもしれない。しかし、そのことは他の国の飢饉を加速することになるわけです。そのような問題として米の自由化を考える、そういう発想が今、必要とされているんじゃないかと僕は思います。
―――――――――――――――ワークシート―――――――――――――――
3年選択理科 炭酸ガスが増えると地球が温暖化するを読んで
1 地球温暖化の原因について、知っていることを書こう。
2 地球温暖化が進むと、どのようなことが起きるといわれているか。
3 地球温暖化の進行を食い止めるにはどのような手段があるか。
4 資料を読んで、地球温暖化は、なにが原因で起こっているのか。
5 地球温暖化を止める手段として、どうすることが良いとされているか。
6 地球温暖化が進行すると、どんな悪影響があるのか。
7 資料を読んだ感想を書こう。