3年選択理科 分別収集運動でゴミ問題は解決できるか       月     日

   3年    組    番 氏名(                                )

 分別収集運動でゴミの捨て場が枯渇する!

――自然の循環を利用すれば、ゴミ問題も解決できますか。例えば、ゴミの分別収集をもっと徹底させて、自然の循環に乗せられるものは自然に返せばいいんじゃないでしょうか。

槌田 確かに、自然の循環を利用すれば、廃物をもういちど資源にすることができます。しかし、ゴミの分別を徹底させることがゴミ問題を解決することにつながるというかというと、それは、僕はちょっと疑問なんです。

例えば、ゴミの分別を日本でもっとも徹底させているであろう香川県善通寺市では、ゴミをまず、「可燃」「埋めたて」「有害」「資源」の四つに分別、さらに資源ゴミを「生きびん(再使用できるびん)」「空き缶」「金属類」「紙類」「布類」の六つに分けています。そればかりじゃなくて、カレットは「透明」「茶色」「黒」「緑・水色」「板ガラス」の五種類に、紙類は「新聞」「雑誌」「段ボール」の三種類に分別されるというようにさらに細分化されていくので、最終的には、ゴミは二十種類以上にも分けられるということです。こういう「善通寺方式」の分別収集をどう思いますか。

――(                                                        )

槌田 もちろん、僕もすごい努力だと思います。ただ、日本じゅうの自治体がこの「善通寺方式」でゴミの回収をしたらどうなるかというと、ゴミ問題が解決するのではなく、かえって捨て場の枯渇を招いてしまうのではないかと思うんです。

ゴミの分別収集に基本的には賛成です。でも、それをやりすぎるとまた別の問題が出てこないか、ということを考えてみたいんです。

まず、ゴミというものはある程度処理しないとまずい、これは正しいんです。ゴミを自然に返すといっても、返せる形にまではしないといけないわけです。自然に返すのはいいけれども、方法を間違うと人間に跳ね返ってきますからね。

ゴミを自然に返すいちばん有効な方法は、じつは燃やすことなんです。物を燃やすと灰と気体になるわけですが、これは灰にして土に返していると同時に、炭酸ガスにして空気に返しているんですね。

だから、燃やすのはいいんですけれども、燃やすのはいいんですけれども、燃やす物の中に塩素が含まれていると、ダイオキシンという毒物をばら撒くことになってしまう。だから、ゴミ焼却の前に塩素の入っている物はできるだけ分けておく必要がある。水銀も同じですね。

それから、分けたら再生可能な資源になる物もあります。さっきの話のアルミ缶がそうですね。紙くずと一緒に捨てれば、それはただ燃えてアルミナという灰になるだけです。この灰はぜんぜん役に立たないんです。他の灰は肥料になるけれども、アルミナばかりは何の役にも立たない。まあ、何の役にも立たないから毒でもないということにななりますけど。

そういうことで、僕は分別処理に賛成ですけれど、それ以上の分別をする必要があるかというと、それは疑問なんです。

「善通寺方式」より有効な「横浜方式」

例えば今、東京都では「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」という分別をしていますよね。その分別がほんとうにいいかどうかはさておき、「燃えないゴミ」というのは呼び方がおかしいんです。あれは「燃やせないゴミ」の間違いですよね。燃えないわけではなく、燃やせば燃えるんだけれども、燃やすと困るから燃やせないんです。だから正しく、「燃さないゴミ」とか「燃せないゴミ」とか、そういうふうに言わないといけないんですね。

さて、このように「燃やすゴミ」と「燃せないゴミ」に分別すると、当然、「燃せないゴミ」がだけが残ってしまうわけです。そして、「燃せない」ということは、ゴミを自然に返すもっとも有効な方法が使えないということですから、ほんとに始末に困り果てるゴミになってしまうんです。そんなものだけが残ってしまう。

だから、ゴミをまったく分別しない一括処理の「横浜方式」と二十種類以上にゴミを分別している「善通寺方式」とを比較すると、「善通寺方式」が正しくて「横浜方式」は駄目なんだと、単純には言うことができないんじゃないかと、僕は思うんです。

――でも、「横浜方式」では集めてきたゴミを片っ端から燃やしているだけなんですよ。

槌田 でもそれは、いろんなゴミを混ぜて、薄めて燃やしているのですから、環境に対して悪い影響が少ないともいえるんです。ところが、分別した後、困ったものだけになってしまったら、燃やすことがほんとうに不可能になってしまいます。そうすると、どう後始末することもできないままそれが積み上げられていくわけです。

「善通寺方式」がいいということになって、仮に東京や大阪の大都市圏のゴミを徹底的に分別処理してしまえば、あっという間にゴミの捨て場が枯渇して、ゴミ問題はもっとひどいことになってしまうんじゃないでしょうか。

ダイオキシンを発生させる塩素系のゴミと、古新聞やアルミ缶のような産業として再利用可能なゴミを分別したら、後は脱硫装置などの公害除去設備の完備された最新型の炉で一括して燃やしてしまうというのは、今のゴミ問題の状況の中ではそんなに悪い方法じゃないんじゃないかと思っているわけです。

カラスと生ゴミで足尾の山を緑に

――だけど、いらないゴミはどんどん捨てて燃やしてしまえ、というのはやっぱりすごく抵抗があるんですが。

槌田 ゴミをやたらに捨ててはいけないと思っているわけですね。

――ええ。当たり前です。

でも、それもちょっと違うんです。使い捨てはいけないなんていいますけれど、使い捨てられるものは使い捨てていいんです。ちっとも悪くないんです。だいたい、資源というのは、人間がとことん利用しなければならないものではないんです。人間が中途半端に利用すると、他の生物が後を引き受けてくれる、これが自然の理なんです。人間のためだけに資源があるわけじゃないんですから。

そういうことで言うと、東京のような巨大都市はともかく、田園地帯の都市の生ゴミは、何も人間がとことん利用することはないんじゃないですか。ゴミ捨て場を決めておいて、そこへ捨てればいいんです。そうしたらカラスがやってきて、きれいに生ゴミ処理してくれます。あるいはカラスが処理しきれなくても、そこで堆肥になるわけです。

生ゴミだって、広いところに置いておけば腐っても臭くないんです。固めて置いておくから臭うんです。

僕は前から、鉱毒で禿げ山になった足尾銅山に緑を回復するためにはカラスを使えばいいと言っているんです。日光市と足尾町のゴミを、足尾町のゴミを、足尾の禿げ山のふもとに持っていくんです。そうすれば、あとはカラスが引き受けてくれます。

この場合は、日光連山の森にいるカラスたちがゴミを食べにやって来て、足尾の禿げ山に養分の糞を返してくれて、ついでに森から種を持って来てくれる。だから、人間が木を植える必要なんかないんです。人間は、生ゴミを禿げ山のふもとまで持っていって、ばらばら撒いてくればいいだけなんです。

もちろん、ゴミの中にはカラスが処分できないものも多少混ざっているだろうから、ときどき掃除することぐらいは必要かも知れませんね。小さなゴミ焼却場をこしらえておいて、残ったものをそこで燃やして、灰にして自然に返せばいいんです。

足尾の山々というのは日本にある唯一の砂漠なんですが、宇都宮市、日光市、足尾町、それに桐生市の生ゴミなんかを使ったら、三十年もすれば森が戻ると思いますよ。なんでそういう発想がないのかなと思いますけどね。

 必要なのは困り果てること

――結局、自然に返せるゴミだけならばゴミ問題は生じない、ということになるわけですね。

そうです。自然の循環に戻せるゴミならば、その処分を人間だけでしなければならないということもなんです。ところが、カラスが食べないゴミ、堆肥にもならないゴミがある。捨てられないゴミですね。その捨てられないゴミが、人間が自然の循環を豊かにすることを拒否しているわけです。塩素を含むゴミとか、水銀を含むゴミなどです。

それがあるから、ゴミ問題が大変だ、ということになっているんです。でも、それはじつはゴミ問題ではなくて、資源問題なんです。そのつながりが見えてないんですね。だから役所でも、今はゴミと資源が別の担当なのです。資源は通産省で、ゴミの方は地方自治体。でもそれではうまくいかないんです。

資源を使うところから、ゴミ問題は考えないといけないんです。ゴミになって困るようなものは、そもそも資源のところで使ってはいけないんです。ゴミの分別収集というのは、その分別を後からやっているんですね。そうではなくて、分別をするなら、資源の段階で分別しなければいけないんです。資源で分別すれば、ゴミの分別をこんなにうるさくいう必要はないはずだと思います。

――でもどうすればそんなことができるんですか。

それは、政治的方法、経済的方法でやるしかないでしょうね。

そうすると、少なくとも政治が変わるまでの間、目の前にある膨大なゴミをどうすればいいかという問題は残っていくわけですね。

僕は、日々大量のゴミが積み上げられていくことに関して、当面、いちばんしなければいけないことは、とことん困り果てることだと思っているんです。困らないための対策をいろいろするということは、困り果てることをどんどん後ろへ延ばしているだけで、ゴミ問題の解決を遅らせるだけのことにしかならないと思います。だから、対策なんてしないで、とことん困ればいいんです。困り果てれば、基本から解決することになるんじゃないですか。

―――――――――――――――ワークシート―――――――――――――――

3年 選択理科 環境保護運動について1               月    日

   3年    組    番 氏名(                                 )

  環境運動について考えるにあたって、様々な問題があるが、今回はリサイクルについて少し考えを掘り下げてみよう。

質問1 あなたは、リサイクルというと、まず何のリサイクルを思い起こしますか。

質問2 あなたの思い起こした物のリサイクルを考えた場合、何か問題になることはないでしょうか。

質問3 牛乳パックのリサイクルにはどのような方法があるでしょうか。

質問4 牛乳パックのリサイクルにはどのような問題点があるのでしょうか。

質問5 資料を読んで、牛乳パックのリサイクルについての問題点を解決するために、どのようなことができるでしょうか。

質問5 資料を読んで、牛乳パックのリサイクルについて、あなたの率直な意見や疑問を書いて下さい。