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弦から響く森の音

出 演
佐藤弘和&金 庸太


 
2001.12.15(土曜日)13:00 開演  

オペラシティ〜近江楽堂




プログラム

ギターソロ

グリーンスリーブス(イギリス民謡)
涙のパバーヌ(J.ダウランド作曲)

演奏 佐藤弘和
使用楽器 1998年作テルツギター

プレリュード・フーガ・アレグロBWV998(J.S.バッハ)

演奏 金 庸太
使用楽器 2001年作シュタウファーモデル
ギター二重奏



ロンド ニ長調 Op.66−2(M.ジュリアーニ)
不安・即興曲・タランテラ(J.K.メルツ)

演奏 佐藤弘和&金 庸太
使用楽器 テルツギター&シュタウファーモデル
休憩(15分)


ギターソロ

ロッシニアーナ第一番Op.66−2(M.ジュリアーニ)

演奏 金 庸太
使用楽器 1998年作モダンギター

大聖堂(A.バリオス)
3つの小品(佐藤 弘和作曲)
かれん〜チュリーブロッサムズ〜素朴な歌

演奏 佐藤弘和
使用楽器 2000年作モダンギター

ギター二重奏

風のはこんだ4つの歌(佐藤弘和)
すすきの穂が揺れる〜舞い降りる粉雪〜
花の香りにのせて〜熱風の中で
演奏 佐藤弘和&金 庸太
使用楽器 2000年作モダン&1998年作モダン

アンコール
ギター二重奏

ノエル〜クリスマスの歌(佐藤弘和作曲)



オペラシティにある近江楽堂で、佐藤弘和さんと我等がギタ菌さんこと金 庸太さんのジョイントコンサートが行われた。実はこの日大変ショッキングなことがあって、かなり参っていたのだが二人の素晴らしい演奏に触れることが出来、救われる思いだった。またコンサート終了後、金さんや会場に来られていたギタリスト坪川真理子さん、音楽評論家徳永しまじろうさん(笑)〜本当はまだお若いのに東京医科歯科大学で助教授をされておられる凄い方なんです〜福島から来られた今泉さん(鎌田さんのお弟子さんだったそうで不思議なご縁)とそのお友達高原さん(福島中央テレビ)達とお茶したりしてとても楽しいひと時を過ごすことが出来た。

先週のGGサロンコンサートが金さんにしてはやや不本意な出来だったので、一年を締めくくる今日の演奏会はバッチリ決めて欲しいと祈っていたら、嬉しいくらい素晴らしい演奏で期待に応えてくれた。共演された佐藤弘和さんの暖かい音楽とギターにもとても感動させられた。佐藤さんの演奏は東京ギターカルテットでは何度か聴かせて頂いたことはあったが、ソロでは初めて。繊細な音楽をされる方で作曲のセンスも素晴らしい。佐藤さん作曲のギター4重奏「二十歳の頃」は私も一昨年演奏会でやった曲で楽譜は持っていたが、今回受付でソロの楽譜(素朴な歌を弾きたくて)を思わず買ってしまった。
サインして貰えばよかったと後悔・・・。

オープニングの佐藤さんの演奏はテルツギターを使ってのものだったが、予想通り音響が素晴らしくテルツギターの音もとてもよく響く。響きが良すぎて細部の音が分かりにくくなるほど。グリーンスリーブスには洒落たイントロダクションが付けられていてロマンチックな音楽絵巻が展開されていた。涙のパバーヌも名曲だがコンサートで聞くのは初めて。こういう場所で19世紀ギターで奏でられると格別のものがある。
いよいよ金さんが登場。シュタウファーモデルを携えてバッハのBWV998が演奏された。
最初調弦に手間取っていたが、演奏が始まると一点ホールの空気が変わり、彼の全身から清流のように音楽が流れ出す。この曲を今年はフィスクと大萩康司君の演奏で聞いたが、二人の演奏とは全く別次元の静謐なバッハがそこには表現されていた。19世紀ギターで弾かれた今日の演奏をもしバッハに聞かせることが出来たら、バッハもきっと驚いたことだろう。それ程素晴らしい演奏だった。最初の一音からとにかく音が清らかで美しい。金さんの右手のタッチは、完璧で全く無駄が無い。静かに音楽を奏でることだけに集中していてどれほど難しい箇所に来ても何事も無かったかのように楽に弾ききってしまう。左手がきついフーガで体力を消耗しきった後にアレグロが来ると、私のようなアマチュアでは、アレグロにいたる前に息切れしてしまう難曲だが、金さんは最初と殆ど変わらず、平然と弾ききってしまった。驚くべきテクニック。
音楽としての表現という意味ではやや淡白に聴こえたかもしれないが、金さんの最小限の動きで大きなエネルギーを生み出す右手のタッチからつむぎ出されるシュタウファーの典雅な音が、近江楽堂の高い天井に静かに、だが力強く響き渡っていた。
続いて佐藤和弘氏のテルツギターと金さんのシュタウファーによる二重奏が演奏される。最初のジュリアーニのロンドは、とにかく美しいアンサンブル。隣の女性が知らず知らず身体でリズムを取っていた。圧巻だったのは次のメルツの作品。最初の「不安」がはじまった途端、余りの美しさに胸に込み上げるものが止まらなくなってしまった。ベートベンの悲愴を想起させるモチーフ、哀しい程美しい音楽が展開されていく。金さんは2ndを弾かれていたが細かいアルペジオの上に佐藤氏が切ない旋律を重ね合わせると涙腺が刺激されて聞いていて困ってしまう程。19世紀ギターによる二重奏がこれほど素晴らしいとは思わなかった。会場の音響の良さもかなり影響していたと思うが、この日聞きに来ていた聴衆はラッキーだったとしか言いようが無い。書き忘れたがこの近江楽堂はかなりこじんまりとした空間でギターのような音量の非力な楽器をやるにはとても良い空間だと思う。聴衆は100名以上来ていた模様で席が足りなく通路にまで席を追加しぎっしり満員だった。比較的年配の方が多かったけど、オバサンキラーは金さんだけの専売特許じゃないのかな。>佐藤さん(^^ゞ

休憩をはさんで後半のプログラム。最初が金さんのソロでモダンギターを使用してロッシニアーニ1番が演奏される。調弦に苦しんでいたが終始力強い音で、最後は一気に高速で弾ききってしまった。そのテクニックに思わず聴衆からどよめきが沸く。バッハと違って細かいミスは結構目に付いたが、それ程気にならなかったのは彼の気持ちが充実していたからだろう。金さん程の技量があれば弾けない曲など殆ど無いはず。気持ちが前向きであれば演奏者の想いも聴き手にしっかり届くものだ。
続いて佐藤さんのソロで大聖堂と自作品が演奏された。大聖堂は殆どミスも無くアレグロも充分早いテンポで弾かれていて見事だった。自作品の素朴な歌がとても良い曲で思わず楽譜を買ってしまった。
フィナーレは二人のデュオ、ここでようやくMCが入る。佐藤さんはどちらかと言えば寡黙な人という印象だが、ひょうきんな金さんが無口なんでどうしたのかと思ったら、今日は喋るなって誰かに言われていたらしい。自分で僕が喋ると品格が落ちるっていわれた話を披露し、場内爆笑!
佐藤さんの自作は、和声進行がとても素敵で弾いてみたくなる曲ばかり。音楽的な趣味も自分と近い人なのかなと思った。佐藤さんの奥さんはとても美人で挨拶出来なかったのが残念・・。
アンコールは現代ギター12月号に掲載されているクリスマスの歌〜ノエルが演奏された。ハーモニックスとアルペジオの絡みが印象的な作品で、近江楽堂の優雅なたたずまいにぴったりの曲。アンコール終了後も拍手の音がなかなか鳴り止まなかった。


Photography

遅くなりましたがようやくアップ(^_^;)
ギタリスト中島晴美さんと一緒に(左: 金さん、右側: 佐藤さん)





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