鶴次郎(心して)

(本調子替手上調子)

心して我から捨てし
恋なれど
せきくる涙こらえかね
うさを忘れん盃の
酒の味さえほろにがく


稽古日 平成二十七年年四月二十五日
春日小唄集 二四頁


日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
鶴八鶴次郎(つるはちつるじろう)
川口松太郎の新派戯曲。
原作は1934年(昭和9)10月号の『オール読物』に載った小説で、
翌年第1回の直木賞を受賞したものを作者自ら脚色し、
38年1月東京・明治座初演。
新内の太夫(たゆう)鶴次郎と
三味線弾きの鶴八は相愛の仲だが、
ささいなことから喧嘩(けんか)別れをし、
鶴八は料亭の女房に納まる。
名人会でふたたびコンビを組むと鶴八は芸道復帰を思い立つが、
鶴次郎は女の幸せを思って
わざと芸のうえの喧嘩をふっかけて鶴八の夢を打ち砕き、
放浪の生活に戻る。
江戸気質(かたぎ)の新内語りという材料のおもしろさ、
テンポのある芝居運びなどが大衆の心をとらえ、
花柳(はなやぎ)章太郎と水谷八重子のコンビの代表的な演目であった。[土岐迪子]
『『鶴八鶴次郎』(中公文庫)』